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 ■「山本ゆうじの翻訳道具箱」(その62・最終回)
                 英語力向上に大切なのは「やる気」と「気合い」だ!

忘年会やパーティーの季節ですね。英語が話せる人たちのパーティーに
時々参加しますが、英語ネイティブと日本人の間には、しばしば見えな
い壁があります。またCNN、NPR、BBCなどの英語ニュースで、非英語ネ
イティブ話者へのインタビューを聞いていて思うことがあります(ちな
みに日本人はほとんど出ません)。発音に癖はあるものの、語彙力や表
現力は、「英語ができる日本人」よりは数段上だなあ、ということです。

英語を学ぶ上で一番大切なものは、なんでしょうか。それは「やる気」
です。先日、英語教育の大先輩にご意見を伺ったところ、同じ答えが得
られたので、確信が深まりました。最終回の今回は、「やる気」、そし
て「気合い」について考えます。

どのような学習・教育でも、主体になるのは常に、「教える」側ではな
く、「学ぶ側」です。努力したい気持ちは、自分の内側からわき上がる
ものでなければなりません。外から努力を強制されるのであれば、その
外圧がなくなったとたんに進歩は止まります。

私が日本の中学・高校で見たのは、生徒を押さえつけ、やる気をつぶす
教育です。英語を含め、「学びの喜び」が教室ですっかりはぎ取られ、
大学に入学するころにはぼろぼろになっている、ということです。学ぶ
本人に原動力がなければ、学びは苦痛でしかありません。英語の楽しさ
を伝えるのが、教師の使命のはずです。英語教員自身が英語の楽しさを
知っていれば、日本人の英語力がここまで低迷することはなかったはず
です。生徒のやる気、自ら学ぼうとする意欲を引き出せれば、教員の仕
事は楽になるはずです。もっとも、英語教育を停滞させている根本的な
原因は、大学入試の仕組みです。大学入試が根本から見直されない限り、
日本人は英語が苦手なままでしょう。

それはともかく、今英語を学んでいる人には、英語学習を生活に取り込
み、「習慣化する」ことが大切です。私の場合は、英語の映画や海外ド
ラマは必ず英語で聞くこと、毎日、食事や移動中にポッドキャストを聞
くことが習慣になっています。習慣、ということは意識して努力しなく
ても自然に続けられる、ということです。問題は、習慣化するまでやる
気を維持できるか、ということになります。

外国語の学習は、永遠の片思いです。決して満たされることはありませ
んが、どうすればやる気をつぶさずに、長続きさせられるでしょうか。

まず具体的で明確な目標を設定することが、やる気を維持するには大事
です。TOEICや英検でもいいでしょう。Versant
 http://www.versant.jp/test_content.html#03
という、日本人が苦手な、スピーキングを主体とした試験もあります。
発音の正確さや反応速度が評価されます。英会話に自信のある人には特
にお勧めです。同時通訳の需要から分かるように、人間はどうもせっか
ちなようで、ゆっくりした会話は耐えがたいようです。会話の内容はも
ちろんですが、反応速度が遅いと取り残され、実際の会話についてゆけ
ません。反応速度は、パーティーなどでの英会話で「トルネード英会話」
 http://tran.blog.shinobi.jp/Entry/464/
を実践するには必須です。

ただ、パーティーで外国人に話しかけるには、やる気に加えてある種の
思い切り、「気合い」が必要でしょう。これは、リスニングよりも、単
語や文法の暗記などよりも、2000倍くらい重要です。逆に、この「気合
い」がないと永遠に語学は進歩しないと断言できます。「遠慮」をして
せっかくのチャンスを逃している人を見ると、「もったいないな」と思
うと同時に、「かわいそうだけどこの人はこれ以上、上達しないな」と
思うのです。私自身も昔はそれほどパーティー好きでもありませんでし
たが、今ではリラックスして楽しむ余裕ができました。それは、意志が
通じたコミュニケーションの小さな喜びが積み重なって、次のやる気に
つながっているからでしょう。未知の価値観に対する好奇心はだれしも
持っているはずです。パーティーで英語を話せそうな外国人がいれば、
ちょっとだけ勇気を出して話しかけてみてください。彼らもきっと話し
相手を求めています。

次に、英語で楽しいこと、夢中になれることを常に見つけるようにしま
しょう。それさえできれば、やる気は続きます。好きな映画、海外ドラ
マ、歌手、小説、自分の専門分野など、探せばいくらでもあります。
NHKの語学番組が美男美女を起用するのは、正しいやり方です。

また、自分のレベルと違いすぎる内容ばかりをむりやり詰め込むのはよ
くありません。とはいえ、楽に読め、聞きとれる内容ばかりでも上達し
ないでしょう。楽にこなせる内容と、少し高度な内容の両方をバランス
よく吸収することが大切です。

まだご紹介したいことはたくさんあるのですが、2003年10月24日から62
回、6年にわたって書かせて頂いたこのコラムも今回が最後です。他の
連載陣の皆さまのコラムのバックナンバーも以下から読めます。この機
会にチェックされてはいかがでしょうか。
 http://www.tranradar.net/column/index.html

長い間、ご愛読ありがとうございました。またどこかでお目にかかりま
しょう。良い年をお迎えください!
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 ■「山本ゆうじの翻訳道具箱」(その61)

英語で「日本」を説明する――「さっぱりした」は英語でなんていうの?

この11月に美術検定2級を受けてきました。検定では古今東西の美術の
知識が問われるのですが、ご存じのように日本から西洋への浮世絵、
ジャポニスムの紹介、そして逆に日本への西洋美術の受容という相互の
異文化交流は、非常に興味深いものがあります。また美術史を学んでい
ると、ばらばらであやふやだった知識の断片が、パズルのようにぴった
りはまりこんでゆくのが快感です。

ところが、英語で「日本」について説明するのは重要なことなのですが、
なかなか簡単ではありません。みなさんの中には、プライベートや仕事
で、外国人を案内する方や通訳をされる方もおられるでしょう。私も先
日、下北沢でドイツとフランスの友人をそれぞれ案内してきました。そ
んなとき、英語で日本の文化を説明できますか? ちょうど祭りが行わ
れていたのですが、「いき」「わび」「さび」とはなにか、それぞれ説
明できますか? 「さっぱりした」「すっきりした」は英語でなんと言
うでしょう。落語、浄瑠璃とはなんでしょうか? このような日本につ
いての事柄をきちんと自分の言葉で(英語で)説明できれば、自分自身
の知識も整理できます。日本は大きく変化してきましたし、これからも
変化するでしょうから「唯一絶対の日本的なもの」があるわけではない
ですし、そのような主張は不毛でしょう。ただ、異なる価値観を持つ人
に、新たな視点を紹介して少しでも理解してもらえれば、紹介するほう
もされたほうもうれしいものです。

NHKでは、”BEGIN Japanology”(総合テレビ)など英語で「日本」を
説明するコーナーがいろいろあります。
http://www.nhk.or.jp/nhkworld/english/tv/japanology/
全部英語なので気圧されるかもしれませんが、だまされたと思って観て
ください。今までにない見方を知ることができます。この番組は日本に
興味がある外国の人が見るだけでなく、日本人が日本を紹介するときも
役立ちます。もちろん英語の練習にも役立ちます。

