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■ 翻訳読書ノート13                  北田敬子

「語る人、聴く人」

読むことに加えて読書に「聴く」楽しみが加わるとどうなるだろう。一冊
で二度楽しい、いや「三倍楽しむ」を謳い文句にした本『ナイン・インタ
ビューズ 柴田元幸と九人の作家たち』(柴田元幸訳・編 アルク 2004
年)では、現代作家のインタビューを英語で読み、翻訳と解説を日本語で
読み、おまけに作家と翻訳者の対談をCDで聴ける。多産かつ気鋭の翻訳家
柴田元幸は、自ら手がけた作家たちを訪ね、作品に関する質問を繰り出し、
彼らをして存分に語らしめる。九人の中には、漫画家アート・スピーゲル
マンもいれば、イギリスから来日したカズオ・イシグロもいるし、電話イ
ンタビューで参加するポール・オースターもいる。(但し九人目の村上春
樹だけは日本語インタビューなので声は聴けない。)

この本を非常に面白い試みだと思う理由は、翻訳家の積極姿勢にある。彼
はいわば影武者の装束をかなぐり捨てて読者の前に飛び出し、「声」をもっ
て問いかける一人の批評家ともなる。対訳を供するのは仕事場を公開する
に等しい。以前から『翻訳夜話』(文春新書 2000)でも柴田の翻訳に対す
る自負は公にされてきたが、この度はさらに一歩進んだ。しかしながら翻訳
者を介してのみ異国語の世界に認知されうる作家たちに、柴田はどこまでも
「聴き手」の姿勢を崩さない。それはあくまでも「仲介者」であることを引
き受ける者の語り口だ。彼の声は一般読者に向かう時教師のトーンを帯び、
実作者に向かう時弟子のトーンを帯びる。

この本を傍らに、ポール・オースターのエッセイ集『トゥルー・ストーリー
ズ』(柴田元幸訳 新潮社 2004)を開くと翻訳家は姿を消し、そこには希
代のストーリーテラーが現れる。「信じられないような本当の話」を語るオ
ースターは柴田の声がなくては存在しないのに柴田の声はオースターに明け
渡される。われわれが聞くのは果たして誰の声なのか分からないほど透明に
なった時、柴田の本領が最高に発揮されていると言う他はない。それが翻訳
者の存在証明になる。
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