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■ 翻訳読書ノート10                 北田 敬子

「彼女の物語」

歴史は多くの場合、文人、武人、政治家、科学者、芸術家などの別を問
わず、男性の視点から記録されてきた。彼の物語(his story)、故にヒス
トリー(history)として。ここにとびきり活きのいい女の物語が登場した。
『リビング・ヒストリー ヒラリー・ロダム・クリントン自伝』(酒井
洋子訳・早川書房 2003)である。彼女はあくまでも彼女個人が体験した、
アメリカ合衆国大統領夫人(ファーストレディ)という「象徴的役割」
を担うに至る道のりと、その実態と、そこから開けた未来への展望をこ
の一冊の本の中に存分に書き込んでいる。

これはニューヨーク州選出の上院議員となった、アメリカの一政治家の
主観的な自己アピールだろうか。剛胆なアメリカ人の自己正当化と自画
自賛の書だろうか。いや、そうではないと思う。夫ビル・クリントンが
ホワイトハウス実習生モニカ・ルゥィンスキーとの間に「不適切な関係」
を結んだとして弾劾裁判にかけられた時の状況をヒラリーは「妻として
はビルを絞め殺してやりたかった。が、彼はわたしの夫というだけでな
く、わたしの大統領であり、何よりも、彼はわたしが続けて支援したい
と思うようなアメリカと世界の指導者だった(p.649)」と表現する。
このような物言いに辟易するとしても、大らかな笑いと共に惹きつけら
れるとしても、この物語の精華はきわめて開放的な女性の率直で忌憚な
い叙述にあることだけは間違いない。現代の世界にアメリカがどう関与
するか、アメリカ国内はどのような状況にあるか、彼女は内側から事細
かに語る。

大統領を支える役割を任期満了で終え、これから独自のキャリアを積む
というタフな女性が二十一世紀に何をなし得るか。「発展途上国」「産
業先進国」の別なく衆目の的であり続けるヒラリー・ロダム・クリント
ンの声を、「訳者は役者だ」と言い切る酒井洋子は生き生きと日本の読
者に届けた。目先の好悪にとらわれず、先ず人間を見よと彼女たちに焚
きつけられた気がする。
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