NHK Worldの英語ニュースなども役立ちます。
http://www.nhk.or.jp/nhkworld/

内容は身近な日本の話題なので、やはり英語の聞き取り練習としても役
立ちます。NHKの英語ニュースはiTunesなどからポッドキャストとして
も視聴できます。以下の記事を参考にして、キーワード「NHK」で検索す
るとすぐに見つかります。すてきな声の日本人アナウンサーさんが英語
で読んでくれるので、親しみがわきます。
http://www.tsuhon.jp/levelup/levelup_29.html

NHKはずいぶんくだけてきましたが、海外のメディアと比べると良くも
悪くもまじめなようです。ユーモアなどを取り入れると、世界の人の日
本人に対する見方が変わってくるかもしれませんね。

さて、何かを紹介・説明するには「定義」が重要です。英語圏の教育で
は、定義はあらゆる学問の根本です。論述問題でも「~は何か説明しな
さい」というパターンがよくあります。事典や辞書でも、各項目につい
て過不足のない定義から始まり、その後に補足的な説明が続きます。残
念ながら、日本人はこの「定義」が苦手なことが多いようです。

ご存じWikipediaもまた、日本の事柄を英語で説明する際の参考になり
ます。日本語のページの左側から、英語など他の言語の記事を参照でき
ます。ただし、言語にかかわらず、Wikipediaにはまったくのでたらめ
がもっともらしく書かれていることがよくあるので、注意が必要です。
特に日本については、書き込む人が限定されており、偏った見方しか紹
介されていないこともあります。そんなときは、さまざまな視点を紹介
するために、率先して英語で書き込みをすると、英作文の練習にもなり
ます。だれかに何かを説明するというのは、自分がより良く理解するた
めの最良の手段です。

美術、建築、文学、映画などの文化を理解し、また他人に説明するとき
は、宗教の基礎知識が必要です。宗教について知るために信者になる必
要はありませんが、日本でも仏教、神道は美術や建築と深くかかわって
います。たとえば「密教」を英語で何というでしょうか?
またキリスト教の基礎知識があれば、比較対象として説明することがで
きます。このような知識は一夕一朝に身につくものではありませんので、
ふだんから関心を持つ必要があるかもしれません。冠婚葬祭、観光での
神社・寺院・教会の訪問など、ふだんは縁がなくても宗教について考え
る機会は意外とあるものです。特にこれから年末にかけてクリスマス、
除夜の鐘、初詣という、日本ではおなじみ(そして外国人には謎の)
3宗教(的)行事の季節です。英語でどう説明するか、ぜひ考えてみて
ください。
 ■「山本ゆうじの翻訳道具箱」(その60)
  
知識の宝が眠る場所――図書館を制す者は知識を制す

最近、Amazonの電子書籍リーダーKindleが日本でも使えるようになりま
した。現在は英語の書籍のみとはいえ、これで電子書籍の普及が刺激さ
れるかもしれません。しかし電子書籍が普及しても、情報収集の手段と
して図書館は重要です。私も、この11月に美術検定2級を受けるために、
古今東西の美術史の本をいろいろ借りて勉強しています。今回は図書館
の活用について考えてみます。

ITなど、変化のペースが速い分野の翻訳はともかくとして、体系的な読
書をして、専門知識の基礎を固め、あるいは専門知識をさらに深めるた
めに図書館は重要です。図書館を使うことで、「積ん読」を防ぐことも
できます。返却期限があるわけですから、「期限までには、がんばって
何とか読み終えよう」という気持ちが生まれます。もっとも著者や翻訳
者の立場からすると、自分がかかわった本は買ってほしくはあるのです
が……(それで思い出しましたが、私が翻訳に参加しているフランスの
マンガ雑誌『ユーロマンガ』第3巻は10月14日発売です)。
http://tinyurl.com/euromanga-all

さて、返却期限、貸し出しの冊数、閉館時間、休館日など、自分が使う
図書館のスペックについて把握しておくのは基本です。また市立の図書
館は、他の市や大学などと相互貸し出しを行っていることがあります。
さらに、たいていの図書館では、インターネットから検索と予約ができ
るはずです。書庫の間をさまようのは楽しくはありますが、それだけで
は見つけられない本があります。「読みたい本のリスト」をうまく管理
するとよいでしょう。図書館に行く前に、どの本を借りるかを把握して
おくわけです。私はPDAで「本のリスト」を管理していますが、手帳な
どでもかまいません。

「図書館に行くのが面倒」という方もいるでしょう。しかし借りた本は
返すわけですから、「返したときにまた借りる」という循環ができれば、
面倒ではありません。ここでも「読みたい本のリスト」が重要になりま
す。また、インターネットで予約しておけば、その本を取りに行くだけ
です。

中には「本に書きこみをしたいので借りるのはいやだ」という人もいる
かもしれません。ただ私の経験からは、本に直接書きこむのはほとんど
意味がありません。どこに何を書いたかということを、あとで探すこと
が難しいからです。別に読書ノートをつけることをお勧めします。でき
ればパソコンで記録しておけば、古い記録でも検索できます。私は読書
ノートをOneNoteなどのメモ取りソフトを活用して整理しています。ざ
っと調べてみましたが、私の場合は1998年、つまり11年前の読書の記録
が残っています。この時点の記録に対して全文検索はできますが、まっ
たく未整理なので、すぐに活用するのは少し難しそうです。2000年以降
のデータについては、読んだ本ごとにまとめられ、ある程度整理されて
いるので、活用しやすくなっています。一時期、「読書データベース」
を構築しようとした時期がありましたが、止めてしまいました。ひとま
ず題と著者さえ正確に記録しておけば、本についてのその他の情報は、
必要に応じて調べられるからです。重要なのは、むしろその本について
の読書ノートそのもの、つまり得られた知識や感想のほうです。

読書ノートに限らず、あらゆるメモについていえることですが、断片的
な語句だけでなく、なるべく文として完成させたほうがよいようです。
断片的な語句だけでは、あとで読み返しても意味不明になることがあり
ます。それでは、そもそもノートをつけた意味がありません。また「特
定分野(たとえば美術史)について読書を通して学ぶ」という主体的な
目的意識をはっきりさせれば、まとまりのあるノートになり、価値が高
まります。読書体験に明確な方向性が生まれると、一冊一冊の読み込み
も深くなり、より充実した読書ができるわけです。

さらに図書館では視聴覚資料も活用できます。古い名作の映画などは、
一通りそろっているはずです。また質や量はいまひとつかもしれません
が、図書館によっては外国語の資料が使えることもあります。近くの図
書館に、どんな資料があるのか一度確認してみてはどうでしょうか。も
しかすると意外な掘り出し物があるかもしれません。

 ■「山本ゆうじの翻訳道具箱」(その59)               山本 ゆうじ

 映画や海外ドラマで英語を学ぼう2――DVD、Blu-ray、そしてダンベル

 しばらく前に、日本の中学校の英語教育を参観させていただきました。
 映像教材は使っていたものの、40人以上もの生徒に教えるには、一方的
 で機械的な詰め込み教育しかできません。ベルトコンベヤーでロボット
 を作っているようなものでした。これで英語の力がついたら「奇跡」で
 す。お金を掛けなくても、もっと方法を工夫することにより日本の英語
 教育は変えることができるのに、もったいない話しです。日本での暗記
 型英語学習では、多聴多読どころか、原文に直接触れる機会がそもそも
 異常に少ないようです。大人になったら手遅れというわけではありませ
 んが、中学校で多聴多読ができる時期にそれをしなくてどうするのでし
 ょうか?

