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■ ロシュフォール vs. シェルブール          田村 洋一

 フランスのヌーベルバーグの映画監督ジャック・ドミ(1931-1990)が
監督・脚本・作詞、ミシェル・ルグランが作曲・指揮を担当し、二人三
脚で作り上げたミュージカル映画「シェルブールの雨傘」(1964)といえ
ば、誰でも名前ぐらいは知っていますが、同じコンビによる全く異質の
作品が「ロシュフォールの恋人たち」(1967)です。原題「Les Demoiselles
de Rochefort」の「demoiselles」には「(young) girls」のほかに
「single women」の意味があります。この2作品を比較すると日本でも、
米国でも、英国でも、圧倒的に人気と知名度があるのは「シェルブール…」
です。

 「ロシュフォール…」については、「ほとんどストーリー性がない。
現実離れしている。甘ったるい歌と踊りだけ。往年のハリウッド映画を
真似た時代錯誤の作品」という批判があります。もちろん好みはありま
すが、それを差し引いても「ロシュフォール…」の真価が十分に理解さ
れていない気がします。少し長くなりますが、さわりだけ少々…。

 フランス中西部、海沿いのロシュフォールの町を二分してシャラント
(Charente)川がゆったりと流れる。ある金曜日の朝、「Fete de la mer」
(海まつり)の呼び物、日曜日に開催されるイベントに出演する巡回ショ
ーの一団が、この川にかかる不思議な形の可動橋(Le pont transbordeur)
を渡るところからドラマが始まる。先導するのはオートバイに乗った男
たちと、ウェスタン風に白馬にまたがりギターを背負った男が2人。青
いトラックの荷台にはなぜかモーターボート。そして、滑るように川面
を移動する橋のゴンドラ上で、トラックから降りた男女がゆっくりと踊
りだす。シュールな映像と静かで緊張感のあるジャズ…このタイトルバ
ックを見るだけで何かが起こりそうな予感。一行は海軍の兵営を過ぎ、
町の中心部にあるコルベール広場(Place Colbert)を目指す。広場の一
隅にあるサンルームのようなガラス張りの明るいカフェはイヴォンヌの
店。30代半ばの彼女には、よく妹と間違えられる20歳前後の双子の娘
(デルフィーヌとソランジュ)と、まだ小学生の男の子(ブーブー)がいる。
そして、月曜日までの4日間に彼女たちに何が起こるのか…。

 この作品は、言葉(歌詞と台詞)、音楽(ジャズとシャンソン)、ダンス
(モダンとバレエ)、映像美が奇跡的に融合した2時間の大作です。素晴
らしいカメラワーク、快晴の日差しの下で踊る豊かな色彩、雨など一滴
も降らず、夜の場面は1シーンだけ。見た目はほとんど「シェルブール…」
の裏返しで陽気そのもの。男女の出会い、別れ、再会、決定的な清算…
をカリカチュアした、洒落たラブ・コメディです。血なまぐさい暴力も
露骨なセックスも登場しませんが、暗い戦争の記憶を引きずる人がさり
げなく描かれます。ほとんどハッピーエンドに見えますが、すべては
「海まつり」の高揚のなかで起こったこと。恋とはハプニングから始ま
り突然終わるもの…という教訓は、この映画全体が語っています。

 この映画の本当の主役は双子を演じたドヌーヴでも、実姉のフランソ
ワーズ・ドルレアック(作品公開の3カ月後に惜しくも自動車事故死)で
もなく、イヴォンヌ役のダニエル・ダリューです。実年齢(49)よりだい
ぶ若い役ですが、彼女の演技は素晴らしく、細かいところまで神経が行
き届いています。出演者の中でただ1人、歌も吹き替えなしで本人が歌
い、猟奇殺人事件を伝える新聞記事を歌ってみせる面白い場面もありま
す。ダリューなしではこの作品は成り立たないでしょう。戦前から活躍
してきた大女優で歌手でもあり、92歳の今も現役です。

 「ロシュフォール…」は台詞による会話劇と、歌やダンスが交互に展
開する構成ですが、登場人物の境遇などのストーリー展開の鍵はすべて
歌詞で歌われます。しかも、ドミは台詞や歌詞に(さらに映像にも)たく
さんの「遊び」を仕掛けています。歌詞を理解してはじめてストーリー
と面白さがわかる映画です。この作品はフランス語版と英語版が同時制
作されました。つまり、英語の字幕は作品の一部といえる完成度の高い
もので、フランス語が分からなくても理解に役立ちます。しかし、その
英語版でも苦心の跡は見られ、日本語の字幕作成ではそれ以上に大幅に
妥協せざるを得ないでしょう。

●参考リンク
・BFI (British Film Institute):
 http://www.bfi.org.uk/
・フランス映画のデータベース:
 http://filmsdefrance.com/
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