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■ 「山本ゆうじの翻訳道具箱」(その22)       山本ゆうじ

今回も「翻訳者にとっての翻訳ソフト」についてです。

◆専門用語辞書について

翻訳ソフトに関して、ともすれば「専門用語辞書の単語数が多ければ正
確に翻訳できる」と考えがちです。確かに、単語が辞書に収録されてい
ないことが原因で、正確に翻訳されないこともあります。しかし、IT翻
訳者にとっては、専門用語辞書の単語数だけでは、翻訳ソフトの質を判
断することはできません。なぜならば、用語集に基づいて翻訳するIT翻
訳者が真に必要としているのは「適切なユーザー辞書」であって、専門
用語辞書ではないからです。IT翻訳の場合は、使用する語彙は基本辞書
に入っているか、専門辞書には入っていない、各社独自の用語のどちら
かであることが多いようです。つまり「基本辞書+専門用語辞書」では
なく、「基本辞書+ユーザー辞書」が主になります。

ただし医学、化学、法律などIT以外の専門分野では、やはり専門用語辞
書も重要と思われます。もちろん分野によっては、同じ言葉が別な意味
で使われますから、翻訳する文書の内容によって適切な専門用語辞書を
選択することが重要です。たとえば、file は IT では「ファイル」です
が、建築や工学では「やすり」かもしれません。また colon は IT では
「コロン」ですが、医学では「結腸」ですし、system といえば IT では
「システム」ですが、医学では「系統」、「組織」、「器官」などの訳
語になります。適切な辞書を選ぶことと、無関係な辞書を外すことは、
収録語数の多さ以上に重要になることがあります。

一般に、翻訳ソフトは、専門用語だらけの文章を訳すのは得意です。専
門性が高くなるほど、使われる単語が一意的になる(訳語が1つに定まる)
からです。ただし一般的な傾向として、専門的な文章では、1文の長さ
が長く、文の構造が複雑になることがあります。複雑な文や長い文は、
翻訳ソフトが苦手とするところです。ただ翻訳ソフトが正しく訳せない
ような文は、人間にとっても解釈に苦しむことがあります。特に日英の
場合では、そのまま英語にできるような文章はほとんどお目にかかりま
せん。違う言語である以上、単純な置き換えにはならないことはもちろ
んですが、それにしても、表記、論点、文の主体や目的語などがあまり
にもばらばらな悪文だらけであることは(人様のことは言えませんが)、
日英翻訳者の方ならご同意いただけるかもしれません。専門的な文章で
も簡潔明解に書かれた文書では、翻訳ソフトはかなり正確に訳すことが
できます。

◆ユーザー辞書と専門用語辞書

IT翻訳の場合、ユーザー辞書は、クライアントやエージェントから支給
された用語集から、ユーザー自身の手で作る必要があります。このユー
ザー辞書が、いかに簡単に作成できるかということこそが翻訳ソフト選
びでは重要です。専門用語辞書が充実していれば、登録の手間が省ける
こともありますが、逆に、改めて登録し直す手間が発生することもあり
ます。仮に必要な用語が収録されていたとしても、ユーザーは専門用語
辞書に含まれている単語が妥当なものであるか、常に自分の目で確認し
て判断する必要があります。これはどの専門分野でも同じことです。

現在の翻訳ソフトはほぼすべて、ユーザーをあまり「信用」していませ
ん。ユーザー指定の訳語を優先的に使用するオプションはありますが、
適用されない場合もあります。これは大半のユーザーが英語のプロでは
ないと仮定しているからです。事実、基本的な単語の優先順位をユーザ
ーが変更してしまうと、正しい翻訳結果が得られなくなることがしばし
ばあります。その意味では、「ユーザーよりソフトを優先」という考え
方は正しいのですが、「用語適用ツール」としては、これでは不便です。
翻訳者ユーザーのために、ユーザー指定を最優先にするオプションが欲
しいところです。


《このコラムは音声認識ソフトを使用して口述で執筆し、音声読み上げ
により校正しています》

ご質問、ご感想、ご要望、ご意見などは、tran@nichigai.co.jp まで
お気軽にどうぞ。
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■ 「山本ゆうじの翻訳道具箱」(その21)       山本ゆうじ

◆使いこなしの研究

『解体新書』に代表されるように、およそ翻訳は、日本のすべての近代
的な学問の原点であり基礎でありながら、軽視されてきたことが多かっ
たように思います。あらゆる学問分野において、研究者ならだれでも多
かれ少なかれ翻訳をしなくてはなりません。しかし現時点でも、翻訳の
手法を総合的に体系化して考える翻訳学会は存在していないようです。
これは(学習法と教授法を含め)日本語自体の研究がなかなか進んでい
ないこととも関係しています。一例として、日本語の基本中の基本とも
いえる、格助詞「は」と「が」の使い分けをすらすらと説明できる人で
さえ、なかなかお目にかからないものです。私のような未熟者が言うの
もなんですが、「どうすれば効率的かつ正確に翻訳できるか」の研究は、
まだこれからと感じます。

私は4年前から翻訳ソフトを実務翻訳の仕事に投入しています。この4年
間で翻訳ソフトが劇的に変化したわけではありません。用語適用ツール
として使用する場合、翻訳ソフトは少なくとも4年前からすでに実用段
階にあったのです。「現在のレベルの翻訳ソフトでは仕事に使えない」
という考え方は完全に誤っています。翻訳ソフトにそもそも何を求める
べきか、という点で勘違いをしているのです。そのような見方では、お
そらく5年たっても10年たっても「使えない」ままでしょう。翻訳ソフト
は、翻訳者に代わって翻訳をするわけではないのです。用語適用ツール
としての翻訳ソフトは、翻訳者に代わって「入力する」だけです。

問題は翻訳ソフトの使いこなしの研究が翻訳業界でほとんど行われてこ
なかったことにあります。翻訳ソフトを使いこなしている人はごく一部
に限られ、大多数の人には誤解されたままでしたし、今もそうです。翻
訳ソフトはあくまでも用語適用ツールとして考えるべきであり、訳質が
翻訳ソフトに帰せられるような使い方はすべきではありません。訳質の
責任はあくまでも翻訳者が持つものです。

◆ユーザー優位とは

翻訳ワークフロー SATILA では、翻訳者が翻訳の工程を完全に掌握して
いる状態を「ユーザー優位」と呼びます。これは「翻訳者優位」と言い
換えても差し支えありません。逆に翻訳ソフトが主導権を握っている状
態は「ソフト優位」です。ユーザー優位を実現するには、翻訳ソフトが
ユーザー優位を可能にする機能(すなわち対訳エディタと一定以上の辞
書管理機能)を備えているとともに、翻訳者が翻訳ソフトの誤りを常に
指摘できる技能を持つ必要があります。これはあくまで全体的な状態を
指しているのであり、ソフトとユーザーのどちらかの状態だけを指して
いるのではありません。一般ユーザーが使う上ではソフト優位で何ら問
題はありません。その場合、ユーザーはボタンを1つ押すだけですが、
ソフトのそのままの翻訳結果に満足するしかありません。これに対して
ユーザー優位であるということは、徹底的なカスタマイズを行うという
ことであり、ソフト優位とは対極的な高度な作業が求められます。しか
し、翻訳結果はユーザーの意思を完全に反映したものになります。

「仕事として翻訳をしている」のでなければ、ユーザー優位を実現でき
る能力を持っているユーザーは、翻訳ソフトをほとんど必要としないで
しょう。では「仕事として翻訳をしている」翻訳者の場合はどうでしょ
うか。翻訳者の場合は、ユーザー優位を余裕で実現できる能力を持った
者が、適切なツールを使うことにより、指定された用語や表現をきちん
と反映した上で、効率的かつ高品質の翻訳を実現できるわけです。

《このコラムは音声認識ソフトを使用して口述で執筆し、音声読み上げ
により校正しています》

ご質問、ご感想、ご要望、ご意見などは、tran@nichigai.co.jp まで
お気軽にどうぞ。
■「山本ゆうじの翻訳道具箱」(その20)        山本ゆうじ
                                                     
◆翻訳者ユーザーの要件と脳内翻訳

§翻訳ソフトの使いこなし

翻訳業界にとって、合理化の第1の波はパソコンの導入、そして第2の波
は翻訳メモリでした。翻訳メモリは、初期の翻訳ソフトへの過剰な期待、
そしてその後の幻滅から生まれました。翻訳メモリの採用は、現在も着
実に広がっているようです。しかし、合理化の第3の波は、翻訳ソフトに
なるでしょう。翻訳ソフトの質的な向上が望まれるのはもちろんですが、
それよりもはるかに重要なのは「翻訳ソフトの使いこなし」が研究され
ることです。

だれしも時間をかければ、急いでするよりよい翻訳はできるでしょう。
翻訳者は翻訳ソフトにより品質を向上できますが、その品質の向上とは
用語や表現の統一および自動入力という、機械的な部分です。組み込ま
れた膨大な辞書により、より豊かな表現を確認できるという点では、人
間的な部分での向上ももちろんあります。しかし、「絶対的には」自分
の能力以上の翻訳はできません。つまり翻訳ソフトは原則として、「自
分の能力よりうまい翻訳をするため」に使うのではありません。翻訳者
であれば翻訳ソフトよりまずい訳をするようでは困ります。翻訳者は、
翻訳ソフトを「自分のベストの翻訳を、すばやく、容易に、確実に行う
ため」に使うのです。また「翻訳者のための翻訳ソフトの使い方」は翻
訳者だけにあてはまるものです。翻訳業務ユーザー、一般ユーザーが翻
訳ソフトを使用しても「翻訳者になれる」わけではありません。