 私は最近、27インチのパソコン用モニターを購入したので、ようやく高
 精細なフルハイビジョンを楽しめるようになりました。映画や海外ドラ
 マで英語を学ぶという試みはいろいろと行われています。ソースネクス
 トでは、映画を英語教材化した製品を出しています。これはこれでいい
 と思いますが、前回のコラムでご紹介したように、2か国語放送を録画
 すれば、無料ですぐに勉強できます。とはいえ、自分が見たい映画があ
 ればDVDやビデオをレンタルすることになるでしょう。Blu-rayも少しず
 つではありますが広まりつつあるようです。『落下の王国―The Fall―』
 はBlu-rayで見て欲しいとターセム監督自身も言っていました。
 http://www.imdb.com/title/tt0460791/

 映画や海外ドラマの情報収集に欠かせないサイトが、このIMDb.comです。
 http://www.imdb.com

 ここには、映画に関してユーザーから寄せられたあらゆる情報が集まっ
 ています。特にTrivia、Goofsのコーナーなどのこぼれ話やツッコミは
 必見です。Memorable quotesでは、名文句や決め台詞を確認できます。
 日本の映画に対する海外ユーザーのコメントを読めば、海外の見方を知
 ることもできます。誤解や過大評価をしていることもある一方で、鋭い
 分析をしている人もいます。映画批評は、学校での日本語や英語の作文
 の勉強にも役立つはずです。ユーザーの投票によるランキングもありま
 す。
 どの作品を見るか迷ったらこのランキングを参考にしてみるのもよいで
 しょう。私は映画を見たときに、かなりの確率でIMDbでのランキングを
 予想できるようになりました。

 英語版Wikipediaで映画のタイトルを検索しても、かなりの情報が見つ
 かります。Wikipediaには、例によって、主観的な感想、単なる噂やで
 っち上げも多数入っているので、注意する必要がありますが。

 DVDなどを見るときは、聞き取れない単語、知らない単語があれば一時
 停止して、メモを取るのもいいでしょう。パソコン上のDVD再生ソフト
 などでは、一時停止、巻き戻し、字幕や音声の切り替えなどは、キーボ
 ードでも操作できます。再生ソフトのヘルプで「キーボード」を検索す
 ると見つかるはずです。操作がずっと楽になります。

 ただし、知らない単語が多すぎるとメモ取りは負担になるので、すでに
「内容がほとんど聞き取れる」人だけにお勧めします。あまり細かい点
 にこだわりすぎると長続きしません。耳が慣れていない人は、まずは
「聞き取れなくても気にしない」ことを優先すべきです。

 また、メモは取らずに、DVDを見ながら、ダンベルや握力を鍛えるハン
 ドグリップなどで軽い運動をするのもいいでしょう。言語は、じっと座
 ったままよりも、体を動かしながら覚えるのが効果的です。身体的運動
 や五感と結びついた記憶は、定着しやすいものです。デスクワークが続
 いているようなら、運動不足の解消にもなります。また画面を注視しな
 くても、リラックスして英語を聞き取れるようになれればTOEICのリス
 ニングも怖くなくなります。運動しながら字幕を追うのは困難ですので、
 がんばって耳で聞き取るしかなくなります。アクション シーンの多い
 映画や海外ドラマではアドレナリンが出て、運動意欲も高まるはずです。

 ■「山本ゆうじの翻訳道具箱」(その58)       山本 ゆうじ

映画とドラマで英語を学ぼう1――ワンセグで2カ国語放送を録画する

皆さんは「ワンセグ」を見ていますか?  ワンセグは、携帯機器向け
のデジタル放送の一種です。「簡易型のデジタル テレビ」であるワン
セグは、最近の携帯電話や携帯音楽プレーヤー、電子辞書などに搭載さ
れることが多くなってきています。私はPDA(EM・ONE)、ウォークマン
(NW-A919)、携帯電話(W61S)の3つの機器を持ち歩いているのですが、
どれにもワンセグ機能が搭載されています。ただ、この中でワンセグ機
器として意識的に買ったのはウォークマンだけです。

ワンセグは携帯機器用の放送なので、解像度は最大でQVGA(320×240/180
ドット)しかなく、画質はそれほどよくありません。実際に視聴するた
めの機器も2~4インチ程度の 小さな画面のものが大半です。

さて、そんなワンセグがどのように役立つのでしょうか。実はワンセグ
は語学学習に活用できます。ワンセグでも2カ国語放送が行われており、
海外の映画やドラマは英語などに切り替えて聴くことができます。しか
もDVDのように、日本語字幕の表示や音声の切り替えができます(番組
や機器によって、できる場合とできない場合があります)。これは、ア
ナログ テレビにはない利点です。

私は、英語圏の映画やドラマは基本的にすべて英語で見ています。2カ
国語放送の番組をワンセグで録画すると、「ここは何て訳したんだろう」
と思ったときに日本語の吹き替えや字幕を確認できます。2カ国語放送が
ぐっと活用しやすくなったわけです。

テレビ機能付きのパソコンでテレビ番組を録画しておいて、携帯機器で
も見られるように変換する、という作業は一部の人の間では以前から行
われていました。私にはそうまでして見たい番組がなかったので、して
いませんでした。しかもパソコンで録画して変換した場合は、「再生時
に2カ国語放送で音声を切り替える」ことにもかなり手間が掛かりまし
た。しかし、携帯機器そのもので録画が直接気軽にできるようになった
ことで、「時間があれば見ておこう」という番組もチェックできるよう
になったわけです。

また、ワンセグではNHKの語学番組も活用できます。
http://www.nhk.or.jp/gogaku/

ワンセグの課題のひとつは、電車などで移動中だと、電波の状況により
しばしば受信できなくなることです。このようなときは、事前に録画し
ておけばよいのです。NHKの語学番組では、早朝に再放送がされていま
す。

語学学習のように目的を定めて使う場合は、「録画して視聴する」とい
う方法が主になるでしょう。ワンセグ機器を選ぶ場合には、録画機能が
あるもの、特に語学番組を見る場合は「毎週繰り返し録画できる」機能
があるものをお勧めします。携帯電話では、機種にもよりますが、繰り
返し録画できるよう設定するには工夫する必要があるかもしれません。
通勤列車での細切れの時間を有効に活用できるのは非常に便利です。テ
レビでじっくり語学番組を見る時間はないという忙しい方でも、新しい
外国語の習得などに挑戦できるわけです。私は、まったくの趣味ですが、
ロシア語、中国語、アラビア語、イタリア語の各講座の録画を電車の中
で見ています。

語学番組では、画面の例文などの文字が小さくて見にくい場合もありま
す。これは画面が小さいことに加え、ワンセグの解像度が低いからです。
そのため、メインの教材とするよりも、多聴多読の一環として、「ワン
セグでも見られる」という感じで使うのがよいでしょう。特に語学番組
で中級・上級者向けの場合、例文が長くなり、文字も小さくなりますが、
初級者向けで単語が主体なら問題ありません。ただ漫然と見るのではな
く、発音練習、シャドウイング、サイレント シャドウイングをするの
がよいでしょう。これらについては、また機会があればご紹介します。

ワンセグについては、放送大学の放送がないのは残念です。ワンセグは、
生涯学習を浸透させるためにはきわめて有効と思われるので、今後に期
待したいところです。

 ■「山本ゆうじの翻訳道具箱」(その57)       山本 ゆうじ

 うろ覚えの単語を確認する――barackとbarrackの違いは?

