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 ■  翻訳読書ノート25 「数学世界への招待状」
                             北田敬子

新潮クレスト・ブックスの中に『素数の音楽』(マーカス・デュ・ソー
トイ著 富永 星 訳 新潮社 2005)を見つけた時、これは海外の翻訳小説
の為のシリーズだと思いこんでいたので驚いた。帯の「小川洋子さん、
絶賛」というコピーを見て、「なるほど、『博士の愛した数式』効果か」、
とある程度納得がいった。このシリーズに本書が含められた意図がよく
分かったのは読了してからだと思う。素数の謎をめぐる数学者たちの悪
戦苦闘と、栄光を求める人間模様はそれだけでも十分スリリングなドラ
マだが、実はそのドラマの主役は「素数」そのものであることが明らか
になるからだ。

未解決の難問「リーマン予測」について一般読者がこの本を一冊読んで
理解できることはごく僅かだろう。ただ、読みながら出会うフェルマー、
オイラー、ガウス、アーベル、ハーディー、ヒルベルト、ゲーデル等々
の名に親しみ、パリ、ゲッティンゲン、プリンストンなどの大学や研究
所の内部を覗き、ギリシア時代以来連綿と続いてヨーロッパ近代に繋がり、
アメリカで20世紀に隆盛を誇る数学(数論)の歴史を辿るうちに、数学
は決して単なる「秘儀」でないことは分かる。素数の美しさや不思議さ
に触れる読者もいるにちがいない。また、ラマヌジャンというインド出
身の数学者がケンブリッジで文化衝突に苦しみ、早世する下りには憤り
も感じるはずだ。やがて素数がインターネット時代の暗号技術に絶大な
威力を発揮するようになった現代社会を見せつけられれば、我々が依っ
て立つ足許に素数が潜んでいることを知って、また新たな興味をかき立
てられることは間違いない。

学校で難解な計算を強いられて数学嫌いになる人は数知れない。それな
のに、他の自然科学分野に比べて数学の啓蒙書は極端に少なかった。数
学者たちも語る言葉を持たなかった。だが、崇高さも愚かしさもある人
間の学問としての数学がこのように語られるなら、数学への頑なな偏見
は和らぐだろう。随所に「訳注」を施した富永星氏のリズミカルで簡潔
な訳文に、本書の魅力が支えられていることを強調したい。(実は、
25年間数学者と暮らしてきた私にも初めて分かったことがたくさんある。)
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