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 ■ 私的翻訳の顛末!?

その昔、ボクは、とある大学の英文学専攻の学生だった。20名の同級生
のうち、男子は僅か3人。でも、その3人が連日研究室に入り浸り、煙草
の(文字通り) 煙幕を張って英文研究室をわが物顔に牛耳っていた。

3年になると卒論に向けて研究テーマが定まってくる。シェークスピア、
ディケンズ、ロレンス、ヘミングウェイなど、大方の女子は有名作家を
選択したが、ボクが選んだのはイブリン・ウォー(1903-66)。英国で
は、夏目漱石クラスの大作家だが、当時の日本ではあまり知られておら
ず、前人の研究文献(邦文)も意外と少ない。指導教官からは「県下で
ウォーをやっているのは君ぐらいだろう」と言われ、“選ばれし者の恍
惚と不安”をニンマリと噛みしめた。“牛後”となるよりも“鶏口”が
よかろう、という若者特有のアサハカサである。

が、何しろ作品の翻訳書が少ないのは大きなハンデである。故吉田茂首
相のご子息である吉田健一氏が訳した代表作『ブライヅヘッドふたたび』
は古書店で入手できたが、処女作“Decline and Fall”(1928) は原書
のみ。ならば、自分で翻訳してやろうと思い立った。若気の至りである。

原書講読の感覚で、辞書と文法書を繰ってどうにかなるだろうと楽観し
ていたら、これが大間違い。文芸翻訳は、外国の歴史的文化的背景をき
ちんと把握し、“自然”な日本語に置き換える必要があるのだ。英国の
パブリックスクール出身の主人公が運命に翻弄されて落ちぶれていく姿
を滑稽に描いた小説だが、英国における「パブリックスクール」や上流
階級の風俗がよくわからない。結局、異文化の壁に圧倒され、2/3 ほど
翻訳したところで敢えなくギブアップした。読み進めてもあまり面白く
なく、翻訳作業が苦行と化した。酒飲みは最初に吐くまで飲んで、自分
の酒量を見極めるというが、己の翻訳センス(語学力+調査能力)の限
界を痛感した瞬間であった。

その時に思ったのが、外国の文芸作品に描かれる建物や身の回りの小物
などをビジュアル的にパッと確認できる事典があればなあ、ということ。
たとえば、ロシア文学を読んでいるとよく出てくるサモアール。「喫茶
用の湯沸かし器」という注記はあっても、具体的に現物がどんなものだ
かピンと来ない。それが今では Google のイメージ検索で簡単に調べが
つくので、いい時代になったもんだなあとつくづく思う。

そう言えば、ダン・ブラウン『ダ・ヴィンチ・コード』には「ヴィジュ
アル愛蔵版」があり、作中に登場する美術作品や建物、場所、象徴など
140点を収録している。こういう補足的出版物もアリかな。

                              (竹)

【注】
“Decline and Fall”は、「大転落」「ポール・ペニフェザーの冒険」
「衰亡記」として翻訳されています。ブラック・ユーモア(風刺)とド
タバタ・ギャグに溢れる逸品です。
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