 たまにCDからパソコンに音楽を取り込むのですが、ソフトがインターネ
 ット上の曲名のデータベースを参照して自動的に曲名を取り込みます。
 そのときに腹が立つのは、曲名やアーティスト名の英数字が全角になっ
 ていることです。全角英数字というのは幅が広くて余分に字数を消費し、
 見た目が悪いばかりでなく、スペルチェッカーでチェックできないやっ
 かいものです。また全角の数字は数値データとして認識されないので、
 情報としての価値が下がります。電子文書やデータベースからは、全角
 英数字は追放したいものです。

 さて、英語ニュースのポッドキャストなどを聞いていて、初めて聞く言
 葉に出くわすことがあります。スペルが推測できることもありますが、
 いつも正確とは限りません。スペルがうろ覚えの単語を、パソコンの辞
 書で引くにはどうしたらいいでしょうか。いくつかのスペルを試して繰
 り返し検索するのもいいのですが、もっとすばやく調べる方法がありま
 す。

 第1の方法は、Wordでスペルチェックしてみることです。一般的な言葉
 ならこれで十分です。

 第2の方法として、とくに専門的な語は、うろ覚えのスペルのまま、
 Googleでとりあえず検索してみるのがいいでしょう。Googleには、一種
 のスペルチェック機能があります。以下の例でスペルのどこがおかしい
 かよく分からない方は、この文章をコピーしてWordなどに貼り付けてみ
 るとすぐに分かるはずです。

 たとえば"assosiates"というスペルで検索すると「もしかして: associates
 上位 2 件の検索結果」と表示されます。

 しかし、たとえばvocaburaly と検索してもvocaburaly という誤ったス
 ペルのままで結果が表示されます。vocaburaly の検索結果は約 1,800
 件ですが、これはほぼすべて間違いでしょう。もしかしたらvocaburaly
 という固有名詞のバンド名などが存在するのかもしれませんが……。と
 もあれ、この場合は"test"など、元の文脈に出てきた他の言葉をキーワ
 ードに含めて検索するとよいようです。vocaburaly test で検索すると
「もしかして: vocabulary test」と表示されます。

 翻訳でもビジネス文書でも、人名、企業名、地名などの固有名詞は、し
 っかり確認する必要があります。たとえば、オバマ大統領の姓の「バラ
 ク」のスペルを確認するためにbarrackという語で検索したとします。
 しかしbarrackという語自体は正しいスペルですから、「Barack Obama
 の誤りとしてのbarrack」は検索結果の上位には出てきません。しかし
 barrack obamaで検索すると「もしかして: barack obama」と表示され
 ます。

 ここでも注意が必要です。表示された結果をそのまま鵜呑みにしてはい
 けません。ここではあくまで正しいスペルの「候補」を調べただけです。
 実際にこのスペルで辞書を引いて、目的の語か確認してください。事実、
 検索結果には「Barrack Hussein-Obamaさん(Chicago, IL)はFacebookを
 利用しています。」とも出ています。スペルチェッカーを使わない方は
 多いようですが、このような詐欺に引っかからないように祈るばかりで
 す。

 また海外ドラマ『CSI:科学捜査班』を見ていて聞こえた、「ケタミン」
 という薬品の英語のスペルを確認したいとします。まず音から"ketamin"
 というスペルを推測します。Wordのスペルチェッカーで"ketamin"の修
 正候補として出てくるのはkeratin、detain、retain、certainなどで、
 このような薬品の名前までは出てきません。次の手段としてGoogleでひ
 とまず"ketamin"で検索すると、Wikipediaでketamineの項がありました。
 かなり充実した項ですので、一定の信頼性はありますが、念のためにパ
 ソコンの辞書でも確認したほうがいいでしょう。このようにGoogleの
 「もしかして」が出てこなくても、ひとまずネット検索することでスペ
 ルの候補が分かります。

 これはあくまで例ですので、「ケタミン」の場合はカタカナのまま辞書
 で調べても出てきます。ただ、実際にはそううまくいかないこともけっ
 こうあるものです。

 ご質問、ご感想、ご要望、ご意見などがありましたら、
 tran@nichigai.co.jpまでどうぞ!

《このコラムは、音声認識ソフトで入力し、音声読み上げにより校正しています》

 ■「山本ゆうじの翻訳道具箱」(その56)字数制限で日本語力を磨く!

                           山本 ゆうじ

 最近、某外資系IT大企業の方の講演を拝聴して、「日本語が軽く見られ
 ているのだなあ」と改めて感じました。日本語の品質は、日本語の文章、
 日本語への翻訳、日本語からの翻訳のすべてに関係します。私が提唱し
 ている実務日本語も、日本語の品質を維持し、文章や翻訳を改善するこ
 とを目的としています。
 http://transpc.cosmoshouse.com/jitsumu/

 日本語力を磨く方法の一つは、限られた字数で文章を推敲することで
 す。字数制限は、さまざまな場面で応用できます。昔から、俳句、川柳、
 和歌などは、みな字数制限があります。要約して翻訳する「抄訳」も、
 字数制限が関係しています。字幕翻訳や吹き替え翻訳でも、厳しい字数
 制限があります。ソフトウェアの翻訳でも、文字を画面に収めるために
 字数制限があります。電子文書では、紙媒体ほど厳しい字数制限はあり
 ませんが、このコラムにも字数の目安はあります。

 なぜ字数制限をすることで日本語力を磨くことができるのでしょうか。
 文章を限られた字数に収めるためには、言葉を注意深く選ぶ必要があり
 ます。また冗長な表現や、余分な要素をそぎ落とす必要があります。字
 数制限があれば、回りくどい書き方をせずに、直截的に、簡潔に書かな
 くてはいけないため、文書が引き締まります。

 字数制限に似た考え方として、「要約」があります。要約力は、文章技
 能の中でも非常に重要なものです。文章を読むときに使われる要約力は、
 理解力に反映されます。逆に書くときに使われる要約力は、頭の中の考
 えをまとめて文章にするときに使われます。まとまりがない文章を読む
 のは辛いものです。字数制限とは、「要約の具体的な目標」ととらえる
 こともできます。