翻訳者の場合は、それほど時間をかけずに、丁寧な翻訳ができる、とい
う点に翻訳ソフトを使う意味があります。同じ時間内では、「相対的に」
本来の自分の能力以上の翻訳ができるということです。そのためには自
分のレベルを把握する必要があります。翻訳ソフトを使いこなすには、
高度な英語力、(日本語力を含む)翻訳力、パソコン技能が必須です。

§脳内翻訳

翻訳者が翻訳ソフトを使う場合、リアルタイムに英語を理解し、翻訳で
きることが要求されます。この技能は残念ながらごく一部の翻訳者に限
定されるようです。具体的には高度な英語の会話能力が要求されます。
会話能力は翻訳に一見関係ないように思われるかもしれませんが、通訳
と同じようにリアルタイムで英語を理解し、「英語がすらすら話せる翻
訳者」であるか、というのが目安の1つとなります。海外での生活経験な
どもあるとよいでしょう。なぜかといえば、翻訳者は、翻訳ソフトにと
らわれずに、頭の中で翻訳をひと足先に完成させる必要があるからです。
これを「脳内翻訳」と呼んでいます。

翻訳ソフトによる効率的なやり方を説明しようとすると、「そんなこと
をするぐらいなら手で入力した方が早い」と言われる方がよくいます。
落ち着いて考えてみてください。今回1回きりの作業であれば、手入力
した方が確かに早いかもしれません。しかし今後同じ作業を何回繰り返
すことになるでしょうか。概算でもいいので計算してみてください。そ
れに本当に「手で入力した方が早い」のでしょうか。ズバリ言ってしま
えば、ここでの問題は、むしろ「入力しながらでないと翻訳できない」、
つまり頭の中で明確な訳文のイメージを保持できないということだと思
われます。

次回も翻訳ソフトについてです。ご質問、ご感想、ご要望、ご意見など
がありましたら、tran@nichigai.co.jp までどうぞ。

《このコラムは音声認識ソフトを使用して口述で執筆し、音声読み上げ
により校正しています》
■「山本ゆうじの翻訳道具箱」(その19)        山本ゆうじ
                                                     
翻訳者ユーザー、翻訳業務ユーザー、一般ユーザー

翻訳ソフトのユーザー層には、大別して翻訳者ユーザー、翻訳業務ユー
ザー、一般ユーザーの3つが考えられます。翻訳者ユーザーは、フルタ
イムでの翻訳を主な業務とするユーザーです。これに対して、翻訳業務
ユーザーとは、いわゆる翻訳のプロではなく、会社内での業務の一環と
して翻訳を任されているユーザーを指します。一般ユーザーとは、業務
としての翻訳よりも、自分が英語の文章を理解する助けとして翻訳ソフ
トを使用するユーザーや、ビジネス以外の趣味などの用途で使用するユ
ーザーを指します。

一般的に、英語と翻訳能力は、一般ユーザー、翻訳業務ユーザー、翻訳
者ユーザーの順に高くなります(これはあくまで一般論であり、例外も
考えられます)。これらのユーザー層では、それぞれ翻訳ソフトを使う
理由がまったく異なります。一般ユーザーであれば、英語で大量の文章
を読むのが苦手なために翻訳ソフトを使うかもしれません。しかし、翻
訳者ユーザーは、「英語が理解できないから」翻訳ソフトを使うのでは
ありません。

また翻訳者ユーザーは、翻訳業務ユーザーと一般ユーザーとは決定的に
異なる点があります。それは、翻訳者ユーザーは、「商品としての訳文」
を作成するのであり、自分の翻訳に責任を持つ必要があるということで
す。品質管理が要求される、といってもいいでしょう。翻訳業務ユーザー
は、社内文書などの翻訳では、おそらくそこまでの品質を求められていな
いはずです。また一般ユーザーにとっては、自分が理解できれば済むわけ
ですから、「品質」といっても、翻訳者ユーザーに求められるものとはま
た違います。ユーザーの側からすると、自分がこれらのユーザー層のどれ
にあてはまるのかを考えることも重要です。

根強い誤解として、翻訳者ユーザーでありながら、一般ユーザーと同じよ
うに「ボタンを押せば翻訳ソフトが全部やってくれる」ことを期待してい
る場合があります。これは、自分がどのようなユーザーであるかという位
置付けが不明確であるために起きる勘違いです。翻訳者ユーザーであれば、
このような使い方をすべきではありません。またそのような使い方をして
も、期待を裏切られるだけです。

それでは、翻訳者ユーザーであれば、翻訳ソフトをどのように使うべきな
のでしょうか。一言でいえば、翻訳者ユーザーは、「ユーザー辞書を中
心として徹底的にカスタマイズする」という使い方をしなければなりませ
ん。そのためには、翻訳ソフトのことをよく理解する必要があります。

これまでの翻訳ソフトは、翻訳業務ユーザー、一般ユーザーを主なター
ゲットとしているようです。「プロ用」とは銘打っているものはありな
がらも、必ずしも翻訳者ユーザーに広く受け入れられてきたとはいえま
せん。その原因として、翻訳ソフトメーカーが翻訳者のニーズを正確に
把握していなかったことに加えて、翻訳者側の使いこなしの研究が不十
分であったことが挙げられます。「パソコンなどに翻訳ができるものか」
という翻訳者の自負もあるのでしょう。しかし、実際には、パソコンに
やらせれば済む作業というものは多く存在します。機械的な繰り返し作
業をパソコンにやらせることで、翻訳者は「翻訳者にしかできない」本
来の作業に集中することができるようになります。そのためには、「パ
ソコンにどこまでなら任せられるのか」ということを冷静に、正確に把
握する必要があります。

次回は、翻訳者が翻訳ソフトを使う際の要件について扱う予定です。

ご質問、ご感想、ご要望、ご意見などがありましたら、
tran@nichigai.co.jp までどうぞ。

《このコラムは音声認識ソフトを使用して口述で執筆しています》
■「山本ゆうじの翻訳道具箱」(その18)        山本ゆうじ
                                                     

翻訳ソフトと翻訳メモリの違い

これまでは主に翻訳メモリについてご紹介してきました。

翻訳ソフトと翻訳メモリの違いとは何でしょうか。翻訳ソフトは、自然
言語処理に基づいて、品詞の判定と構文の解析などを行い、翻訳処理を
行います。その一方で翻訳メモリは、文法的な処理は一切行わず、数学
的な類似度にのみ基づいて、以前に翻訳した訳文を再利用することを目
的にしています。これらの特性にはそれぞれ一長一短があります。翻訳
ソフトは非常に複雑な処理をしているにもかかわらず「誤訳」をするこ
とがあります。その一方、翻訳メモリは改版など「ほんのわずかの違い」
しかない場合には非常に有用ですが、違いが少しでも大きくなると、流
用できる文が激減してしまいます。

最近では業務用翻訳ソフトには翻訳メモリ機能が含まれるため、両者の
区別が難しくなってきました。しかし業務用翻訳ソフトに付属する翻訳
メモリ機能は、現時点では、単体の翻訳メモリ製品である TRADOS など
には及びません。また納品物として TRADOS のファイル形式であること
が求められることもあります。

よくある誤解ですが、翻訳ソフトと翻訳メモリは「どちらか一方を使わ
なくてはいけない」ということはありません。もっとも効率的な翻訳ワ
ークフローは、翻訳ソフトと翻訳メモリの双方の特性を理解した上で、
適切に組み合わせて使うことです。

■受動的/能動的な用語管理

翻訳ソフトの特性として、あらかじめ設定した用語集に基づく翻訳がで
きます。翻訳メモリでも用語管理ツールがありますが、これは原則とし
て人間の目で見て確認する必要があります。このため翻訳メモリでの用
語管理は、「受動的な用語管理」であるといいます。これに対して翻訳
ソフトの場合は、用語集をユーザー辞書として作成し、そのユーザー辞
書の用語が「自動的に」適用されるため、「能動的な用語管理」である
といいます。

■語句単位/文単位の翻訳資産

以前に「翻訳資産」という考え方についてご紹介しました。この考え方
に沿うと、翻訳ソフトは「語句単位の翻訳資産」を扱い、翻訳メモリは
「文単位の翻訳資産」を扱う、ということもできます。語句単位の翻訳
資産とは、「ユーザー辞書」のことです。翻訳者が業務用翻訳ソフトを
使う上で、ユーザー辞書は必須です。翻訳者の場合は、ユーザー辞書を
使わないのでは翻訳ソフトを使ったことにはなりません。

また翻訳者ユーザーにとっては、雑誌や一部のWebサイトで行われている
「翻訳精度の比較」はほとんど意味がありません。「翻訳の精度」が問
題になるのは、カスタマイズを一切行わず、「翻訳ボタンを押しておし
まい」という使用法をする一般ユーザーだけです。なぜならば、ユーザー
辞書が適切に作成されている場合、一定の翻訳精度の水準を満たす業務
用翻訳ソフトでは、結果はほぼ同じになるからです。また「翻訳者が翻
訳のすべての過程を完全に掌握する」ことが、翻訳者が翻訳ソフトを使
用する大前提です。逆に言えば、どの業務用翻訳ソフトを使っても、結
果がほぼ同じになるようにユーザー辞書を作成する必要があります。

