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 ■ 床屋と俳句と不条理劇 ― 新国立劇場『カエル』
                            今井 克佳

そういえば、実家に戻ってもカエルの鳴き声を聞かなくなった。高校生
の頃は梅雨時の夜はうるさいくらい鳴いていた田んぼのカエルたち。
「あなたはカエルの鳴き声を聞いたことがありますか。カエルはまだあ
なたのところにいますか。」という作者の問いかけ(パンフレット)は
深く心に残ったのだが…。
中国の劇作家、過士行=グォ・シシンが新国立劇場に脚本を書き下ろし、
鵜山仁の演出で上演された『カエル』。出演者4人は、いずれも実力派
とくれば、観に行かない手はない。
過士行の作風は、いわゆる不条理劇のようだ。中国の南方の海岸らしき
場所に床屋がある。客と理髪師がどんな髪型にしようかと議論をしてい
る。正体の知れない女がまわりをうろついて、水田に田植えをしたり、
二人の議論に口を挟んだりする。世界中を放浪してきたという旅人がそ
こにあらわれ、床屋の順番を待ちながら話に加わるが、前の客の髪型が
いつまでも決まらないので、あきらめて旅立ってしまう。
数年後、さらにその数年後に似たような場面が繰り返される。これだけ
なら、よくある不条理劇のようにも思えるが、話題というのが、地球環
境に関する、やけに具体的な議論なのである。
環境ホルモンによるワニの生殖能力低下や北極グマからDDTが検出され
た話。また、第1場では911テロ、第2場では2004年末の東南ア
ジア大津波が話題となる。このジャーナリスティックで直接的な言語が、
妙に居心地を悪くさせる。象徴的なセリフや場面の意味をあれこれ考え
る面白さのかわりに、ニュースキャスターの言葉が入ってきてしまうと
興ざめなのだ。
舞台美術もそれ自体としては目をひく。不完全なドームの骨格のような
屋根がついた、床屋のフロアは周囲より一段低くなっており、ここにや
がて、水が張られていく。床屋のフロアは丸く、青と白のまだらになっ
ており、地球を意味しているのがわかる。つまり温室効果による海面の
上昇ということだ。その他大がかりないくつかの仕掛けは意表をつき、
迫力もあるが、これもまたイメージを固定してしまう嫌いがある。
作劇のモチーフの一つは作者が中国語で読んだ、小林一茶の俳句集だ
という。日本語に戻された一茶の句は、有名な「やせがえる」の句を
含めて何句か引用されていたが、むしろ日本人である私たち観客が一茶
の句をとっさに解釈しきれないのだ。結果、ほとんど有効にセリフのな
かで機能しない。これは翻訳上の誤算だったかもしれない。
現代人を揶揄した辛辣なセリフは痛く、印象に残る。笑いもある。テー
マも悪くはない。セットも美しい。しかし、どこかギクシャクとした印
象を持たざるをえない翻訳劇だった。

上演情報
新国立劇場 シリーズ「われわれは、どこへいくのか」(1)『カエル』
2006年4月1日~13日 新国立劇場小劇場
作:過士行  翻訳:菱沼彬晁  演出:鵜山 仁
出演:千葉哲也 有薗芳記 宮本裕子 今井朋彦
http://www.nntt.jac.go.jp/season/updata/10000094.html
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