 ときおり「ぜい肉のついた」文章や翻訳を目にします。このような「メ
 タボ文」では、クリシェ(陳腐な表現)がまき散らされ、冗長かつ回り
 くどい書き方がされている一方で、読み手が知りたいことにはなかなか
 たどりつけません。国税電子申告・納税システムのウェブサイトなどは、
 読み手を無視した悪文の宝庫であり、反面教師となる貴重な存在です。
 このサイトは、構成全体がまずいので字数がやたらに増えているようで
 もあります。簡潔に書く訓練ができていないと、このような結果になり
 ます。
 http://www.e-tax.nta.go.jp/

 たとえば、以下のようなメタボ文があります。

 「e-Taxソフトを利用する際には、常にe-Taxソフトが最新状態となるよ
 う、必ずe-Taxソフト更新履歴及びe-Taxソフトのバージョンアップ確認
 を行ってください。」(66文字)

 実務日本語の原則に従って簡潔に書き換えると、半分程度にできます。

「常に最新状態となるよう、必ず更新履歴とバージョン アップを確認し
 てください。」(37文字)

 そもそも必ず行うべきものなら、ソフトが自動的にすればよいようなも
 のですが……。

 さて、字数制限で日本語力を磨くには、具体的にどのような方法がある
 でしょうか。
 以下のような点に注意するとよいでしょう。

 ●内容に優先順位をつける
 ●最重要の点をしっかりとらえる
 ●取捨選択をする
 ●簡潔な表現に言い換える
 ●不要な個所はばっさり切り捨てる

 楽しみながらできる方法としては、趣味を兼ねて、俳句、川柳、和歌な
 どもいいでしょう。私が2005年から取り組んでいるのは、川又千秋氏が
 提唱している三百字小説です。
 http://www.bungenko.jp/300/

 これは、文字通り300字以内でお話を書こうということです。言葉を浪
 費すると、300字はあっという間に尽きてしまいます。しかし、300字は
 決して少なすぎる字数ではありません。俳句のなんと17倍以上もあるの
 です。「無いことによる良さ」、間(ま)の美は、日本では昔から称賛
 されてきました。書き方を工夫して余分な言葉をそぎ落とすと、300字
 でも豊かな世界を表現することができます。『遊歩人』という雑誌に、
 これまで拙作を15回ほど掲載していただいています。300字で表現でき
 ることと、300字では書ききれないことが、ようやく少しずつ分かって
 きました。私は、この他に800字、2000字などといった字数で、掌編を
 書いています。創作文章での訓練が、実用文章にも役立つというのは面
 白いことです。
 

 ■ 「山本ゆうじの翻訳道具箱」(その55)

 辞書ソフト――10秒以内に辞書を引けますか?

 某総理大臣の漢字の誤読は、内閣の支持率低下に一役買っているようで
 すが、人のことを笑ってばかりもいられません。パソコンで翻訳作業す
 る場合は、単体の携帯型電子辞書ではなく、パソコン上の辞書ソフトが
 必須となります。後者では、「画面の語句を選択して検索する」だけな
 ので、前者とは比べものにならないほど効率よく辞書引きできます。

 今回は辞書ソフトについて考えます。本連載の「(その36)最速検索環
 境の構築」もあわせてお読みください。
 http://tran.blog.shinobi.jp/Entry/259/

 翻訳作業では、対訳用語集がある場合には、その用語を優先して使いま
 すが、それ以外では辞書を引くことになります。言葉の意味を、自分で
 思いこんで使っているというのはよくあることです。翻訳の初心者では、
 辞書で引いて最初にでてくる訳語だけで満足している人がいます。2番
 目、3番目以降の意味や訳語も知っておくべきでしょう。

 どんなに経験を積んでいても、優れた翻訳者は決して辞書で確認するこ
 とをいといません。「少しでも気になったらすぐに調べる」という癖を
 徹底してつけることが、的確な翻訳につながります。たとえば
 conversation piece という語の意味を今すぐ確認したいとき、何秒で
 調べられますか? 私の仕事の環境で実際に試してみると、辞書検索ソ
 フトの起動の時間を含めて、5~8秒で検索できました。辞書検索ソフト
 がいったん起動した状態では、3秒で7つの英和辞書を検索できます。遅
 くとも10秒以内で検索できるのが理想です。みなさんもぜひ測ってみて
 ください。1つの言葉を確認するのに数十秒かかるようでは、「少しで
 も気になったらすぐに調べる」ということが実践できません。

「主に使っている辞書は何ですか」また「辞書検索ソフトは何をお使い
 ですか」と訊かれてすぐに答えられますか? 研究社の新英和中辞典
(約10万語)などは、悪くありませんが、やや特殊な専門用語は載って
 いないでしょう。リーダーズにリーダーズ・プラスを加えた「リーダー
 ズ+プラス」(約46万語)は、翻訳者の間でよく使われています。これ
 があればかなりの専門用語に対応できます。支給された用語集や参考資
 料があればそちらが優先されますが、さらに各分野の専門辞書、インタ
 ーネット検索も併用します。もちろん、辞書に載っている語そのままが
 使えるとは限りません。文脈で自然な流れになるように、適切に言いか
 えることも必要です。翻訳ソフトを「自分専用辞書」として活用すると、
 自分なりに工夫した訳語を蓄積してゆくことができます。

 どんなに多くの辞書を持っていても、引かなければ持っていないのと同
 じです。辞書検索ソフトでは、どのプログラムからでもキー1つで辞書
 引きできる、「ホットキー」機能があるか確認してみてください。「あ
 れば便利」というより、10秒以内に検索するためには必須です。
 LogoVista辞典ブラウザは、ロゴヴィスタの辞書ソフトに付属する辞書
 検索ソフトで、ホットキーを設定できます。DDWin、EBWinはいずれも無
 料で使える辞書検索ソフトで、コピー操作をしたときに自動的に検索が
 行われる「クリップボード検索」機能があります。しかし、クリップボ
 ード検索は翻訳作業では使いづらいので、私はスクリプトを自分で作成
 して、ホットキーで検索できるようにしています。

 訳語を確定する前に、「実際にそんな言い方をするのかな」と気になっ
 たことがありませんか? これまで自分で使ったことがない言葉は、実
 際の用例を確認する必要があります。辞書の用例は、信頼性はあります
 が、数が少ないのが難点です。辞書で調べた語をこれまで使ったことが
 なければ、その語をインターネットで検索してみてください。信頼性は
 劣りますが、豊富な用例が見つかります。「ある言葉と別の言葉のつな
 がり」も同様に確認できます。誤った用例も多数ありますので、ヒット
 数だけで比較せず、判断材料の一つとするのがよいでしょう。
 

 ■「山本ゆうじの翻訳道具箱」(その54) 翻訳祭と翻訳工学

                            山本ゆうじ

 毎年恒例の JTF(日本翻訳連盟)翻訳祭と、SDL Trados Discovery Day
 という2つの翻訳関連イベントに参加してきました。どちらも非常に多
 くの参加者でにぎわっていました。今回のコラムは、2008年の翻訳祭の
 感想です。

 ところで、SDL が AMTA(アメリカ機械翻訳協会)および IAMT(国際機
 械翻訳協会)と共同で実施した市場調査によると、グローバル企業社員
 の385人の回答者のうち57%が自動翻訳を検討しているそうです。また回
 答者のうち40%は、2年前よりも機械翻訳を利用する考えが強まったとの
 ことです。このような機械翻訳への取り組みは、翻訳祭での講師やパネ
 ラーの方々の発言にも現れていました。

