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■ 地上デジタルテレビ放送にメリットはあるのか?    田村洋一

 最近日本では、国民の生活に大きな影響を及ぼす決定が知らないうち
になされ、実施間際になって気がつくという例が多いようです。最大の
問題は「米軍再編」や「裁判員制度」ですが、今回はもう少し細かい問
題に触れたいと思います。

 テクノロジーに強いことを自他ともに認める私としては、デジタル技
術自体の有用性は極めて大きいと考えていますが、「地上デジタルテレ
ビ放送」となると消費者にとってどんなメリットがあるのか疑問を感じ
ています。とくに最近の「ダビング10」騒動をみて、コンテンツのデジ
タル化が消費者にとってはむしろマイナスに作用しているのではないか
と思わざるを得ません。この騒動の経緯については6月13日付の日経朝
刊に「ニュースの理由(わけ):『ダビング10』迷走続く--金縛り著作権
法を象徴」という同紙・渋谷高広編集委員の明解なコラムが掲載された
ので、読まれた方も多いことでしょう。

 端的に言って、現在のBS/地上デジタル放送に適用されている録画の
「コピーワンス」方式は利便性を損なうだけでなく、消費者を「潜在的
不正コピー犯」とみなすもので、まことに不愉快な仕組みです。そもそ
もこれは強力なコピー防止機能であり、いったんハードディスク(HDD)
レコーダに録画したデータをDVDディスクへ複写(copy)ではなく移動(move)
するものなのですから、名称からして欺瞞的です。実用上トラブルが多
く不評なため、「オリジナルのHDDから9枚までのDVDへの複写を認め、
10枚目は移動とみなしてオリジナルを消去する。ただし、DVDから別の
媒体への複写は認めない」というダビング10方式が考案され、導入直前
までいっていました。これで利用者は、複写したDVDに互換性がないこ
とに気づいた場合でも、もう一度作り直すことができ、保存用にバック
アップも作れます。この程度のことができなければ安心してHDDレコー
ダを使えません。ところが、著作権の「権利者側」と文化庁は、全く別
の「私的録音録画補償金」問題(これも奇々怪々な制度)と絡めて、土壇
場でダビング10の導入に待ったをかけました。結果的に無期限延期にな
ってしまったのです。

 本来、個人使用の複写は一定数までは規制すべきではなく、それを超
える分についても禁止ではなく課金する仕組みを構築すべきなのです。
技術的にはDVDのCPRM(Content Protection for Recordable Media)規格
を拡張し、割高の専用媒体を用意すれば可能と思われます。また、個人
認証を完備した上で、自宅のパソコンやネットワーク上の個人用サーバ
にあるビデオデータをネットワークを介して視聴することも認められる
べきです。現行の規制は「何が何でもコピーさせない」という頑なな姿
勢であり、ここからはデジタルコンテンツの楽しい使い方など生まれる
余地はありません。これはビジネス的にみても大きな障害です。

 さらに、デジタル放送の受信にはスクランブル解除のためのB-CAS(CAS:
Conditional Access System)カードが必要です。これはBSデジタル放送
の開始に合わせて電波法を補うために1995年に発令された郵政省令「超
短波データ多重放送に関する送信の標準方式」の中で「有料放送」にス
クランブルをかけることが認められたことが発端になっています。とこ
ろが、地上デジタルテレビ放送の開始に合わせて2003年に発令された総
務省令「標準テレビジョン放送等のうちデジタル放送に関する送信の標
準方式」の中では、「放送番組に関する権利を保護する」という文言に
変えられました(※「著作権」とは書いていないことに注意)。その結果、
無料の地上デジタルテレビ放送にもスクランブルがかけられることにな
ったのです。B-CASカードには利用者登録手続きがあり、NHKが受信者を
把握するための仕組みといううがった見方もあります。しかし、本来不
要なCASモジュールを組み込むために受信コンバータやレコーダの価格
が上がり、B-CAS社によるB-CASカードの運用コストも何らかの形で転嫁
されているはずなので、消費者は余分の負担を強いられています。つい
でに言えば、デジタルレコーダに必ず付いている電話線インタフェース
も無用の長物ですが、ここでは詳述するスペースがありません。

 現在、世界各国で周波数再編が進行中で、そのためのテレビ放送のデ
ジタル化が進められています。米国では「DTV transition」と呼ばれ、
大規模テレビ局のアナログ停波は2009年2月17日、英国では「Digital
switchover (DSO)」と呼ばれ、最終的なアナログ停波は2012年、そして
日本のアナログ停波は2011年7月24日です。視聴者にも経済的負担を求
めることから、米国FCCも英国Ofcomも日本の総務省とその外郭団体も、
デジタル移行について一般向けの啓蒙的な広報活動を展開していますが、
周波数再編そのものについてはOfcomの情報が最も充実しています。周
波数再編の目的は、従来のテレビ放送(VHF/UHF)が使用している周波数
帯をデジタル化して圧縮(1波あたりの帯域は35%程度に減少)し、UHF帯
の一部に集約することで、空いた周波数帯「アナログ跡地」(digital
dividend)を移動体無線で活用する余地を作ることです。平たく言えば
電波の「地上げ、転売」です。機器メーカーが宣伝する地上デジタルテ
レビの「フルハイビジョン画質の素晴らしさ」や「電子番組表(EPG:
Electronic Program Guide)の便利さ」などは、ほんの表面的なことに
すぎません。

●参考:
・Digital Dividend Review - A Plain English Summary of the
Consultation(19 December 2006, Ofcom);デジタル移行とスペクト
ラム管理の重要性についての平易な解説書:
  http://www.ofcom.org.uk/consult/condocs/ddr/ddr_plainenglish.pdf
・Dpa(社団法人デジタル放送推進協議会)
 http://www.dpa.or.jp/
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