「翻訳の精度」が問題にならないとすれば、翻訳者ユーザーは、翻訳ソ
フトのどのような点に注目すべきなのでしょうか。この続きはまた次回。

ご質問、ご感想、ご要望、ご意見などがありましたら、
tran@nichigai.co.jp までどうぞ。

《このコラムは音声認識ソフトを使用して執筆しています》
■「山本ゆうじの翻訳道具箱」(その17)
                                                      山本ゆうじ

翻訳ソフトは「用語適用ツール」

 おそらく、みなさんのほとんどは、業務用翻訳ソフトをお使いではな
いと思います。また以前は使っていたが、使用を断念したという方もい
らっしゃるのではないでしょうか。

 業務用翻訳ソフトとは、消費者向けの翻訳ソフトに対して、LogoVista
(ロゴヴィスタ)、The 翻訳(東芝)、PC-Transer(クロスランゲージ)、
ATLAS(富士通)などの「対訳編集を前提にした翻訳ソフト」を指します。
翻訳者が翻訳ソフトを使うのは、「用語の自動適用ツール」として、効
率を上げ品質を向上するためです。たとえばA社の仕様と指定用語1000語
で翻訳した後で、似ていても微妙に違うB社の仕様と指定用語1500語で2
週間翻訳するとしましょう。その次の日にはまたA社の用語で翻訳すると
いった場合、何も工夫をしないと、少々気をつけたぐらいでは仕様や用
語を取り違えてしまいます。翻訳会社やクライアント、チェッカーや他
の翻訳者がその間違いを訂正することになります。ミスが残れば、その
翻訳を読まされるユーザーも混乱します。このような場合でも、翻訳ソ
フトを使えば、確実にすべての用語を適用し、仕様をきっちり守ること
ができます。

 翻訳ソフトで「最初から最後まで自動で翻訳できる」という過剰な期
待は禁物です。というより、翻訳者が使う場合、業務用翻訳ソフトは全
自動で使うものではありません。翻訳サイトや消費者向け翻訳ソフトの
ように、「ボタンを1つ押しておしまい」ではないのです。

 翻訳者は、翻訳ソフトを使うワークフローのすべてを完全に掌握し、
自分の予想通りの訳文が得られるようにする必要があります。このため
には、適切なユーザー辞書の構築と設定、また翻訳ソフトの癖を補正す
る外部的な整形フィルタやその他のツールが必要です。このような作業
を、翻訳ソフトワークフローを「プログラミングする」と表現すること
ができます。これは単なる比喩ではなく、翻訳ソフトの問題点を補うた
めに、実際にWSHスクリプトやVBAマクロを作成して行う自動化が必須と
なります。ここでは、翻訳者の意思(すなわち適切な単語や表現の選択)
を可能な限り正確に反映し、最小限の修正で完全な訳文にすることを目
指します。このようにして作成された高品質な訳文からは、翻訳ソフト
を使ったということはまったく判断できません。ただ翻訳ソフトを使わ
ない場合に比べて訳抜けやミスが非常に少なく、また効率的に作業でき
るという点が違います。逆に言えば、翻訳ソフトを使ったことが分かる
ような訳文では困ります。適切なユーザー辞書、正しい設定、外部フィ
ルタ、そして翻訳者による徹底的な確認のすべてがそろって、はじめて
自然な訳文を効率的に作成することができます。

 ただし、翻訳ソフトをうまく使いこなすには、原文を見て頭の中だけ
で訳文を構築し、翻訳ソフトの誤りを完全に指摘できる、最低でもTOEIC
850以上の英語能力と、翻訳ソフトより常に自然な訳文を作れる実務経験
3年以上の翻訳能力、それに加えて Word、Excel、エディタを自由自在に
組み合わせてユーザー辞書、マクロ、フィルタを作成できる高度なパソ
コン技能が求められます。

 今後数回にわたって、翻訳ソフトについてさらにご紹介します。ご質
問、ご感想、ご要望、ご意見などがありましたら、tran@nichigai.co.jp
までどうぞ。
■「山本ゆうじの翻訳道具箱」(その16)
                                                      山本ゆうじ

翻訳資産という考え方

 翻訳メモリと用語集は、クライアントにとっての資産、つまり「翻訳
資産」です。クライアントにとっては価値あるものですから、「タダで
ついてくるもの」とは考えるべきではないでしょう。翻訳資産を軽視し
ていれば、それに基づく翻訳も、それなりのものにしかなりません。

 翻訳メモリの導入時の、最初のメモリと用語集が重要であるというこ
とは、簡単に想像がつくはずです。その後のすべての翻訳が、そのメモ
リと用語集に基づくわけですから。これをそれぞれ、「マスターメモリ」、
「マスター用語集」と呼んでいます。翻訳会社は、最初のメモリである
マスターメモリの翻訳とマスター用語集の作成は、熟練翻訳者にまかせ
るべきです。また相応の値段も払うべきでしょう。

 言葉という巨大な存在を相手にする翻訳者には、もしかすると、習熟
ということはありえないのかもしれません。しかし、最近では特に、熟
練した翻訳者を軽視したり、使い捨てにしたりする傾向が感じられます。
翻訳者の募集にも「経験不問」というものがあり、目を疑うことがあり
ます。翻訳者の質がバラバラだと、翻訳資産を継承していくサイクルの
中で、せっかく練られ、チェックされた訳文を、初心者の勘違いでめち
ゃくちゃにするということがありえます。アクセス権、フィールド、属
性などの、翻訳メモリの設定によりある程度回避することはできますが、
翻訳者の質を判断できないと根本的な解決にはなりません。

 良質の翻訳資産の維持という観点からも、翻訳者の能力を客観的に測
定する仕組みが必要のように思われます。ご存じかもしれませんが、た
とえばチェスやオセロなどでは、レーティングの仕組みが発達していま
す。翻訳者同士の相互レーティングによる評価制度は、可能性として興
味深いと思います。

 日本市場に参入したばかりの外資系企業では、発注側の教育が不十分
で、自社製品への理解不足から、奇妙な用語が指定されてくることがあ
ります。翻訳者をある程度信頼していただき、フィードバックを反映し
ていただければ、修正される点ですが、この過程がきちんとしていない
と、奇妙な用語がそのまま定着してしまいます。時がたつと、なぜその
用語を使うようになったのかという経緯は知る由もない、ということに
なります。「ストレージ」という訳語も、このような無反省な翻訳から
生まれた語のひとつです。英米人に「ストレージ」と発音しても絶対に
通じません。英語の storage のアクセントは第一音節にあるからです。
そのため、この語は「ストーリッジ」と訳されなければならなかったは
ずです。

 翻訳資産という考えでは、100%一致の作業量がタダということにはな
りません。100%一致であっても、それが不一致部分の前後の文脈であれ
ば、そこを読まなければ適切な翻訳はできません。いや、一致率にかか
わらず全文を読まなければ適切な翻訳はできないはずです。また100%一
致の部分に間違いが存在しないとは限りません。
価値ある翻訳資産であるからこそ、常に翻訳者の目を通して不自然な点
がないか点検し、継続的に訳文を磨いていくべきでしょう。正しく使え
ばそのようなことが可能なのも、翻訳メモリならではです。

 また定期的に熟練翻訳者に依頼して、翻訳メモリに目を通してもらい、
変な表現や用語はないかチェックしてもらう作業も重要です。このよう
な積極的な定期点検を、「翻訳メモリのリフレッシュ」と呼んでいます。
このような定期点検を怠るのは、車検をしていない車に乗るようなもの
です。大きな企業であれば「飛行機」かもしれません。奇妙な表現や用
語を使い続けることで、あるとき突然大きな事故を起こして墜落するか
もしれません。定期点検を行うことで、はじめて安心して使える翻訳メ
モリを維持できるわけです。翻訳メモリはコスト削減のためだけにある
のではありません。品質の向上にもまた不可欠なものといえます。

 ご質問、ご感想、ご要望、ご意見などがありましたら、
tran@nichigai.co.jp までどうぞ。
■「山本ゆうじの翻訳道具箱」(その15)
                                                      山本ゆうじ

MultiTerm を活用しよう

前回に続いて MultiTerm の紹介です(MultiTerm とは TRADOS の用語
管理ツールで、TRADOS の一部ライセンスには含まれています)。

 一見きれいにみえる部屋でも、掃除機をかけるとゴミやホコリがいっ
ぱいあることがわかります。用語の統一についても同じです。ツールを
使用しないでいると、自分でいくら完璧にチェックしたと思っていても、
1度ツールで確認してみればミスがいくつもでて驚かされることがあり
ます。

 用語集を検索するのに、Word やエディタを使われている方もいます。
Word ではあいまい検索ができますし、エディタの中にもあいまい検索が
できるものがあります。ただ、翻訳に使用する用語を確認するのに、最
初の数ヒットだけで判断するのは危険です。より適切な訳語が、用語集
の最後の方にあったとしたらどうでしょうか。そこにたどり着くまで何
度もクリックして確認しなかった場合は、誤った用語を採用してしまう
ことになります。MultiTerm なら、類似の語を含めてすべての用語のヒ
ットを一覧で確認できます。