 ただ、翻訳業界の中には「機械翻訳=安かろう悪かろう」という固定観
 念に縛られている方もいらっしゃるようです。これは、だいたいの意味
 が分かればよい「概訳」と、完成品を仕上げる「翻訳支援」という、機
 械翻訳の2つの用途が混同されていることが原因といえます。

 機械翻訳には、さまざまな動作方式があり、異なる工程の組み合わせに
 よる導入シナリオがあります。自動処理のみの概訳用途では、品質を犠
 牲にしてコストを下げることに重点がありますが、翻訳支援用途では、
 用語適用の正確さの面で、人間のみの手作業よりも明らかに上回ります。
 不適切な用語の使用による誤訳は、適切な翻訳支援技術により防ぐこと
 ができます。適切なツールを正しく使用すれば、抜き打ちではなく全数
 検査をすることができます。このようなツールを使いこなす技能と知識
 は、翻訳の付加価値です。翻訳者にとっては、単価の引き下げに対抗す
 るために、ツールのスキルを体系的に磨き、高技能翻訳者を目指すのが
 目標となると思います。

 翻訳支援システムのあるべき姿とは、専門知識をためて再利用する「エ
 キスパートシステム」です。たとえば法律関連の翻訳は私の専門外です。
 法律の翻訳の仕事をこなすのは不可能ではありませんが、専門用語を調
 べて確認する手間が増えるので効率が落ち、間違える可能性もあります。
 このような場合でも、法律用の翻訳支援システムを作り上げることで、
 経験のなさを補うことは十分可能です。「被告」と「被告人」のように
 紛らわしい言葉の使い分けや、「一見専門用語には見えない単語」をチ
 ェックすることもできます。万能ではありませんが、手作業で発生する
 手間とミスを大きく減らすことができます。

 また、翻訳祭などで、「日本人以外の日本語翻訳者」が話題に出たこと
 も興味深く感じました。しかし、「日本人以外の日本語翻訳者」を「日
 本人でない」という理由だけで先入観を持ち、低く評価するのはいかが
 なものかと思います。確かに「日本人なら間違えない」ような日本語の
 間違いを、ウェブ上や外国の看板で目にすることは事実です。しかし、
「日本人なら日本語は間違えない」ということはありません。よく見か
 ける「変な日本語の訳文」を書いているのも、やはり日本人なのです。

 見方を変えれば、日英翻訳者の多くは日本人であり、ネイティブでない
 訳語言語である英語に訳しているという実情もあります。「変な訳文」
「不自然な訳文」を、体系的にチェックすることも翻訳工学の範囲内で
 す。そのために重要なのは、翻訳技能に関する客観的な「評価基準」
 ではないでしょうか。

 翻訳祭のパネル ディスカッションでは、共通スタイル ガイドと共通
 用語集についても問題提起がされました。このような共通の指針は、
 無駄な労力を減らし、現実的に順守すべき点の共通理解を作り上げる
 ことで、翻訳者、翻訳会社、クライアントの三者すべての利益になり
 ます。Win-Win 関係を実現するための、きわめて具体的な手段といえ
 ます。分野や内容にもよりますが、スタイル ガイドと用語集は翻訳の
 仕事では避けて通れません。これらについても今後、翻訳業界で議論
 してゆく最優先の課題と思います。

 ご質問、ご感想、ご要望、ご意見などがありましたら、
 tran@nichigai.co.jp までどうぞ。

《このコラムは、音声認識ソフトで入力し、音声読み上げにより校正
 しています》

 

■「山本ゆうじの翻訳道具箱」(その53)
                TOEIC対策の秘伝とトルネード英会話

                           山本ゆうじ

先日、3年ぶり、4度目に受験したTOEICで990点(満点)を取得しました。
前回は985点だったので、足りなかった5点をようやく埋めることができ
ました。TOEICのスコアは過大評価か過小評価されているかのどちらか
で、誤解されていることが多いようです。過大評価という面に対しては、
TOEICで満点を取る人は珍しくなく、あくまで通過点に過ぎないという
ことがいえます。過小評価という面では、900点と990点の人の聞き取り・
読み取り能力では明らかにレベルが違うことが理解されていないようで
す。理解できる情報量とその正確さに違いがでてきます。「たかがTOEIC、
されどTOEIC」です。仕事で英語をよく使う人は、900点くらいは軽く取
ってほしいところです。コツを知っていればそれほど難しくありません。

今回は、TOEICのいくつかのコツと「トルネード英会話」について紹介
します。

聞き取り問題では、リラックスして「集中力を高める」ことが重要です。
英語能力が高くなれば、一部を聞き逃しても、経験で補うことができま
す。また全身を耳にしていなくても、内容をしっかり把握したうえで記
憶に留めることができます。聞き取りで問題なのはいわゆる短期記憶で
す。理解力と記憶力はある程度相関しています。しっかり理解できてい
ることは、しっかり覚えていられるわけです。

そこで、目の中に余分なものが入らないようにしつつ、「ひたすら問題
文に集中して聞く」ことをお勧めします。「問題文を目で読みながら聞
く」という方法もありますが、混乱するのでお勧めしません。聞き取り
問題は、聞き取れなかったときは、考え込んだところで分かるものでは
ありません。ずっと悩んでいると次の問題も聞き取れないので、連鎖的
に失敗します。そのため、聞き取れなかった問題はすっぱりあきらめて、
次の問題に進むべきです。

「どのようなレベルの情報を聞き取ることが期待されているか」を把握
しましょう。「重要な情報が頭に残っているか」がポイントです。時間
や曜日、月日などはキーワードとして特に注意して聞くとよいでしょう。
ただ、断片的な記憶ではなく、きちんと実際に理解しているかが試され
ます。

読解問題では、単なる黙読ではなく、問題文を「頭の中で声を出して読
む」ようにします(「頭の中で声を出さない黙読」もあります。ちなみ
に江戸時代には黙読という習慣はなかったそうです)。こうすれば自分
の勘違いに気づきやすくなります。「何を間違えるか」についてはパタ
ーンがあるものです。苦手な文法事項は、参考書で徹底的に復習します。
問題文をすばやく読んで情報を理解することも重要です。読解問題の最
初に戻って、全体を見直すぐらいの時間の余裕は作りたいものです。

さて、英会話能力の目標としては、TOEIC以外の指標が必要です。私は
「トルネード英会話」能力を身につける、ということを提唱しています。
「トルネード英会話」とは、英会話の主導権を握り、トルネードのよう
に周囲を巻き込むことで、自分のペースで話す能力です。英語で会話し
ている日本人を観察すると、ほとんどの場合相手のペースに呑まれてい
ます。日本人でトルネード英会話ができる人は非常に少ないようです。

トルネード英会話では、声の大きさや強引さで主導権を取るのではあり
ません。相手に手加減してもらえる「一対一」の場合や、「お客様とし
ての特別扱い」の場合もあてはまりません。パーティーなどで偶然出会
った複数のネイティブと対等の立場で接して、英語で会話するときに、
日常会話や単なる意思疎通ではなく、魅力的な話題と話し方で、相手を
引き込むのです。そうするためには豊富な知識と、それを詳細に英語で
スムーズに表現できる語彙と能力が必要です。これができれば一流とい
えましょう。私自身もトルネード英会話ができるようになることを目指
しています。

最後にクイズです。2008年7月から、SDL認定・SDL TRADOSのオンライン
講習の講師を始めました。

http://www.translationzone.com/jp/training/
おかげさまで「非常に分かりやすい」とご好評をいただいています。


この講習の電話会議に参加するときに、「番号の後にpound keyを押し
てください」という意味の英語のアナウンスが流れます。pound keyと
は何かお分かりでしょうか?

