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■ 翻訳読書ノート24 「蛙三昧」

百匹では収まらない蛙(かわず)が揃った。「蛙コンペ」とも言うべき
宴に集うのは、東西の文人・識者。但し御大芭蕉はいない。何故ならこ
この蛙は英語版。120ページ余りの小型ペーパーバック"One Hundred
Frogs" (ed. Hiroaki Sato, illustrations by J.C. Brown, Inklings
edition, Weatherhill1995)をパラパラめくると、水墨画の蛙が池の畔に
とまるトンボめがけて大きくジャンプし、そのまま水中へポチャンと飛
び込む仕掛けになっているのも愉快だ。「古池や蛙飛び込む水の音」は
訳者それぞれの個性を映し出す。

ニューヨーク在住の編者の元へ約二十通りの英訳「蛙句」が送られてきて、
「訳者を当ててご覧なさい」と挑まれて以来、Sato氏の「蛙集め」が始
まったという。文献目録付きで寄せられた研究論文収録の五十編を含め、
本書第一部をなす第一版が出来たのが1981年のこと。それ以降も蒐集は
続き、Sato氏のリクエストによって書かれた新作を加えたものが第二部
をなす。翻訳年代順に並べられた第一部の筆頭を飾るのは子規であり、
Lafcadio Hearnがそれに続く。新渡戸稲造は二編、「飛び込む」は"took
a sudden plunge"から"jumps in--"に変化している。実直な訳に止まら
ずリマリック形式、ソネット形式や数字の7の形をした文字配置で書かれ
たものなど、思いがけないひねりが加えられたものもある。第二部では
変奏は更に自由度を増し、William Matherson のように3ページに及ぶ散
文(男女の会話からなる蛙句の謎解き)といった解釈・批評をも許容する。
いや豪勢なものです、蛙君。

語に解体すれば僅か六つか七つの要素が、訳者によってこれほど多様な
詩句に変化するのは圧巻だ。「池」だけでも mere, pond, lake, pool,
depth, bog(ge) . . .これに「古」がくっつくと生まれるバリエーショ
ンの多さ!改行の仕方、感嘆符のあるなし、また擬音を入れるかどうか
の判断など、微細な違いが興味深い。ふと思う。俳句は確かに禅の公案
のようだと。(訳者の中には鈴木大拙もいる。)頭でひねくり回しても
本懐は得られない。直覚が動くかどうか。伝えようとして伝わるものば
かりではない。しかし、仏教も日本文化やその精神もことばを拒絶して
はいられない。

ついで手を伸ばした"Haiku"「俳句」(選・文 高橋睦郎  写真 井上博道
アートディレクション 高岡一弥  翻訳 宮下惠美子  ピエ・ブックス
2003)を読み且つ眺めながら、このわびさびは日本人にしか分かるまい
などという時代は疾うに過ぎたのを感じる。放っておけば日本人にすら
分からなくなっている。だが、俳句を好む現代の若者たちは多い。(ネ
ット俳句サイトには人気があり、「俳句甲子園」は映画にもなっている。)
ことばは伝承に発展にどこまでも食い下がるしかない。蛙の宴は始まっ
たばかりだ。
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