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 ■ 「さあ、比べて観てみよう。」
  ---ルパージュ版・白井版『アンデルセン・プロジェクト』
                            今井 克佳

外国語で演じられる演劇を字幕つきで鑑賞する場合と、同じ演出だが日
本語で演じられているのを鑑賞する場合では、どうやら脳の使い方が全
然違っているらしい。そんなことに気づかせてくれる貴重な企画が世田
谷パブリックシアターで行われた。

映像表現を舞台に巧みに取り入れた演出が「ルパージュ・マジック」と
まで称される、カナダのアーティスト、ロベール・ルパージュが、作・
演出の一人芝居『アンデルセン・プロジェクト』を自身の出演で上演し
たのに続き、同年齢でやはり劇作・演出・俳優をこなす日本の演劇人、
白井晃が、ルパージュの演出のもと、この一人芝居に挑戦したのである。

『アンデルセン・プロジェクト』は、アンデルセンの『木の精ドリアー
ド』や『影』をベースにしながら、2005年のパリに、子供向けオペ
ラの脚本家としてやってくるカナダ人のフレデリックとオペラ座のプロ
デューサー、そして北アフリカ系移民の青年(彼は声も出さず顔も見え
ないのだが)を主な登場人物とする物語である。彼らは様々な意味でア
ンデルセンの分身であり、それも、実は子供嫌いだとか、火事を異様に
恐れていた、など、知られざる、人間臭い側面を引き継いでいる。と同
時に主人公フレデリックはルパージュの分身でもあろう。戯曲は重層的
で、人物やセリフや出来事が様々に響きあう。すぐれた作品だ。もちろ
ん映像を多用した「ルパージュ・マジック」も健在である。

ルパージュ版ではさらに多言語の魅力が俳優の力として加えられる。カ
ナダのフランス語圏、ケベック出身のルパージュは二つの言語を器用に
使い分ける。特に、オペラ座プロデューサーが、どうあってもフランス
語にしか聞こえない発音の英語で数分間早口でまくしたてた後には客席
から拍手が起こったほどだ。そのルパージュにして、北アフリカなまり
のフランス語は模倣できなかったようで、それが移民青年がしゃべらな
い本当の理由なのだそうだ。

白井版は多言語をどう反映させるのか、と期待もしたのだが、特に何か
のなまりを使うという小細工はしておらず、標準的な日本語であった。
もちろんキャラクターを区別するために多少の使い分けをしていたが、
どうしても単一言語の限界があったことはいなめない。それ以前に、作
者本人の出演をなぞりながら、日本語のキャラクターを作り出していか
なければならない、という難題に、悪戦苦闘している様子が見て取れた。
確かにこれは時間的な接近もあって並大抵の苦労ではなかっただろう。

単色に見えた白井版だが、成果としてかいまみえたものもあった。物語
の背景や、登場人物の心情が手に取るように伝わるときがあるのだ。そ
れは日本語であるから、ということだけではないだろう。この作品はま
ずフランス語ベースで書かれ、つぎに英語ベースでリライトされたそう
だが、ルパージュ本人の上演でも、フランス語版と英語版ではキャラク
ターの性格が変わってしまうのだそうだ。であるならば、白井版もまた、
日本人に近しい、別のキャラクターを生み出していたのだと思う。

だが、演出にも才能のある白井晃である。できれば今後、白井演出で、
翻案版『アンデルセン・プロジェクト』を見てみたい気もしている。

『アンデルセン・プロジェクト』上演情報
 作・演出 ロベール・ルパージュ
 ルパージュ出演版 2006年6月23日~30日
 白井晃出演版   2006年7月1日~8日
 世田谷パブリックシアター
 http://www.parco-play.com/web/play/sept/andersen/
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