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■翻訳読書ノート4

                          北田 敬子

「翻訳畑の大収穫」

J.D.サリンジャー著、村上春樹訳『キャッチャー・イン・ザ・ライ』
(白水社)出版から一月あまりたった。野崎孝訳『ライ麦畑でつかま
えて』を読んだ世代は、新訳に手を伸ばさずにいられない。ところで
若い読者はサリンジャーが読みたくて新訳を開くのだろうか、それと
も翻訳者に惹かれて本を手にするのだろうか。インターネット検索し
てみると、ズバリ、旧訳と新訳の違いを比較しながら作品解読をして
いる大学の授業がある。書評も花盛りだ。村上春樹の長い作品リスト
に加わったこの訳業について、世代を縦断した話題沸騰中と言っても
過言ではあるまい。

村上春樹は現在、世界で最もよく読まれている日本人作家だろう。彼
は広く世界を旅し、文学と音楽を自在に行き来し、インターネットを
通じて読者と直接語り合い、おまけに翻訳作品が多い--自ら訳し、他
者が彼を訳す--という点でも際だっている。他のどの日本人現役作家
より、一貫して翻訳にエネルギーを注いでいることは見逃せない。
「曖昧な日本語」から遠いスタイルには賛否両論あるけれど、この度
の新訳が多くの新しい読者を獲得しているのは事実だ。作品には作り
物でない日本語が溢れている。

おそらく読者の多くは再び村上自身の作品へ向かうだろう。彼の物語
世界の場面展開にも似て、いつしか「ホールデン・コールドフィール
ド」は(たとえば)「田村カフカ」へと姿を変え、アメリカの街は日
本の都市にすり替わる。レコードがCD/MDに置き換わり、公衆電話が
携帯に道を譲ったとしても、自分をもてあます若者自体は変わらない。
村上のソフトな語り口は時と所を軽々と越える。アメリカ英語の世界
から日本語の世界への転換は、野崎の時代にはこんなにもあっさりと
してはいなかった。差違が魅力だったかもしれない。しかし、言語・
文化の違いを大仰に意識させない書き手、村上春樹を育てたのは『ラ
イ麦畑でつかまえて』だったのではないだろうか。
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