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■ 翻訳劇のフシギ・翻訳劇の魅力 12          今井克佳

  能楽に化けたシェイクスピア
    ――「ク・ナウカで夢幻能な『オセロー』」

日本庭園の広い池を背景にした特設の能舞台(屋根はなし)。池の向こ
う岸の茶室までライトアップされ、まさに幽玄の世界である。11月を
迎え、夜は冷え込み、客席には毛布が用意されていた。山手線の駅から
徒歩数分とは思えない闇と静けさ。しかしときたま付近を走る自動車や
電車の音が遠く聞こえてくるのも一種の風情だ。上野の森の奥、国立博
物館本館の裏手にある日本庭園は、その昔寛永寺の一部だったというこ
とだ。小堀遠州が伏見に立てた茶室などいくつかの歴史的建物が移築さ
れている。

ここで夢幻能の形式に書き換えられた「オセロー」の物語が、演出家宮
城聰の率いる劇団「ク・ナウカ」によって上演された。複式夢幻能とは、
旅の僧侶(ワキ)の前にすでに亡くなった人物の霊(シテ)が現れ、そ
の人生の危機的状況を語り再現するのだ。前場(前半)ではシテは土地
の人の姿を借りて現れ、後場(後半)では、僧侶の夢に幻となって現れ
る。この上演では、「オセロー」ではなく、その嫉妬の犠牲となった貞
淑な妻、デズデモーナがシテとなって現れることになる。

形式は複式夢幻能だが、全くの能そのものではない。平川祐弘によって
脚色された謡曲は文語で書かれながらも現代的な言い回しをも含んでい
る。発声も能のそれではなく、一種独特の抑揚を持っている。このあた
りはク・ナウカ独特だ。この劇団のもっともユニークな手法として、確
立されてきた二人一役(一人の人物についてセリフを語る「話者」と演
技をする「動者」を置くいわば人形浄瑠璃のような表現だ)がある。今
回の上演は二人一役を固定せず、あるときには演技者自身がセリフを語
るが次の瞬間は舞台横に控えている「話者」がそのセリフをひきつぐ、
など、自在に駆使する表現だ。なお幕間狂言として、「オセロー」のス
トーリーがユーモラスに補完される。

音楽はパーカッションを中心とした打楽器の生演奏。能、文楽、東南ア
ジア風の音楽と仮面、シェイクスピアの物語。そして借景となった日本
庭園と、古今東西の文化が入り交じったような不思議な空間だった。デ
ズデモーナ役の美加里が、神秘的な美しさを演じて際立っていた。ク・
ナウカは現在、表現手法の追究として最もユニークで意識的な演劇集団
といってよいだろう。

それにしてもあの冷え込みのなか、屋根のない舞台での長時間の演技は
本当にきつかっただろう。役者さんたちに同情する。テント屋根のつい
た客席でさえ、配られた簡易カイロが実にありがたかったのだから。

上演記録
ク・ナウカで夢幻能な「オセロー」
期間:2005年11月1日(火)~11月13日(日)
会場:東京国立博物館 日本庭園 特設能舞台
原作: シェイクスピア
謡曲台本: 平川祐弘
演出: 宮城聰
間狂言: 小田島雄志訳ニヨル
http://www.kunauka.or.jp/jp/index.htm
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