 また grep 検索をするためのソフトで、前後の文脈を含めて一覧で出
すものもあります。しかし、インデックスを作成しないタイプの検索ツ
ールは、数千から数万語の用語を検索するには速度に問題があります。
時間がかかると、確認がおっくうになりがちです。特に確認したい単語
がいくつもある場合は、少しでも早く検索したいものです。MultiTerm
では、多数の用語に対しても非常に高速に検索できます。

 また、インターフェイス、インタフェース、インタフェイスなどの表
記のゆれを吸収できるのも、MultiTerm の特徴です。これは、一般的な
あいまい検索のように長音や中黒などの「ゆれやすい表記」を設定する
のではなく、表記のゆれを(TRADOS 同様に)文字の違いから数学的に
計算して、類似度を導いているためです。人間が犯しやすい、事前に予
測できないパターンの間違いやゆれにも対応することができます。

 作業に慣れてくると記憶に頼って翻訳しがちですが、これはかえって
誤りを増やすことになります。特に同一プロジェクトで、複数の会社の
用語を切り替えて翻訳する必要があることがあります。このような場合
に、記憶に依存していると間違いが増えます。MultiTerm は、該当する
(もしくは設定可能な範囲でのあいまい一致に該当する)用語を
Workbench 内で自動的に指摘するので、ユーザーはその語を簡単に適用
できます。もちろん複数の用語集を併用したり、切り替えたりすること
ができます。「用語の確認」という作業を、半自動化できるわけです。

 さらに MultiTerm では、「訳振り」をすることもできます。翻訳メモ
リ(訳振りするだけなら空のメモリでもかまいません)と事前に用意し
た MultiTerm の用語集を開き、Workbench を[ツール]、[翻訳]の順にク
リックすると、[ファイルを翻訳]ダイアログ ボックスが開きます。次に、
[既知の用語を翻訳]で、[置換]を選択します。詳しくは、Workbench の
このダイアログ ボックスのヘルプを参照してください。

 MultiTerm による用語管理は、理想的にはクライアントが行うものです
が、翻訳者や翻訳会社で使用しても大きな効果があります。正直いって
以前のバージョンの MultiTerm 5.5 は複雑で、使い勝手はあまりよくあ
りませんでした。新バージョンの MultiTerm iX は、操作性、用語の取
り込み、速度など多くの点で改善されています。Excel や CSV、または
旧 MultiTerm 形式の用語集があれば、簡単に取り込むことができます
(その際のディレクトリやファイル名は、英数字を使うとうまくいきま
す)。せっかく MultiTerm を持っているのに埋もれさせている方は、
ぜひ使ってみてください。

 ご質問、ご感想、ご要望、ご意見などがありましたら、
tran@nichigai.co.jp までどうぞ。

■「山本ゆうじの翻訳道具箱」(その14)
                                                      山本ゆうじ

用語管理の重要性――MultiTerm

 ご存じの通り、翻訳者は、辞書と用語集を使いわけます。翻訳者は、
なぜ辞書を引くのでしょうか。「意味を調べる、または確認するため」
という答えがまず浮かびます。しかし、用語集の場合は、意味を確認す
るだけでなく「調べた訳語が適切であれば、その語を訳文に適用する」
という手順が必要です。

 ところで、ファンタジーの古典 "The Lord of the Rings" の翻訳、
『指輪物語』/『ロード・オブ・ザ・リング』について、訳語について
さまざまな議論があったことをご存じの方も多いと思います。『指輪物
語』に出てくる人名・地名・固有名詞の数は、非常に多数におよび、訳
語の統一は簡単ではなかったでしょう。オックスフォード大学の言語学
教授であったトールキンが、言葉の力によってひとつの壮大な世界を構
築したといえます。

 ちなみにどれだけの言葉が出てくるか、ちょっと気になる方はこちら
をどうぞ。きれいなイラスト付きのデータベースです(日本語)。

 the Lord of the Rings Library
 http://www33.ocn.ne.jp/~papygallery/

 それにしても、トールキンの翻訳で、もし翻訳メモリや用語管理ツー
ルが使用されていれば、どれほど作業が楽になっただろうか、とつい想
像してしまいます。

 訳語の不統一は、読者の混乱を招くことになります。実務翻訳におい
ては、単に違和感を覚えるというだけではなく、「ユーザーが説明書を
理解できない」「言葉の範囲が文書によりまちまち」という、より現実
的な問題が発生します。説明書の各章で使われている訳語が異なるため
に、ユーザーの理解が不十分であると、満足度が下がる一方、その件に
ついて問い合わせがあればサポートコストは上がります。それがもしソ
フトウェアの特定の機能を指す言葉であれば、訳語が統一されていない
ばかりに、開発者が苦労して作り上げた機能がユーザーにまったく使わ
れないということもあるでしょう。ある会社の、翻訳メモリが導入され
る前の翻訳文書を目にしたことがありますが、原文では同じ単語が、訳
文では3つも4つも訳語が使われていました。この文書でよく意思が通じ
たものだと、人間の可能性に頭が下がったものです。ともあれ、本気で
コスト削減を考える企業にとっては、用語管理は極めて重要なはずなの
です。

 TRADOS には、用語を統一するための用語管理ツール MultiTerm があり
ます。私の個人的な印象としては、TRADOS を所有しているユーザーでも、
MultiTerm を使用されていない場合がかなりあるようです。MultiTerm
の利点としては、翻訳メモリと Word に統合されている、強力なあいま
い検索が可能である、柔軟なフィールドの定義が可能である、などが挙
げられます。「Excel やエディタで間に合うのでは」と思われている方
もいらっしゃるかもしれません。しかし、Excel やエディタはデータベ
ースではないため(それに近い使い方をすることもできますが)、用語
の絞り込みやあいまい検索の点などで、専用の用語管理ツールである
MultiTerm には及びません。用語は長い文中では表記が微妙に違うこと
もありますが、特に Excel では "backup" と "back up" や、"fibre"
と "fiber" など、一字違うと見つけることができません。表計算ソフト
ですから、もともとあいまいな文章(とそれを構成する用語)を処理す
るようにはできていないわけです。どこが違うのかということは常に分
かるわけではないため、根気よく部分一致を確認するしかありません。
MultiTerm では、検索時にこのような表記の違いを自動的に吸収してく
れます。

 次回も MultiTerm の続きです。ご質問、ご感想、ご要望、ご意見があ
りましたら、tran@nichigai.co.jp までどうぞ。
■「山本ゆうじの翻訳道具箱」(その13)      訳語検索の意味

翻訳中に訳語がわからない語がでてきたらどうするか。これは、あらゆ
る翻訳者にとって日常的に出くわす問題です。辞書に載っていない語は
インターネットなどで探すのはいまや常識ですが、翻訳メモリを使う場
合は、まずメモリ内で「訳語検索」を行う必要があります。特に、支給
されたメモリの場合は「これまでに使われた訳語に必ず合わせる」こと
が、義務になります。たとえば configuration の訳語が「構成」か
「設定」か「コンフィギュレーション」かは、通常、分野やクライアン
トによって決まっているので、メモリ内で確認してその語を適用しなけ
ればなりません。この機能に関しては、文単位で一致しなくても、「同
じ分野」「同じクライアント」のメモリというだけでも、より適切な用
語を選ぶ手がかりになります。つまり、訳語検索については、文単位で
の一致率が高くない「同分野の別製品」のメモリをサブ メモリ(前回
のコラムを参照)として取り込んで使用する意味が十分にあるわけです。

TRADOS の場合は、Workbench で表示されている語句を選択して右クリッ
クし、[訳語検索]を選択することで、その語句が、他の文で、どのよう
な文脈でどのように使われているかを確認できます。このように、以前
の訳語を確認してそれに合わせることで、翻訳メモリを使ったときと使
わない場合では、用語の統一という点で決定的な差が出ます。ただ、こ
れは翻訳メモリを使う上で基本的かつ重要な手順でありながら、意外と
行われていないことがあります。訳語検索を怠ると、訳語がバラバラに
なり、チェッカーや、次にそのメモリを使う翻訳者が苦労します。訳語
検索は何も人のためだけではありません。自分でメモリを作成している
場合は「これまでに使った訳語を確認する」という意味で、自分自身の
ためでもあります。

ちなみに、Workbench で単語を選択して、訳語検索やコピーしたいとき
に、マウスなどでは範囲をきちんと選択するのに手間取ることがあります。
このような場合は、Word と同じようにダブルクリックすれば、単語をひ
とつだけすばやく選択できます。また Workbench では、矢印キーを使う
こともできます。Ctrl と Shift キーを押しながら矢印キーを押せば、
単語単位で選択できます。この他、Home、End なども同様に使用でき、
Shift キーと同時押しで、それぞれ、行頭と行末まで簡単に選択できます。
ちょっとしたことのようですが、作業のストレスを軽減できるはずですの
で、まだの方はぜひお試しください。

さて、訳語検索はその名の通り、訳語しか検索できません。特定の原語
を確認したい場合はどうしたらよいのでしょうか。この場合は Workbench
の[ファイル]メニューから「メンテナンス」機能を使います。ここでは、
原語、訳語はもちろん、作成者/変更者、作成日/変更日といった項目、
そして前回触れたテキスト フィールドで絞り込むこともできます。これ
は、翻訳メモリが「必要なデータを絞り込む」ためのデータベースであ
ることの利点です。また、すべての文に含まれる特定の語を検索し、全
置換することもできます。当コラムの第10回で紹介した例では、クライ
アント側の担当者の方が、メモリに対してメンテナンス機能で訳語を訂
正していれば、わざわざ翻訳会社に訂正を依頼する必要がなかったわけ
ですね。訳語をどのように統一するか、という点はクライアントでなけ
れば判断できないことがあります。メンテナンス機能は、クライアント
の方にぜひ活用して欲しい機能です。

