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■Cell、Cell、そして Cell(その3)          田村 洋一

3)「Cell」プロセッサ (Cell processor)

 ITの世界では昔から「cell」という用語はよく使われてきました。
携帯電話は「cellphone」ですし、MS Excelなどのスプレッドシートの
枡目も「cell」です。計算機科学では「セル・オートマトン」(cellular
automaton)が有名です。

 今回とりあげるのは、そのものズバリの「Cell」ですが、これは「STI
グループ」(ソニー・グループ、東芝、IBM)が数年前から共同で開発中
の高性能プロセッサの開発コード名です。2005年2月に米国サンフラン
シスコで開催された半導体技術の会議「ISSCC 2005」(IEEE 2005
International Solid-State CircuitsConference)でその詳細が正式に
発表され注目を集めました。Cellは2005年末頃に発売されるソニーの次
世代ゲーム機「PlayStation 3」(PS3)に搭載される予定です。このプロ
セッサについて、なるべくカタカナの業界用語を使わずにご紹介しまし
ょう。

 このチップの構造はユニークです。従来の多くのパソコンに搭載され
ている Intel や AMD のプロセッサ(MPU: Micro Processing Unit/通
称「CPU」)に内蔵されている演算ユニットは1個だけですが、Cellには
「PPE」(Power Processor Element) と呼ばれる演算ユニットが1個と
「SPE」(Synergistic Processor Element) と呼ばれる演算ユニットが
8個搭載されています。つまり「頭脳」が9個あるわけで、うまく仕事を
分担できれば格段に能率があがるというわけです。8個の SPE は全く同
等で、同時並行的に処理を行うことができます。また、これらを数珠つ
なぎにして1番目の処理結果を2番目に渡し、2番目の処理結果を3番目に
渡し…というように直列的に仕事をさせることもできます。しかも2番
目の SPE が仕事をするとき、1番目の SPE は次の仕事に取りかかって
いるという具合で、全体として非常に大きな処理能力を発揮します。
これはデジタル化された映像と音声の連続処理に適した機能です。PPE
は SPE にさせる仕事の準備と割り振りをし、SPE に実行や停止を命令
する「旗振り役」と考えればいいでしょう。

 Cell は大きな潜在的能力を秘めています。現在のパソコン用プロセッ
サの10倍の性能を同等以下の消費電力で発揮すると予想されます。さら
に複数のCellを連携させる仕組みを備えているので、多数の Cell で構
成されたスーパーコンピュータを組み上げることも容易です。IBM は、
Cell を64個搭載すれば標準ラック1台に収まる大きさで最高 16TFLOPS
の高性能ワークステーションを実現できそうだと発表しました。昨年ま
で世界最高性能のスーパーコンピュータだった日本の「地球シミュレー
タ」(建物1棟を占有)の演算能力が約 36TFLOPS であることを考えれば、
その性能の高さが…と言ってもなかなか実感できないかもしれませんね。
(1TFLOPS は浮動小数点演算を毎秒1兆回実行できる能力)

 ここまではハードウェアの特徴から期待できる性能の「可能性」とい
う話ですが、「コンピュータ、ソフトなければただの箱」というIT業界
の古い川柳にあるとおり、Cell の性能をフルに発揮させるためには、ま
ず並列処理の制御に優れたソフトウェアが必要不可欠です。コンピュー
タを制御するオペレーティングシステム(OS)やファームウェアはもちろ
んですが、最も重要なのは Cell に最適な実行コードを生成するコンパ
イラ(C言語等の言語処理系)です。テキサス州オースチンにある開発拠点
では既に試作機が完成し、パソコンの形でのテストが開始されたと伝え
られていることから、ソフト面の開発も進んでいるようです。また、パ
ソコンではありませんが、東芝は2005年4月の展示会で Cell を利用して
48本のデジタルビデオを同時に再生するデモを実演しました。東芝のソ
フト実行環境は自社構築によるものということです。順調に行けば、
2005年末から2006年にかけて Cell の開発ツールが公開されるようにな
ると思われます。

 Cell は当初の目的がゲーム機ということで動画処理を高性能化できる
ことは当然ですが、次世代 DVD と組み合わせたデジタル家電や携帯機器
への利用も検討されているようです。翻訳に関連する用途を考えてみる
と、デジタル映像・音声の再生や編集が今までより容易になれば、映画
やビデオの日本語版の制作が楽になります。自然言語処理、例えば日本
語の形態素解析のスピードアップが可能になり、携帯電話に通訳機能が
搭載されるかもしれません。文書検索のスピードアップにも有効と思わ
れます。一方、リアルタイムの画像処理、いわゆる「コンピュータ・ビ
ジョン」(computer vision)という面では、航空管制システム、監視カ
メラとの連動や生体認証(biometrics)、さらに、積極的に推奨したいわ
けではありませんが、軍事用として様々な用途が考えられ、IBMはアプ
ローチを始めたようです。例えば群衆の中から特定の人物を選別して追
跡する、あるいは雑踏の中で特定の会話を聞き取る…というような用途
に Cell は適しているように見えます。ベトナム戦争で米軍が使用した
初期の「スマート爆弾」にソニーのビデオカメラが搭載されていて問題
になったことをふと思い出します。

 Cell にまつわる知的財産権の問題なども注目すべきテーマです。互換
性のない Cell がすぐに Intel や AMD のパソコン用プロセッサを置き
換えることは考えられませんが、同じ IBM 製の PowerPC プロセッサを
搭載する Mac については近い将来 Cell が搭載される可能性があります。
Cell がパソコンを越えて予想もしなかった新しい用途を開拓してくれる
ことも期待したいと思います。
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