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■ 翻訳読書ノート16                  北田敬子
「象徴の迷宮」

『ダ・ヴィンチ・コード』上・下(ダン・ブラウン著 越前敏弥訳 角川
書店 2004)に捕らえられて数日を過ごした。読んでいる最中は先を知り
たいという衝動に駆られて他のことは手に付かず、読み終えると角川書
店の専用ホームページ、著者のオフィシャルサイト
(http://www.danbrown.com/)の隅々までを閲覧し、舞台となるルーブル
美術館、ウェストミンスター寺院、ロスリン聖堂、そしてダ・ヴィンチ
の作品画像を飽かず眺め、しばし「ダ・ヴィンチ・フリーク」となって
迷宮をさまよい歩いたと言うほかない。

確かにこれは魅惑的な本だ。キリスト教に詳しくない人間も充分ミステ
リーとして楽しむことは出来るが、もし僅かでもキリスト教に通じ、キ
リスト教文化の歴史に関心を持つ読者であれば、何世紀にも亘って人々
が「信じ込まされてきた」神秘解明という迫真のスリルを味わうことに
なるだろう。その意味では「聖杯」の象徴するものは何かという問いも、
「聖杯探求」の情熱も読み手によって非常に異なるものとなる。

正直なところ、私は象徴の謎解きと追いつ追われつする登場人物たちの
物語に夢中になりながら、彼らの「動揺・驚嘆・感激」に同調できない
冷めたところがあるのを自覚していた。物語の最後に至っても遂に満足
すべきカタルシスを経験したとは言い難いのである。周到な設定とカト
リック教会をめぐる博覧強記の細部構築に圧倒されながらも、人間心理
の複雑さが同じほど書き込まれているとは思えなかった。狂言回しとな
るハーヴァード大学宗教象徴学教授ロバート・ラングドンよりは異形の
殺人者シラスに惹かれたほどだ。

それでも尚、小説という器の可能性に私は目を見張る。如何に優れたも
のであれ象徴解読の学術論文を世界中の一千万人にも及ぶ人々が読むだ
ろうか。物語の中に溶かし込まれた時、キリスト教徒も異教徒も改めて
神秘の前に引き寄せられるとしたら、ことばの提示方法と人心掌握の謎
の幾ばくかが『ダ・ヴィンチ・コード』から見えてくるように思えてな
らない。原書出版から一年余りで日本語訳が出せるその素早さにも敬意
を表しつつ。
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