さて訳語検索やメンテナンス機能では、自分から検索して確認しない限
り、ある訳語が正しいかどうか、指定された用語かどうかはわかりませ
ん。この手順を、もっと楽にできないでしょうか。

その方法は、また次回に。ご質問、ご感想、ご要望、ご意見がありまし
たら、tran@nichigai.co.jp までどうぞ。
■「山本ゆうじの翻訳道具箱」(その12)
  テキスト フィールドによるメモリ管理

前回は、なぜ汎用翻訳メモリに無理があるか、ということでした。実際
に発話・記述される文、ソシュールの用語を借りれば「パロール」は、
ひとつひとつユニークなものであり、翻訳では、改版など明示的に類似
している理由がない限り、クリシェの出現、また偶然の一致は期待でき
ないということです。テニス風にいえば、パロールは、唯一無二の一球
なのです。

さて、すべてを含む汎用翻訳メモリには、いささか難点があることはわ
かりました。では複数の翻訳プロジェクトをメモリにするのは無意味か、
というとそうではありません。現在の TRADOS では、一時に編集可能な
翻訳メモリは一つだけですが、「参照メモリ」という機能を使うことに
より、読み取り専用でもう1つのメモリを参照することができます。現在
作業中のプロジェクトに直接関係しないメモリは、このように参照メモ
リとして開くことができます。旧訳より古い訳や、類似しているが別の
種類のメモリを参照したい場合に便利です。ただし、参照メモリとして
開いている場合は直接編集できず、編集するにはいったん通常のメモリ
として開き直す必要があります。また、この場合でも、メモリの単位と
してはメインのメモリを入れて2つまでです。3つ以上の数のメモリを同
時に使って作業するには、どうすればいいのでしょうか。この場合は、
メモリをエクスポート・インポートすることにより、複数のメモリを1つ
のメモリにまとめる必要があります。

ここで重要となるのが、「テキスト フィールド」です。TRADOS では、
それぞれの分節に、原文、訳文、作成者などの情報のほかに、任意のテ
キスト フィールドをつけて分類することができます。具体的には、ある
分節が、製品A、製品B、製品Cのどの翻訳プロジェクトで使われたかとい
うことを記録して、後で判別できるということです。このような付加的
な情報があって初めて、翻訳メモリが正しく管理できます。このような
メモリ内の異なる複数のメモリを、私は「サブ メモリ」と呼んでいます。
テキスト フィールドは、単一のメモリ内の複数のサブ メモリを区別す
るための名前といえます。翻訳メモリの管理には、自動で生成される作
成者や変更者やタイムスタンプの情報も参考になりますが、エクスポー
トやインポート、別の編集を行った時点で変更されてしまいます。その
ため、「どの翻訳プロジェクトで使われたか」ということは、テキスト
フィールドで明記しておいた方がよいでしょう。ただし、あまり長い
フィールドが多数あると、すべて表示されないこともあります。また、
人間がそのつど見て識別するものでもあるため、96652 と 96662のよう
に数字の羅列だと、ぱっと見て区別しにくいこともあります。あるメモリ
の範囲をどの程度にするか、そしてそれぞれのメモリにどれだけのサブ
メモリを含めるかを考え、計画的に記号や名称を決めて設定する必要が
あります。このような分類は、クライアント、翻訳会社、翻訳者の3者で
統一して行うと効果的です。

テキスト フィールドは、単なる名前以外にさまざまな情報を付け加える
ことができます。あまり何でもできるので、どう使っていいか分からな
いというケースもあるようですが、ひとまず「サブメモリの名前」と考
えて使えば、ある翻訳プロジェクトで共通して用語や表記の問題があっ
たときに、適切に対処できます。

翻訳資産を単なるテキストではなく、データベースとして管理すること
の意味は、情報を分類し、フィルタリングできるという点にあります。
ちなみに TRADOS 6.5 からは特定の分節をまとめて削除できるようになり
ました。たとえば、特定の語を含むテキスト フィールドを持つ分節を
抽出して一括削除することができるわけです。これもメモリの管理には
便利な機能です。テキスト フィールドの設定は、慣れないと少々とまど
う点もありますが、複数の翻訳メモリを管理して効率的に作業を行うに
は、極めて重要な機能です。

次回は訳語検索について扱う予定です。ご質問、ご感想や、「もっとわ
かりやすく」「もっと詳しく」「この点について扱ってほしい」といっ
たご要望、「私はテキストフィールドをこんなふうに使っている」とい
ったご意見などもお待ちしております。

tran@nichigai.co.jp までどうぞ。
■「山本ゆうじの翻訳道具箱」(その11)汎用翻訳メモリは可能か

今回は前回に続いて、翻訳メモリについてのお話です。

翻訳メモリという仕組みの課題として、不一致の箇所では効率化に貢献
しない、ということがあります。改訂を重ねている文書など、なんらか
の理由で一致率が高い場合を除いて、異なる文書での旧メモリの一致率
は驚くほど低いものです。他の文書の一部を流用して作成した文書など
でない限り、つまり、類似している明確な理由がない限り、偶然の一致
というものはほとんど望めません。ただし、このような場合でも用語確
認ができるというのは大きな意味があります。しかし、用語適用という
点では、根本的には、一致率という数学的な分析ではなく、言語的な分
析を行う翻訳ソフトのほうが適しています。ところで、翻訳ソフトにつ
いては、翻訳者の間では99%誤解されているといえるでしょう。翻訳ソ
フトについては、また後ほど触れたいと思います。

さて、翻訳メモリを使い始めたころ、訳した文を片っ端からためこみ、
あらゆる翻訳に再利用できるようにする、「汎用の翻訳メモリ」という
ものができないか、ということを考えたことがありました。しかし、翻
訳メモリでの作業経験が蓄積されるにつれて、この発想の問題点に目を
向けざるをえなくなりました。人間が作成する文の複雑さは、文例を機
械的に蓄積するだけではとうてい対応できません。かつて存在し、今も
生きている日本人の「のべ人口」、そしてそのひとりひとりが書いた、
また日々書いている文章の数は想像もつかないほど多数ですが、それで
も、ここに書かれている文章のどれひとつとして、宇宙の開闢以来まっ
たく同じ文章が書かれたことはなかったでしょう。どうも表現が大げさ
ですが、確率の点からは、まったく同じ文が出現する確率は顕微鏡的に
小さいのです。句のレベルならともかく、一文まるまるを Google 検索
しても、よほど短い文やことわざ、決まり文句などでない限り、ヒット
することはまずありません。

Googlewhack という遊びをご存じでしょうか。
http://www.googlewhack.com/
Google の検索結果が1ページだけになるような2つの英単語の組み合わせ
を探す、というものです。また Google で検索できる 4,285,199,774 ウ
ェブページ(本原稿執筆時点)のうち、たとえば私自身のウェブサイト
中の1ページを特定できるような単語の組み合わせを見つけだすのは簡単
です。それほどよく似た文というものは少ないということです。

誤解のないようにはっきり書いておきますが、私はだから「翻訳メモリ
が無意味だ」といっているのではありません。翻訳メモリ自体は、きわ
めて有効な方法です。ただ「汎用の翻訳メモリ」というものは、手間の
割には、役に立つことはまれであるということです。

次回も翻訳メモリの続きです。

ご質問、ご感想や、「もっとわかりやすく」「もっと詳しく」「この点
について扱ってほしい」といったご要望、「いや、私は汎用翻訳メモリ
を便利に使っている」といったご意見などもお待ちしております。
tran@nichigai.co.jp までどうぞ。
■ 「山本ゆうじの翻訳道具箱」(その10)TRADOS の利点
                           山本ゆうじ

皆さんの中で TRADOS を使われている方は、かなり多いのではないかと
思います。使いこなしていらっしゃる方も多いと思いますが、なじみの
ない方のために説明しておきますと、TRADOS とは翻訳メモリの一種です。
翻訳メモリとは、翻訳済みの文章を文単位でデータベースとして管理す
るための仕組みです。翻訳対象に対して、以前に同じような文章を訳し
ていないか自動的にデータベースを検索し、その一致率に基づいて適宜
再利用します。完全に同じ文章や似た文章に対して翻訳作業を繰り返す
ことを避け、効率化が図れます。個人翻訳者が使う意義ももちろんあり
ますが、翻訳会社やクライアントでのコスト削減に有効で、IT 分野を
はじめとして翻訳業界に浸透しつつあります。翻訳メモリには、他にも
SDLX、Transit といった製品がありますが、特に IT 分野では TRADOS
が一般的なようです。

ただ、現状では翻訳メモリが十分に活用されない例、また逆に能率を下
げてしまっている例もあります。本来の能力を発揮するには、今後の理
解がさらに広まる必要がありそうです。

