忍者ブログ
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

■ 翻訳読書ノート17                  北田敬子

「ティーンズのために」

人の感受性が最も強い時期(多くはティーンエイジャー)の少年少女が
主人公の作品は「ヤング・アダルト小説」とか、「ジュブナイル小説」
と呼ばれている。
すっかりご無沙汰していたそのジャンルのものを最近立て続けに読んで
しまった。イギリス人作家アレックス・シアラーと、日本語翻訳者金原
端人コンビの魅力的な本である。本物のチョコレート色をした『チョコ
レート・アンダーグラウンド』(求龍堂 2004)、プラスチックカバー
が少女の影を覆う『13ヶ月と13週と13日と満月の夜』(同 2003)、そし
て底なしの青空色の『青空のむこう』(同 2002)。どれも胸を突く美し
い装丁で作られている。手に取ると本が特別な宝物のように思えてくる。
この中に詰まっているものはなんだろう、と。

『青空』は交通事故死した少年幽霊が家族に決別を言いにあの世から戻
ってくる話。『13ヶ月』は魔女に体を乗っ取られた少女たちの身体奪回
奮闘物語。そして『チョコレート』はチョコレート禁止令を出した独裁
政党打倒の解放闘争談。荒唐無稽といえばそれまでだけれど、一旦読み
始めたら止められない筋立てに愛すべきキャラクターが活躍する。奇跡
も魔法もありのファンタジックな要素は色濃いが、細部構築はイギリス
人らしいリアリティーに富んでいる。大人でも思わず引き込まれてしま
う。ティーンズならおそらくもっと。こんな世界に心を遊ばせられる時
間はとても贅沢だ。ユーモアとフェアネスの精神が全編に漲っている。

現世では子どもたちの受難が続く。テロリストは子どもたちを学校の体
育館で殺戮し、戦火に逃げまどう子ども、難民となる子どもは絶えず、
一見平和なこの国でも無惨な殺人の犠牲になる子が如何に多いことか。
彼らの無念は埋もれたままだ。そんな世の中に、人間の尊厳をさり気な
く面白く誠実に語ることばがあっていい。国境おかまいなしに、世界に
行き渡るといい。若い心の襞をよく理解する翻訳者に感嘆。年若い息女
の文学賞受賞譚ばかりが一時話題を独占したが、この父の仕事を見よ。

PR
この記事にコメントする
Name:
Title:
Mail:
URL:
Color:
Comment:
pass: emoji:Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
最新CM
[12/09 山本ゆうじ]
[12/07 Lisa Hosoi]
[09/29 NONAME]
[09/29 NONAME]
[03/13 エラリー]
カレンダー
01 2020/02 03
S M T W T F S
1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
バーコード
ブログ内検索
カウンター
アクセス解析
カウンター
忍者ブログ [PR]
Copyright(C) TranRadar(トランレーダー)ブログ All Rights Reserved