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 ■翻訳読書ノート27「勝負の相手」

小説はケーススタディではないし処方箋でもないのは分かっているけれ
ど、難題解決の鮮やかな手口が書いてあるのではないかとつい期待して
しまうことがある。「ケイトは負け犬じゃない」(アリソン・ピアソン
著 亀井よし子訳 ソニーマガジンズ 2004年刊)はシティで働くファン
ドマネージャーにして5歳児と1歳児の母ケイトが、激務と家庭生活をど
う両立させていくのか(あるいは、いけなくなるのか)をミステリー顔
負けの迫力で描く。このケース(キャリア追求と「人間的な」家庭生活
の同時実現という課題)に興味のない向きには全く面白くない小説だろ
う。だがもしこの種の問題に一度でも直面したことがあるなら、男女を
問わず強烈な磁力をもって数日間読者を虜にすること請け合いだ。

「ブリジッド・ジョーンズの日記」(ヘレン・フィールディング著 亀
井よし子訳 ソニーマガジンズ刊)の愛読者はきっとこちらにもはまる
だろう。ブリジッドの物語が結婚相手をゲットするというジェイン・オ
ースティン以来綿々と書き継がれてきたロマンティック・コメディ(の
形を取るイギリスの伝統的風俗小説)の系譜に属するとしたら、ケイト
は結婚の次に待ち受けるバトルに出陣する戦士。一見豊かな社会におけ
る恵まれた階級の女の身勝手な言い分とも読めるが、根底にあるのは社
会的性役割への体当たり的抵抗の物語である。(いや、これは「クラス」
を超越しようとする階級闘争の物語ですらある。)身に覚えのある女た
ちは随所でほくそ笑み、腹を抱えて笑い、時に胸を締め付けられて涙を
浮かべることとなる。そういう女と関わったことのある男たちはおそら
く最初から最後まで苦笑し続けるのであろう。

「男女雇用機会均等法」やよし。が、枠組みが実を伴うわけではない。
「ジェンダーフリー」ということばすら認めないと政府・地方自治体こ
ぞって公言し始めた国(日本)の民は笑っている場合ではない。「負け
犬」という言辞が原典を離れてふらふらと彷徨い乱用される社会も異様
だ。原題"I Don't Know How She Does It"(「彼女は一体どうやってい
るのか見当も付かない」)から懸け離れた本書の邦題は、そんな我が国
の状況に斬り込んでいく。この勝負、本当の相手は誰なのか。答は小説
の中ではなく、実戦の場にあるはずだ。

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