ごくまれにですが、ソフトウェアの翻訳で、手書きの赤字校正をいただ
くことがあります。クライアントさんが、数百ページにわたって、同じ
語句の訂正を、何度も何度も手書きで書き込まれているのです。ただ最
後のほうは根が尽きたのか、修正すら入っていません。ご苦労様であり
ます。私も人間ですから、もし何かの拷問としてこのような作業をさせ
られると(しかも短時間で完了せよとの条件付きで)、たぶん最後のほ
うでは疲労困憊すると思います。しかし、ここまで手間をかけていなが
ら、完全に直っているかというと、そうではないのです。クライアント
さんでの本来誤りを訂正するはずの修正段階でのもれや間違いを、再度
こちらで訂正する必要が出てしまいます。また修正されている語句が、
以前に頂いた指定と違うこともあります。これが意図的な変更で今回以
降はこれが正しいのか、修正者の手違いかは知るよしもありません。

このような場合に、翻訳メモリで一括して修正していれば、同じ語句の
訂正は一回で済み、また「校正」=>「反映」という二段階の手間をかけ
ることもなかったわけです。また用語が MultiTerm(TRADOS に含まれる
用語管理ソフト)で管理されていれば、作業にかかわる全員が、変更さ
れた用語を確実に反映できます。A さんが直した用語を B さんがさらに
直し、C さんが元に戻す……という、地獄で、転がり落ちる岩を未来永
劫、繰り返し押し上げるシジフォスの罰にも似た、ムダな作業をするこ
とはありません。膨大なコストと時間を即座に削減できたはずです。も
ちろん修正者の方も、徹夜残業せずにすんだはずです。

「校正は紙で」という考え方にも一理ありますが、もしそれが必要だと
すれば最終段階で行うべきでしょう。修正箇所が大量に予想される段階
では、パソコン上で処理した方が効率的です。

このケースは、翻訳メモリを作業に使用していながら発生した事態です。
もちろん、これは翻訳メモリを持っていない場合でも発生することでは
ありますが、仮に持っていても使い方をよく知らないのでは、持ってい
ないのと同じことです。「忙しいから」と勉強する時間を惜しむよりも、
使い方をしっかり身につけてうまく利用したほうが、結局は時間を節約
できるのではないでしょうか。

次回は、翻訳メモリの今後の課題についてです。

この連載に関するご質問、ご感想、ご要望などがありましたら、
tran@nichigai.co.jp までどうぞ。
■ 「山本ゆうじの翻訳道具箱」(その9)ATOK 17 と類義語
                           山本ゆうじ

今回は、この2月に発売された ATOK 17 についてご紹介します。ジャスト
システムの日本語入力システムである ATOK は、お使いの方も多いこと
でしょう。今回の新機能の目玉は、「連想変換機能」です。通常の日本
語入力システムの変換候補は、同音類義語だけです。連想変換機能では、
読みが同じでなくても意味が似た単語も変換候補として使えます。類義
語辞書に近いものであるといえます。Word には、標準で英語の類義語辞
書機能がありますが、皆さんはお使いでしょうか。「なぜ日本語では同
じような機能がないんだろう」と、かねがね思っていたのですが、これ
でようやく類義語辞書的な機能が気軽に使えるようになりました。

連想変換候補は、かなりたくさん出てきます。たとえば「たくさん」と
いう語の連想変換候補は 219 もあります。この語の場合は、[グループ
一覧]で「ある基準から見た数量・分量の『多少』」(「鱈腹」、「山盛
り」など)、「『多少』に関する慣用句」(「雀の涙」、「雲霞のごと
き」など)、「『多少』に関する故事・成語」(「九牛の一毛」「門前
市を成す」など)、「『多い』類語情報」(「巨万」「無尽蔵」など)
の4つのカテゴリーに分類されています。語によって、表示されるカテゴ
リーの豊富さは異なります。

こういう colorful な語の広がりというのは、見ているだけでも面白い
ですね。一昔前の小説などを読んでいて、日本語の語彙の豊かさを再発
見することはありますが、そんな表現が自分でも使えそうな気がしてき
ます。しかも、ATOK の一部であるため、類義語辞典と異なり、他の箇所
と見比べながら、その場でいろいろ入れ替えて推敲することができます。
文芸・出版翻訳で語彙のレパートリーを増やすのにももちろん使えます
が、趣味の詩作や小説などにも使えるかもしれません。

この機能は、なにも難しい、気取った表現を探すためだけに使うという
ものでもありません。むしろ現在は、「わかりやすい表現」を探す、と
いう使用法が求められているように思います。一般に、「わかりやすい
表現を探すことほど難しいことはない」といいます。たとえばチェッカー
の方なら、難しい語を使う癖のある翻訳者の言い回しを、わかりやすい
ものに変換できるでしょう。

ただしこの機能は類義語辞書そのものではないため、連想変換候補があ
る見出し語の数は、まだそれほど多くないようです。今後の充実に期待
したいところです。また、カタカナ語をより自然な日本語に言い換える
ための収録語を増やすことで、乱用をチェックすることもできるでしょう。

類義語といえば、英語では
 http://thesaurus.reference.com/
でも類義語を参照できます(ぽこぽこ広告が出るので、ポップアップ広
告対策が必須です)。ここを見ると、英語の語彙の豊富さに改めて驚き
ます。

使いやすさの点では市販のものに劣りますが、著作権切れのテキストを
公開している Gutenberg Project でも Roget's Thesaurus をダウンロ
ードできます。
 http://www.gutenberg.net/browse/BIBREC/BR22.HTM

◆Word の文章校正(補足)

なお前回、「TRADOS 6.5 を使用していると Word で日本語の文章校正が
機能しない」と書きましたが、回避方法を発見しました。メニューから
は使用できませんが、以下のような簡単なマクロを作成して、メニュー
やボタンに割り当てることで、文章校正を実行できます。

 Sub AltProof()
 ActiveDocument.CheckGrammar
 End Sub

ちなみにスペルチェックのみの場合は

 ActiveDocument.CheckSpelling

表記ゆれの場合は

 ActiveDocument.CheckConsistency

です。このように Word の機能を直接呼び出すことで、特定のマクロに
より、ある機能がメニューやツールバーで使用不可能にされていても、
その機能を使うことができます。

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■ 「山本ゆうじの翻訳道具箱」(その8)スペルチェックと文章校正

翻訳をしていて、原文のスペルミスの多さに、閉口されたことはありま
せんか?また受け取った英文メールがスペルミスだらけのことはありま
せんか?(ちなみに、私の翻訳作業ワークフローでは、その原理上、原
文にスペルミスがあれば必ず分かるようになっています。)また、「こ
んにちわ」または「こんばんわ」と書かれたメールはこれまで何回ご覧
になったでしょうか?

みなさんはワープロソフトのスペルチェックや文章校正機能をお使いで
しょうか。これらの機能は、ワープロソフトを使う意味の中でも重要な
ものですが、使われていないことも多いようです。なまじ自分の文章に
自信のある方ほど、これらの機能に抵抗をお持ちのようです。

現在のスペルチェックと文章校正機能はもちろん完全とは言えません。
しかし、特に大量の文章でケアレスミスを防ぐには必須の機能であり、
使っていない方はぜひ試してみることをお勧めします。「人間様にあれ
これ文句をつけるな」という気持ちでパソコンとけんかしてもしかたあ
りません。「パソコンは何でもできる」「パソコンでは何もできない」
という両極端な考えから抜け出し、「パソコンで何ができて何ができな
いか」を冷静に見極める必要があります。

Word 2003 までの日本語チェック機能は、英文スペルチェックほど確実
ではありません。ユーザーインターフェイスの翻訳やコマンドや関数名
などが多数ある場合は、確認する項目は増えてしまいます。しかし、や
はり入力間違いだった、ということがきちんとチェックできることもあ
ります。また Word には「表記ゆれチェック」機能があります。こちら
のほうは、送りがな、音引きや中黒、全角半角、「インターフェイス」と
「インタフェース」などの表記の統一には大変便利です。校正ツールが
的はずれの指摘をまったくしなくなるには、まだ技術の進歩が必要かも
しれませんが、現時点でも使うと使わないでは差が出るのは事実です。

Word の文章校正でチェックできる項目を確認してみましょう。[ツール]
メニューから、[オプション] ダイアログボックスを開き、[スペルチェッ
クと文章校正] タブの文章校正の [詳細設定] ボタンをクリックします
(Word 2003 の場合)。この設定は触ったこともないという方は、結構
いらっしゃるかもしれません。いろんな設定がありますね。とりあえず
全部にチェックを入れておいて、必要ないものを少しずつ外すというの
もいいかもしれません。最初は「お節介」かもしれませんが、「チェック
しといてよかった」という場面にそのうち出会うはずです。また、この
[文章校正の詳細設定] からは、校正語の登録ができます。MS-IME のイン
ターフェイスですが、Word から操作しないと出てきませんので注意。
ここに事前に校正用の単語を登録しておくと、「使用すると問題がある
単語」をチェックするという使い方もできます。

なお TRADOS 6.5 を使用していると、Word で日本語の文章校正が機能
しません。Word の startup フォルダにある trados6.dot を一時的に
名前変更するなどして、起動時に読み込まないようにする必要があります。

ところで、「こんにちわ」「こんばんわ」という表記は、電子メール、
チャット、掲示板などリアルタイムのコミュニケーション形態の普及に
より、特に広がったと思われます。このような挨拶は、手紙ではあまり
使わないでしょう。10年前に「こんにちは」と「書く」必要がある場面
がどれだけあったでしょうか。近年の「話し言葉的な書き言葉」の急速
な普及に伴い、「こんにちわ」と、発音のまま表記する人が増えたと思
われます。すぐに相手に届く電子テキストでやり取りする機会が増えた
からこそ、誤変換などだけでなく、このような点にも気をつけたほうが
いいかもしれません。

