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■ 翻訳読書ノート12                  北田敬子

「純愛」という衝撃

イラクでの戦争にじわじわと深く関わり始めた日本が「邦人誘拐」「解
放」と一喜一憂する一方で、世界情勢とは関わりのない幻の王国が多く
の人々の意識の中に築かれている。玉座に君臨するのは「純愛」と呼ば
れる感傷である。バイオレンスとも、セックスともドラッグとも無縁の
領土だ。

ベストセラーは揶揄の対象にもなり、驚異でもある。『冬のソナタ(上・
下)』(キム・ウニ/ユン・ウンギョン著 宮本尚寛訳 NHK出版 第14刷
2004)は韓国のテレビ番組の所謂「ノベライゼーション」だから、余韻を
楽しみたい視聴者向けの出版だったに違いない。予め与えられた登場人物
のイメージ、周知の展開、解かれた後の謎。それでも求められ続ける書籍
の魅力とは何か。映像が書きことばに定着する時、読者は虚構への本格的
な参入を許される。改めて想像力が刺激され、幾度でも新たな感情移入の
機会が与えられる。韓国産の物語でありながら、この作品には土着的風俗
は殆ど無いに等しい。いつ、どこの、誰に起こっても構わない初恋談義の
プロトタイプである。

揃って1970年代生まれの両作者と訳者が、彼らより10歳も20歳も上の世代
からごく若い世代までを虜にしている。おそらくその殆どが女性である読
者層は、第二次世界大戦以前の日本と韓国の歴史的経緯の実情を知らず、
したがってかつての偏見からも自由である。「無垢」(ないし「無知」)
が「純愛」に飛びつく--これこそ「初恋」のエッセンスだろう。愛の辛酸
をなめるのはその後の過程にある。初恋を手放さないことは甘美だが苦悩
の始まりでもあることをこの作品自身がよく示している。主人公たちの親
世代の「過ち」が子ども世代に及び、その克服が仄めかされるというプロ
ットも実に示唆的ではある。非西欧的、儒教的、禁欲的価値観が現代の日
本に与えるインパクトは意外に強かった。韓国語からの翻訳作品がこれか
ら日本の出版市場に続々と「侵出」してくることは想像に難くない。
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