ご質問、ご感想、ご要望、ご意見などがありましたら、
tran@nichigai.co.jp までどうぞ。

《このコラムは、音声認識ソフトで入力し、音声読み上げにより校正し
ています》
■「山本ゆうじの翻訳道具箱」(その52)我が語学修行人生・中編

                           山本ゆうじ

拙作の掌篇が、光文社文庫『奇妙にこわい話』コンテストで佳作を頂き
ました。本作が収録された『もちろん奇妙にこわい話』(光文社)は、
2008年7月10日に刊行されます。創作、特に字数制限の厳しい掌篇やシ
ョートショートは、日本語力を鍛えるには最高の訓練です。「推敲」と
いう作業を楽しめる方なら、気晴らしもかねて創作に挑戦するのもよい
のではないでしょうか。

新しいVistaパソコンを買ったり、久しぶりにTOEICを受けたり、いろい
ろ書きたいことはあるのですが、その他の話題はブログを読んでいただ
くとして、今回は前回の続きです。

北はフィンランドから南はモロッコまで、東はチェコ スロヴァキア(当
時)まで行きました。オランダはアムステルダムの運河のほとりでは強
盗に、イタリアの鉄道ではすりに遭いました。ノルウェーのオスロでは、
極寒のクリスマスの夜に、泊まる場所が見つからず、急きょカレッジの
友人の家に泊めてもらったこともありました。予定外のことで、しかも
北欧でのクリスマスは家族の行事であるところに闖入したわけで、おま
けにあまりよく知らなかった女の子の家にいきなり泊めてくれというの
は、当時の純朴な私には死ぬほど恥ずかしいことでした。このような経
験を通して、ヨーロッパの中での文化の違いや共通点、伝統の受け継が
れ方などに気づかされ、またその中で日本の文化についても考えさせら
れました。「かわいい子には旅をさせよ」を断固として実行することは、
今の日本人にとっては非常に重要なことだと思います。

さて、私は2年間一度も帰国せずに、イギリスとヨーロッパでの生活を
満喫したわけですが、英語で学ぶことには大きな負担を感じていました。
そこで少なくとも大学は日本に戻り、4年間は日本語で勉強しようと思
い、アトランティック カレッジの卒業後に、筑波大学の比較文化学類
に9月入学しました。

当時は、思い浮かんださまざまなアイデアを、付箋のような小さい紙切
れに記録していました。やがて、ノートパソコンを教室に持ち込んで講
義ノートを取るようになりました。文系の授業でそんなことをしている
のは私くらいだったはずです。比較文化学類のウェブサイト作成や、比
較文化学類専用のコンピューター室の新規立ち上げなどにもかかわりま
した。今でも比較文化学類のコンピューターには、私たちが設立当時に
決めた日本伝統色の名前が使われています。

筑波大学での学業は、決してむだではなかったものの、革新的・進歩的
という売り文句に釣られた私は、日本の国立大学の実態に大きく失望さ
せられました。すばらしい友人や教員に恵まれる一方で、堂々と居眠り
をする学生の多い授業に幻滅しました。国立大学特有の融通のきかなさ
に閉口しつつも、学べるときに学ぼうと通常の1.5倍の単位を取り、大
学3年のときに英検一級、卒業時には第一種教員免許(2科目)を取得し
ました。しかし、日本の大学にはなんとも物足りないものがありました。

再び海外で学びたいという気持ちから、シカゴ大学の大学院に1年間留
学しました。シカゴ大学は、過去の卒業生と教員を含め80名以上のノー
ベル賞受賞者を出しています。また、仕事で英語を書く人ならご存じの、
『シカゴ マニュアル』と呼ばれる、論文や記事の規範が有名です。私は、
筑波大学で学んだことのお粗末さに打ちのめされました。再び英語で学
ぶ環境に戻り、早朝から深夜まで勉強に追われる日々でしたが、ある意
味では筑波大学での4年間よりもシカゴ大学での1年間の方が充実してい
ました。私は修士論文 「日常生活の美学 -モダニズムと『いき』-」
を執筆して、人文学修士号(MA)を取得しました。この論文は以下から
全文を読むことができます。英語で書いたのですが、自分で日本語にも
翻訳しています。
http://cosmoshouse.com/works/papers/

「いき」という研究テーマは、ライフワークとして今も引き続いて考察
しています。

帰国してからは、試行錯誤しながら翻訳の仕事を始めました。筑波大学
のころから翻訳のアルバイトはしていましたが、「秋桜舎」という屋号
を掲げてからは、翻訳会社と契約しながら、IT分野を中心に本格的な業
務を始めました。その後、3回目に受験したTOEICで985点を取得しました。

やがていくつかのご縁から、アルク、翻訳教育会社のアメリア、バベル
『eTrans Learning』(旧『翻訳の世界』)に執筆させていただくように
なりました。『通訳翻訳ジャーナル』、通訳翻訳ウェブ、そしてこの日
外アソシエーツのメールマガジンは現在も継続して執筆させていただい
ています。執筆と講演のリストは以下をご覧ください。
http://transpc.cosmoshouse.com/news.htm

私は、翻訳という仕事を始めてからすぐに、「どうやって合理的に翻訳
するか」ということが重要だと気づきました。また、パソコンで楽に翻
訳する方法を自分でいろいろ試しました。翻訳メモリーや翻訳ソフトは
その一例です。試行錯誤するうちに、翻訳メモリーと翻訳ソフトを組み
合わせるワークフロー、SATILAを開発しました。このような合理化ワー
クフローを核として実務翻訳業務、また大規模翻訳・文書管理/作成の
コンサルティングを行うようになり、現在に至ります。

「我が語学修行人生」は、この中編でひとまず終わりです。私の人生の
後編はまだ続くようですので。

ご質問、ご感想、ご要望、ご意見などがありましたら、
tran@nichigai.co.jpまでどうぞ。

《このコラムは、音声認識ソフトで入力し、音声読み上げにより校正しています》
山本ゆうじ

語学力は、もちろん翻訳者としての重要な基礎能力の一つです。今回は、
私のささやかな語学修行人生についてです。要点は以下の3点です。

● 高校のときに奨学金400万円の支給を受けて、イギリスにある国際
学校に2年間留学
● シカゴ大学大学院で人文学修士号を取得
● 英検1級、TOEIC 985を取得

