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 ■ 出会い系演劇?との出会い
   ―「ヒステリア」と「コペンハーゲン」
                            今井 克佳

出会い系と言ってももちろんそういうことではない。それに、たまたま
2つ続いただけである。つまりは、「歴史的人物同士の出会い」をモチ
ーフにした翻訳劇を偶然にも2つ続けて観たということなのだ。

1つ目はシアタートラムで上演された白井晃演出「ヒステリア」。1939
年にロンドンに亡命していた晩年の精神分析学者フロイトを、シュール
レアリズムの画家ダリが訪ねた、という事実をもとにイギリスの劇作家、
テリー・ジョンソンが書いた「喜劇」である。

フロイトは串田和美、気難しい老学者の風貌と雰囲気を非常によく出し
ていた。ダリは演出も兼ねる白井晃。ぶっとんだ変わり者をコミカルに
演じていてギョロ目をひんむくところなどはステレオタイプではあるが
笑ってしまう。ダリのセリフはもともとスペイン語なまりの英語で書か
れているそうなのだが、たどたどしい、不思議なカタコトの日本語とな
っていた。フロイトのもとを訪れる謎の女性(元患者の娘)には荻野目
慶子。「喜劇」というふれこみではあるが笑える場面はそう多くなく、
むしろフロイトのヒステリー分析の話が中心なので女性の幼児期のトラ
ウマなど、ドロドロした話が多い。

客席200余の「小劇場」といえるシアタートラムの舞台と客席の幅が通
常より、さらに狭く設定されており、リアルに作られた、額縁舞台(フ
ロイトの書斎)は天井の方が高く、縦長に見える。物語が進むにつれて、
この話自体が、末期の舌ガンの痛みを抑えるためのモルヒネが、フロイ
トに見せた幻覚ではないかと疑われてくる。やがて、この縦長の舞台が
左右に揺れ始める(劇中で言及されるチャップリンの映画の移民船の場
面にヒントを得ているのだろう)。さらにダリの絵画をモチーフにした
歪んだ物体の映像が映写され、幻覚感を増幅させる。決して後味のよい
話ではなかったが、あいかわらず才長けた白井演出を堪能できた。

2つ目は、新国立劇場での「コペンハーゲン」。やはりイギリスの劇作
家マイケル・フレインが98年に発表し、2001年に新国立で日本初演され、
数々の演劇賞を受賞した作品で今回は再演。

ダリがフロイトを訪ねた二年後、1941年、ナチス占領下のデンマーク、
コペンハーゲン。ユダヤ系で、量子物理学の大家、ボーア(村井国夫)
のもとに、以前ともに「コペンハーゲン解釈」を生み出した弟子で、現
在はドイツ物理学会の要職にある、ハイゼンベルク(今井朋彦)が訪問
する。この史実がもとになって、この二人に、ボーアの妻マルガレーテ
(新井純)を加えた登場人物が、死後の世界から、回想シーンを演じた
り、ト書きを話したりしながらの3時間。

「ヒステリア」がまったく異業種の二人だったのに対して、こちらはか
つての師弟関係、同業者だ。「ヒステリア」が演出の面白さなら、こち
らは、言葉、言葉、言葉。フレインは「うら騒ぎ・ノイゼズオフ」(同
じく新国立劇場で2005年に白井晃が演出)のような喜劇も書くが、これ
は、がっつりしたセリフ劇。おまけに、量子物理学や核開発の専門用語
が飛び交い、それらが、性格や生き方の比喩としても使われるため、な
かなか難解である。

二人の性格と人生が長期にわたり俯瞰される。科学者の知的好奇心、世
俗欲、競争心、などなど人間くささが描かれ、背景として、ハムレット
に出てくるエルシノア城、ドイツの田園風景や戦場と化した廃墟なども
語られる。

しかし、彼らが携わったのは人類史上最初の核兵器開発。一人は失敗し、
一人は成功者の側につく。つまり、ドイツとアメリカの核開発、そして
その結果としての広島・長崎である。劇中には広島・長崎が数回、言及
されるが、残念ながら目はそちらには向ききってはいない。日本人とし
ては少し不満が残る。主眼は、ハイゼンベルクのボーア訪問の意図はな
んだったのか、という謎解きだ。

膨大なセリフをこなした今井、村井に拍手。抽象的な舞台美術やときお
り流れるクラシック音楽も美しかった。同じイギリス人が書いた二つの
作品で邂逅する歴史的人物たち。時代はどちらも第二次大戦の最中。そ
の出会いは化学反応を起こし、ドラマが生まれる。不思議な共通点と対
比は面白く、この二つの作品が前後して東京で上演され、それを観るこ
とが出来たのもまたひとつの「出会い」として感謝したくなった。

上演情報
「ヒステリア―あるいは、ある強迫神経症の分析の断片」
  シアタートラム 2007年2月13日~3月3日
 作:テリー・ジョンソン  
 翻訳:小宮山智津子  
 演出・上演台本:白井晃
 出演:串田和美 荻野目慶子 あさひ7オユキ 白井晃 
http://www.setagaya-ac.or.jp/sept/jouhou/06-2-4-58.html

「コペンハーゲン」新国立劇場小劇場 2007年3月1日~18日
 作:マイケル・フレイン  
 翻訳:平川大作  
 演出:鵜山 仁
 出演:村井国夫 新井 純 今井朋彦
http://www.nntt.jac.go.jp/frecord/updata/20000010.html
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