なお、ジャストシステムから一太郎2004 の校正機能を独立させた文章校
正支援ツールである、Just Right! という製品が2月末に発売されます。
ATOK 17、一太郎2004 と合わせて、バベルの「eとらんす」4月号(3月上
旬発売)で、詳しいレポートをお届けする予定です。

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■ 「山本ゆうじの翻訳道具箱」(その7)入力方式

生物の教科書などで、頭と手が発達した「ペンフィールドのホムンクル
ス」というものを一度はご覧になったことがあると思います。

http://images.google.com/images?q=Penfield+homunculus

これを見ると、脳の感覚野に占める顔と手の重要性がわかります。キー
ボード、IME、入力方式などの入力環境では、知的活動のインターフェー
スである手の役割が大きく、そのせいかユーザーの思い入れ、こだわり
が非常に強いようです。新しい方式にはなかなか慣れないのもそのため
でしょう。IME や入力方式についてどれが良いかは、Windows と Mac の
どちらが優れているかといったことと同じように、宗教的な論争になる
こともあるようです。

さまざまな入力方式の種類については、こちらのサイトも参考になります。

「かなを入力するためのキーボードレイアウト各種」
http://www.asahi-net.or.jp/~ez3k-msym/charsets/keymap.htm

◆入力方式

私は、初めてパソコンに触れてからこの20年間というもの、ずっとロー
マ字入力で入力していたのですが、指の負担を減らすために2003年3月ご
ろ、ふと思い立ってかな入力に切り替えました。3日ほどでそこそこ使え
るようになり、少しずつ練習を重ねて、今ではすっかり慣れてタッチタ
イプできるようになりました。ふだん目にしていながら使うことのなか
ったキーボードのかな印字を使いこなせるようになったのは、なかなか
新鮮な体験であり、またできるようになると結構達成感があるものです。
普段入力することの多い英文混在の文章では問題が出るかなとも思いま
したが、その心配もありませんでした。

ここで私が求めていたのは「速く入力する」ことではなく「楽に入力す
る」ことでした。そのとき、入力方式についてもちょっと調べてみて、
親指シフトも少し練習してみました。確かにキーボードを3段しか使わな
い親指シフトでは、キーボードを4段使うかな入力よりもタイプミスを減
らし速く入力できるかもしれません。ただし以前にご紹介した推測変換
を使用する場合は、状況が少々異なります。最初の数文字を入力しただ
けで入力候補が出るということは、入力に使うキーの数が多いほど、少
ない文字数で候補が絞り込まれるということです。そのため、最も合理
的な配列だとは思っていませんが、入力方式としては結局かな入力を選
びました。なお親指シフト入力ソフトのパッケージ製品である Japanist
2002/2003 にも入力予測機能があります。

推測変換機能と音声認識は、キーボード多用者の間では課題のひとつで
あった「速く打つ」という、キーボードに求められる条件のひとつを大
きく変えると思われます。
キーボードや入力デバイスで、今後はこのようなソフトウェアの進化を
考慮したデザインが出てきてもよいのではないでしょうか。

ATOK 17 については、後ほど取り上げる予定です。

この連載に関するご質問、ご感想、ご要望などがありましたら、
tran@nichigai.co.jp までどうぞ。

■ 「山本ゆうじの翻訳道具箱」(その6)ATOK と MS-IME

私は、IME としては MS-IME 2003 と ATOK16を使い分けています。精度
の点では差はそれほど感じませんが、主観的な印象としては、ATOKの方
が、一般的な候補がなかなか出てこないことがたまにあります。ただ使
い勝手の点では、一長一短で、状況によって使い分けるほうが便利です。

ATOK には、携帯電話のように最初の数文字を入力しただけで入力候補が
出る、推測変換機能があります。これは翻訳者には手放せない機能です。
多用する語句を短い読みで呼び出せるように IME に辞書登録している方
は多いと思います。ですが、推測変換では登録の必要なしに、IME に自
動的に学習させて、多用する語句を再度入力できます。何文字めで必要
な候補が出るかは、学習の状況により異なります。たとえば「インター
フェイス」という語は普通は8文字の入力が必要ですが、今の私の環境
では「インタ」と入力した時点で候補として出てきます。なお最新版の
ATOK17 では、類義語辞典のように、入力した語句に似た表現も候補と
して出る、連想変換機能というものがあるそうです。発売はまだ先です
が、翻訳者に役立つ機能かもしれません。

推測変換のための単体のソフトウェアとして、携帯電話で使われている
POBox の Windows 版もあります。
http://www.pitecan.com/OpenPOBox/Windows/
Windows 上では、推測変換は IME と統合されたときに利便性があるため、
これだけではやや使いにくいかもしれません。

またカタカナ英語辞書は、ちょっとした翻訳作業で結構便利なもので、
MS-IME にも ATOK にもあります。ただ ATOK では、カタカナから英語
には変換できるのですが、英語からカタカナに変換することはできませ
ん。MS-IME ではどちらでもできます。実際には英語からカタカナに変
換する場面のことのほうが圧倒的に多く、特に英日翻訳では、IME だけ
ですぐに変換できるのは非常に便利です。

MS-IME2003 では、特に Word 上での再変換と、音声認識との親和性に
利点があります(ちなみに Outlook の Word メール機能を使えば、メー
ルの作成時にも Word の機能を活用できます)。MS-IME 2002 から採用
された新しい入力方式であるナチュラル・インプットには、慣れないう
ちはてこずりましたが、いったん慣れると、語句を選択せずに任意の箇
所で右クリックするだけで再変換できるのがなかなか便利です。たとえ
ば、英語からカタカナへの変換と組み合わせると、「Ethernet」という
語の任意の箇所を1度右クリックして候補を選択するだけで「イーサネッ
ト」に変換できます(もちろん逆も可能)。また MS-IME と Word の組み
合わせでは、音声認識を使用している場合、音声認識のデータが文書内
に保存されます。このため音声認識の候補の選択を、IME の再変換と似
た感覚で、あとでまとめて行うことができます。ATOK と VoiceATOK の
組み合わせではこれはできず、確定した後でも候補を選び直せるように
するには、重たい ViaVoice の機能を使う必要があります。とはいえ、
前回でも説明したように、VoiceATOK はそもそも認識精度が Microsoft
音声認識よりやや優れているので、変換候補の一括修正ができないとし
ても、訂正の手間が少なくて済みます。まさに一長一短です。

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■ 「山本ゆうじの翻訳道具箱」(その6)ATOK と MS-IME

私は、IME としては MS-IME 2003 と ATOK16を使い分けています。精度
の点では差はそれほど感じませんが、主観的な印象としては、ATOKの方
が、一般的な候補がなかなか出てこないことがたまにあります。ただ使
い勝手の点では、一長一短で、状況によって使い分けるほうが便利です。

ATOK には、携帯電話のように最初の数文字を入力しただけで入力候補が
出る、推測変換機能があります。これは翻訳者には手放せない機能です。
多用する語句を短い読みで呼び出せるように IME に辞書登録している方
は多いと思います。ですが、推測変換では登録の必要なしに、IME に自
動的に学習させて、多用する語句を再度入力できます。何文字めで必要
な候補が出るかは、学習の状況により異なります。たとえば「インター
フェイス」という語は普通は8文字の入力が必要ですが、今の私の環境
では「インタ」と入力した時点で候補として出てきます。なお最新版の
ATOK17 では、類義語辞典のように、入力した語句に似た表現も候補と
して出る、連想変換機能というものがあるそうです。発売はまだ先です
が、翻訳者に役立つ機能かもしれません。

推測変換のための単体のソフトウェアとして、携帯電話で使われている
POBox の Windows 版もあります。
http://www.pitecan.com/OpenPOBox/Windows/
Windows 上では、推測変換は IME と統合されたときに利便性があるため、
これだけではやや使いにくいかもしれません。

またカタカナ英語辞書は、ちょっとした翻訳作業で結構便利なもので、
MS-IME にも ATOK にもあります。ただ ATOK では、カタカナから英語
には変換できるのですが、英語からカタカナに変換することはできませ
ん。MS-IME ではどちらでもできます。実際には英語からカタカナに変
換する場面のことのほうが圧倒的に多く、特に英日翻訳では、IME だけ
ですぐに変換できるのは非常に便利です。

MS-IME2003 では、特に Word 上での再変換と、音声認識との親和性に
利点があります(ちなみに Outlook の Word メール機能を使えば、メー
ルの作成時にも Word の機能を活用できます)。MS-IME 2002 から採用
された新しい入力方式であるナチュラル・インプットには、慣れないう
ちはてこずりましたが、いったん慣れると、語句を選択せずに任意の箇
所で右クリックするだけで再変換できるのがなかなか便利です。たとえ
ば、英語からカタカナへの変換と組み合わせると、「Ethernet」という
語の任意の箇所を1度右クリックして候補を選択するだけで「イーサネッ
ト」に変換できます(もちろん逆も可能)。また MS-IME と Word の組み
合わせでは、音声認識を使用している場合、音声認識のデータが文書内
に保存されます。このため音声認識の候補の選択を、IME の再変換と似
た感覚で、あとでまとめて行うことができます。ATOK と VoiceATOK の
組み合わせではこれはできず、確定した後でも候補を選び直せるように
するには、重たい ViaVoice の機能を使う必要があります。とはいえ、
前回でも説明したように、VoiceATOK はそもそも認識精度が Microsoft
音声認識よりやや優れているので、変換候補の一括修正ができないとし
ても、訂正の手間が少なくて済みます。まさに一長一短です。

