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■ 翻訳劇のフシギ・翻訳劇の魅力 5          今井克佳

『ときはなたれて』/『チェーホフ的気分』

実在の人物が実際に発した言葉を素材に構成された芝居を、偶然にも続
けて二本観た。

一つ目は燐光群アトリエの会の『ときはなたれて』The Exonerated。作
者らは2000年にアメリカ全土を旅して、無実の罪で死刑判決を受け、
後に釈放された人々にインタビューをしたという。彼らの収監期間は数
年から数十年。これらを素材として、裁判記録をも含めてこの劇作は構
成された。

会場は「梅ヶ丘BOX」。客が50人入ればいっぱいの、稽古場を兼ねた小
空間だが比較的新しい建物のせいか、小劇場につきもののアングラ臭は
感じられない。床は落ち葉の散り敷いた公園の一隅のようにしつらえら
れて、木製の腰掛の他には何の装置もない。主要な六人の俳優はここに
腰かけ、交互に立ち上がって、自分が逮捕され、判決を受け、収監され、
釈放されるまでの顛末を断片的に語り継いでいく。差別・偽証・任務怠
慢・監獄での虐待。おそるべき人間の闇。そして世界で一番優れて強い
民主国家であるはずの国の抱える、愚かさと弱さ。

長方形の空間の長辺に二列だけの客席は、裁判の陪審席のようだ。弁護
士や検事役の俳優は陪審員である観客に向かって語りかける。この小空
間を共有した私たちは、否応なしにこれらの事件の目撃者・取材者・証
言者となるのだ。社会問題を取り上げ続ける燐光群の坂手洋二演出は、
だが一種のポップさも持ち合わせており、深刻過ぎず受け入れやすい。
長い年月の後、深淵から生還した人々の言葉は時に哲学的な響きを伴い
心に残る。

二つ目は劇団昴の『チェーホフ的気分』。没後百年ということで今年は
チェーホフ上演が盛んだが、この作品はチェーホフと、妹を含む五人の
女性、および編集者との間に交された書簡の言葉を主な素材として、劇
作『かもめ』のセリフも取り入れて構成されている。

舞台中央にチェーホフの位置する仕事机。それを囲むようにそれぞれの
登場人物の空間が割り当てられ、俳優はセリフのない時もほぼ常に舞台
上に存在してそれぞれの時間を過ごしている。チェーホフを囲む人間関
係を空間として見せてくれる。複数の女性と並行して愛を語り、愛され
たチェーホフ。医者であり作家、長身でハンサム。モテモテで、そのく
せ、いざとなると度胸のない男。現代にも存在しそうなタイプである。

作者のユーリー・ブイチコフは、資料研究を通じて新たなチェーホフ像の
提出に成功している。が、背景知識なしで観るには、少し難解過ぎ、演
出も真面目過ぎるのが欠点だ。歌も入るユニークな展開。特に女優達が
生き生きとして魅力的だった。

【上演】
『ときはなたれて』燐光群アトリエの会
 東京公演「梅ヶ丘BOX」2004年10月1日~11月2日
 作:ジェシカ・ブランク&エリック・ジェンセン
 翻訳:常田景子  演出:坂手洋二

『チェーホフ的気分』劇団昴
 三百人劇場 2004年10月21日~11月3日
 作:ユーリー・ブイチコフ
 翻訳:中本信幸  演出:菊池准

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