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■ 翻訳業界雑記 第6回 日本語を愛する         吉野 陽

小さい頃悩んだことがあった。家で留守番をしていると電話が鳴る。私
に用がある電話ではなく、父親、または母親宛ての電話である。

「はいもしもし」
「吉野さんのお宅ですか?」
「はい」
「あら?もしかして、あっちゃん?(←私のこと)覚えてる?ひでこお
ばちゃんよ!あら~大きくなってー。ついこの間まで・・・(しばらく
私の思い出話が続く)・・・ところで、おかあさんは?」
「今出かけてます。夜まで帰ってきません」
「あら~、夜まで一人でお留守番?偉いわね~。ついこの間まで・・・
(また暫く思い出話が続く)・・・それじゃまた遊びにいらっしゃいよ!
お母さんに宜しくね」

と、一方的に電話は終わる。何とか電話の応対はできたものの、ひでこ
おばちゃん(仮名)の記憶が自分にはほとんど無い。あとで母親に訊け
ば済むことかもしれない。しかし問題は、ひでこおばちゃん(仮名)の
最後に残した言葉だった。

「お母さんに宜しくね」

なんて無責任な言葉だろう。母親が帰るまでの数時間、悩みに悩む。いっ
たい何を宜しく伝えればいいのだろう。時間だけが刻々と過ぎて行く。
この悩みから早く解放されたい。母親の帰りが待ち遠しい一方で、何と
伝えれば良いのか未だ分からない。答えは出ないまま、玄関のカギを開
ける音が聞こえた。母親に駆け寄り電話の件を伝える。

「えーと、ひでこおばちゃんから電話があって・・・」
「あら、久しぶりね。それで何だって?」
「えーと、う~んと・・・“お母さんに宜しくね”だって」
「あらそう」

・・・通じてしまった。あまりの結末に言葉が無かった。何とも釈然と
しないまま、「~に宜しくね」はそのまま伝えればいいものだと思って
いた。

しかし数年前、思わぬところでこの答えを見つけた。金田一春彦先生の
著書だった。

普段何気なく使っている日本語でも、本当の意味を言えないこともある。
日本人の心、日本語の素晴らしさ、美しさが金田一先生の著書にはあふ
れている。日本語を愛さなければ良い翻訳は生まれない。そんなことを
5月19日の悲報を耳にして思った。

2004年5月19日 金田一春彦先生が御逝去なさいました。心よりご冥福を
お祈りいたします。


◆さりげなくアメリア
アメリアWebサイトの読み物コーナーには翻訳に役立つ情報が満載。会員
以外の方にも閲覧できるコンテンツがありますので、是非一度ご覧くだ
さい。
 http://www.amelia.ne.jp/userReadingTop.do

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