この連載に関するご質問、ご感想、ご要望などがありましたら、
tran@nichigai.co.jp までどうぞ。

■ 「山本ゆうじの翻訳道具箱」(その5)音声認識を使う

音声認識について読者の方からご質問があったので、もう少し詳しくご
紹介します。

翻訳者が音声認識を使用する利点はいくつかあります。「自分で声に出
すことにより入力内容を確認でき、不自然な表現に気づきやすい」という
翻訳者にとっては大きな利点には前回も触れましたが、「慣れればキー
ボードよりも速く入力できる」という点は過小評価されているようです。
いったん慣れれば、キーボードからの入力よりもかなり早く、しかも楽
に入力することができます。認識を間違えた個所を訂正する必要もあり
ますが、その手間を差し引いても全体的に早く入力することができます。
翻訳支援ツールなどを使わない場合でも、音声認識さえ完全にマスター
できれば、翻訳や文章入力の効率を大幅に向上できるでしょう。

音声認識ソフトを試されて「使えないな」とあきらめた方は結構いるよ
うです。音声認識では、手で入力するときとは脳の使い方がかなり違い
ます。キーボードから入力する場合は、「(入力内容を)考える」と
「入力する」という2つの行為がほぼ同時に、あるいは語句の比較的短い
単位で交互に行われているようです。入力の途中でいつでも手を休めて
考えることができます。しかし、最近の音声認識は連続して発声するこ
とで認識率を上げるようになっているので、細切れではなく、なるべく
まとめて長めの節を発声した方がよいのです。「入力する内容を考える」
と「発声する」という手順の繰り返しのリズムが、キーボードの場合と
は少々異なるわけです。発声するときは発声自体に集中しないと、言い
よどんでうまく入力することができません。ここらへんのコツがつかめ
れば大変便利な道具です。

音声認識エンジンは、Office XP/2003 に付属の Microsoft のものを、
MS-IME 2003 経由で主に使っています。以前の Microsoft 音声認識は
Office からのみ使用できたのですが、Windows XP SP1 から、どのアプ
リケーションからでも音声入力ができるようになりました。音声認識ソ
フトとしては、IBM の ViaVoice Pro 10 も使っています。新宿の某量
販店でお姉さんが ViaVoice のデモをしていたころは、そんなにうまく
入力できるものかと半信半疑でしたが、慣れれば便利なものです。Via
Voice は、全体的に Microsoft 音声認識よりも高機能で、認識精度も
やや優れており、アプリケーションを音声で操作することもできます。
ただし ViaVoice は、動作が重いのと多数のアプリケーションを立ち上
げたときに不安定なので、最近はあまり使っていません。なお、ATOK
に付属する Voice ATOK を使用すれば、ATOK 経由で ViaVoice の音声
認識エンジンを使用できます。この場合は、Microsoft 音声認識よりも
認識精度は良いのですが、OS と Office に緊密に統合されているMS-IME
と比べると、微妙な使い勝手に不満があります。

読み上げエンジンは、ViaVoice のものを Word の自作マクロから操作
しています。Voice ATOK 経由で読み上げさせることもできます。Via
Voice の読み上げエンジンは、Microsoft 標準のものよりは読み上げ方
がやや自然なようです。

マイクの種類にも手持ち型や据え置き型などいろいろありますが、認識
率と使い勝手の点からいえばヘッドセット型が一番良いようです。
Logitech や Plantronics のものが手ごろです。マイク本来の性能や、
ノイズ・キャンセリング機能も重要ですが、特にマイクの向きと位置、
音量などの調節が適切でないと認識率が大きく下がります。

今はまだ使いにくい点も残っていますが、音声認識は近い将来に必ず普
及するはずです。Office XP 以降をお持ちの方は音声認識をすぐに試す
ことができますので、ぜひ挑戦してみてください(音声機能を使うには、
[ツール]メニューの[音声]をクリックします。音声認識がインストール
されていない場合は、[プログラムの追加と削除]から Office のセット
アップを再実行して[Office 共有機能]、[入力システムの拡張]、[音声]
を有効にします)。

この連載に関するご質問、ご感想、ご要望などがありましたら、
tran@nichigai.co.jp までお気軽にどうぞ。
■ 「山本ゆうじの翻訳道具箱」(その4)入力環境2

今回は入力環境の続きです。

◆よいキーボードを選ぶ

キーボードは長時間使うものですので、良いものを選びたいものです。
好みもあるでしょうが、キータッチが重いものは疲れやすくなると思い
ます。店頭で少し触った程度では違いがすぐにわからないかもしれません。
しかし、数年間は毎日のように使うことを考えれば、負担の軽いものが
よいように思います。東プレ〈http://www.topre.co.jp/〉の RealForce
シリーズは、高価なキーボードですが、静電容量という独特の方式で
タッチが軽いため、一部の方に人気が高いようです。また横幅がコン
パクトなキーボードは、マウスなどをより手元に近づけて自然な姿勢で
操作できるため、負担が減ります。

◆複数の入力デバイスを使い分ける

最近、IBM の USB キーボード(ウルトラナビ付き)を購入しました。
ノートパソコンのキーボードをベースにしたもので、スティック型のト
ラックポイントとタッチパッドの2つのポインティングデバイスを備えて
います。RealForce もずっと気になっていたのですが、タッチパッドの
魅力にこちらを選びました。キーボードを主として操作する場合、マウ
スに手を伸ばす必要がなく、そのままの姿勢でポインタを移動できます。
タッチパッドは ThumbSense
http://www.csl.sony.co.jp/person/rekimoto/tsense/soft/indexj.html
というホットキー機能を持たせるソフトを使用することで、さらに便利
に使用できます。ひとつの入力デバイスだけを使い続けていると、指や
腕などの特定の個所に負担が集中してしまいますが、複数の入力デバイ
スを時々使い分けることで、負担を分散することができます。操作の選
択肢を増やすという意味ではユニークなキーボードですが、人によって
は慣れるまで時間がかかるかもしれません。

◆タブレットを使う

タブレットは、CAD や、絵を描くためだけのものではありません。一字
単位で細かく語句を選択して順番を入れ替えたり、編集したりする翻訳
作業でも非常に便利です。慣れればマウスやトラックボールより細かい
選択がしやすく、また語句を選択する時やドラッグ&ドロップする時に、
すばやく自然にポインタを動かすことができます。キーボードから文字
を入力する場合にはペンをそのつど置いたり持ったりするのは手間なの
で、ペンを親指と人さし指の間にはさんだままキーボードから入力する
ことになります。右手の親指が使えないだけですので、慣れればそう難
しいことではありません。音声認識と併用すればキーボードに触る回数
が減り、ペンを持ったままでもどんどん入力できるのでさらに実用的です。

◆左手入力デバイスを活用する

「ショートカットキーなら全部覚えている」という方には、左手入力デ
バイスをお勧めします。翻訳での置換作業や、TRADOS での作業などでは、
場合によって単純な繰り返し作業が続くこともあります。ショートカッ
トキーを覚えるのはもちろんですが、カスタマイズ可能な「専用キー」
を備えた左手入力デバイスを使用すれば、2つ、3つのキーの組み合わせ
を両手の指をいっぱいに伸ばして押す代わりに、キー1つで特定の機能を
呼び出すことができ、作業が大変楽になります。さらに高度な使い方と
して、複数の機能を連携させる自作スクリプトを呼び出すのにも使えます。
たとえば TRADOS で「分節を開いて、原文をコピーして、分節を閉じる」
という一連の作業では、合計2つのキーの組み合わせを3回押す、つまり
6つのキーストロークの必要があります。マクロやスクリプトを作成し
て、左手入力デバイスで呼び出せば、この作業がキー1つでできるように
なります。左手入力デバイスには
Belkin〈http://www.belkin.com/〉の Nostromo n50/n52 SpeedPad、マ
イクロソフトの SideWinder Strategic Commander、ワコムのスマートス
クロールなどがあります。Nostromo と Strategic Commander は、本来は
ゲーム用なのですが、仕事の道具としても優秀です。左手入力デバイス
を活用することで、パソコンを「翻訳専用機」として使うことができます。
ただこれらを上手に使いこなすには時間が必要です。どのキーをどのよう
に設定するか、じっくり腰をすえて試行錯誤し、使いやすい環境にして
いく必要があるようです。

◆音声認識を活用する

マイクのついたヘッドセットも入力環境のひとつです。ヘッドセットに
は安いものもありますが、種類によって性能がずいぶん違うようです。
あんまり安物のマイクだと音声認識ソフトの本来の性能が発揮できない
かもしれません。音声認識は、周囲の騒音がある会社で働かれている方
はともかく、自宅で作業する方には現実的な手段です。これも慣れるに
はやや時間がかかりますが、入力時に声に出すことで、不自然な表現に
気づきやすいというメリットもあります。音声の利用に関しては「読み
上げ機能」も利用価値があります。自分で音読して訳文をチェックする
のもいいのですが、パソコンに読み上げさせれば、より客観的にチェッ
クできます。このコラムの「執筆」にも音声入力を併用しており、また
入力後はパソコンに読み上げさせてチェックしています。

この連載に関するご質問、ご意見、ご要望などがありましたら、
tran@nichigai.co.jp までお送りください。
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