私の生まれ育った生活環境は、外国と特に関係が深いわけではありませ
んでした。また両親が、外国と文化的交流がある仕事をしているわけで
もありませんでした。しかし私は、中学校のころから各国の言葉の面白
さ、ひいては文化の面白さに心惹かれていました。「世界中の言葉をマ
スターしてやろう」と考えたこともありました。ナイーブだった私は、
「世界に共通語があれば、異なる文化を持つ人々がもっと互いを理解で
きるのに」とも考えました。そしてNHKのラジオとテレビの講座で、英
語に加えて中国語とフランス語から各国の言語を少しずつかじり始めま
した。しかし、やがて「ふだん使わない言語は忘れてゆく」ということ
を実感するようになり、多言語学習(ポリグロット)熱はいったん冷め
ました。また、世界共通語については、ロマンス諸語とスラブ諸語の影
響が強い人工言語エスペラントのことを知って、「一つの世界共通語」
の理想の難しさに気づかされたのでした。

ともあれ、この日本の外には大きな世界が広がっていることを思うと、
外国や外国人をテレビや新聞で見るだけでは好奇心が抑えられませんで
した。そして、高校のときに両親を説得し、留学をしようと決意しまし
た。国際的教育組織UWC(ユナイテッド・ワールド・カレッジ)の選考
試験を受けて合格し、高校留学の奨学金400万円を頂いて、ウェールズ
にあるUWCイギリス校アトランティック カレッジで2年間学びました。
アトランティック カレッジは「カレッジ」という名前ですが、全寮制
の高校です。UWCとその教育課程である国際バカロレアについては、拙
著『世界に通じる学校――国際学校UWCの異文化理解教育』(2004年、
スペースアルク)で詳しくご紹介しています。
http://cosmoshouse.com/works/uwc-book/

この本では異文化理解そのものを目指すUWCの特色ある教育を紹介し、
日本の教育を問い直す、という問題提起も行っています。このアトラン
ティック カレッジでの2年間は、私の生き方と考え方に大きな影響を与
えました。自然科学や社会科学の中である程度科目が選択できるので、
私はヨーロッパ史、生物、美術の3科目に重点を置いて学びました。世
界70か国から選考を経て派遣されてきた奨学生たちと、非常に充実した
2年間を共に過ごしました。高校生のころに、マスメディアを介したス
テレオタイプではなく、本物のドイツ人、中国人、イギリス人、その他
さまざまな人々に直接、接することができたのはこの上ない貴重な体験
でした。

楽しい2年間ではありましたが、特に海外初体験の私は、言葉や価値観
の違いにはもちろん、容赦なく進む授業と大量の英文を読むことにずい
ぶん苦労しました。しかし、下手でも一文しゃべり、一文書く、という
ことを一つ一つ積み重ねていかなければ実力がつかないということを身
にしみて感じていました。また、課題として小論文をいくつも書きまし
たが、このころから英語版のWordを使い始めました。小学生のころから
ポケットコンピューターやPC-9801のBASICには親しんでいましたが、パ
ソコンを使った文書作成はこのころ始めました。

全寮制のアトランティック カレッジは、ハリー・ポッター シリーズの
ホグワーツ校に似ている点があります。たとえば、長期休暇の間は、生
徒は学校を離れます。しかしアトランティック カレッジは世界70か国
から生徒が来ており、休みのたびに全員が自分の国に帰るわけではあり
ません。異文化への猛烈な好奇心にかられていた私は、2カ月の夏休み
と1カ月の冬休み2回、合計4カ月のすべてを使って、ヨーロッパ17カ国、
約40都市を一人で貧乏旅行しました。ヨーロッパには、昔から若者が各
国を巡って見聞を深めて修行する、という伝統があります。スーツケー
スではなくバックパックを背負って旅する、いわゆるバックパッキング
です。旅行は高いもの、というのが日本の常識ですが、ユースホステル
やユーレイル パス(鉄道パス)など、工夫次第でお金を使わずにさま
ざまな経験ができます。必要なのはむしろ度胸ですが、度胸だけでは文
化を深く理解することはできません。英会話がある程度できたことは、
旅先できちんと意思疎通するうえで重要でした。

ときにはヨーロッパ各地にあるアトランティック カレッジの生徒の家
に泊めてもらい、あるときは列車や船の中で、またあるときは野宿し、
その他はユースホステルや安ホテルに泊まりました。好奇心の赴くまま
各地の美術館や博物館を巡り歩き、閉館時に係員に追い出されるまでい
続けました。大英博物館はだれでも無料ですが、ルーヴル美術館なども
高校生は無料で入れるのです。

(次回に続く)
 ■ 「山本ゆうじの翻訳道具箱」(その50)

ワーク パスで仕事の流れを変える

  いとこの結婚式でサイパンに行ってきました。日本軍と民間人により
集団自決が行われた、バンザイ クリフ、スーサイド クリフなどの戦跡
も見てきました。昨今の一部メディアには、ともすれば戦争を美化し賛
美しがちの風潮があります。また一方では、悪意と憶測に基づき、外国
人排斥に通じる過敏報道もあります。このような怨みと憎しみを含んだ
報道を、私は「ヘイト ジャーナリズム」と呼んでいます。遮る島影の
ない蒼い太平洋を絶壁から眺め、海を越えて互いを理解するための、言
葉の影響力と翻訳の重要性について改めて深く考えさせられたしだいで
す。

 それはさておき。今回は「ワーク パス」という考え方をご紹介しま
す。ワーク パス(work path)とは、具体的な「作業の道筋」のことで
す。仕事に役立つヒントやコツといってもいいでしょう。似たようなも
のにライフハックというものもあります。ただ、ワーク パスという考
え方では、単独でも役立ちますが、複数の道筋を組み合わせることで、
目的に早くたどり着く最善の方法を作りあげることを目指しています。
前回触れた、最善慣行(ベスト プラクティス)を構築するための「部
品」がワーク パスです。ワーク パスは、「文章の構成にワープロを使
う」、(ワープロの)「文章校正機能を活用する」といった、これまで
ご紹介してきたちょっとした「心がけ」などもあります。また「用語集
を作る」、「翻訳ソフトを活用する」といった技能そのものもあります。
正しいワーク パスを身につければ、いろいろと応用ができます。

 あるワーク パスには、別のワーク パスが前提になることもあります。
具体例を出しましょう。「用語集を作る」というのはひとつのワーク
パスです。ただ、このワーク パス単独ではあまり意味がありません。
このワーク パスは、「用語管理ツールを使う」「用語チェック ツール
を使う」「翻訳メモリー ツールを活用する」「翻訳ソフトを活用する」
といった、他のワーク パスの重要な前提条件です。この「用語集を作
る」ことが実践できれば、より高いレベルの使いこなしの可能性が広が
るわけです。ポーカーでデッキを揃えたり、麻雀の牌を揃えたりするよ
うなものです。よいカードや牌の組み合わせができれば、大きな効果を
上げられます。逆に「翻訳ソフトを活用する」ワーク パスを実践しよ
うとしても、「用語集を作る」という前提条件のワーク パスがなけれ
ば十分な効果を上げられません。

 もうひとつ例を出しましょう。「翻訳ソフトを活用する」ワーク パ
スと「音声入力を活用する」ワーク パスには、(ワープロの)「文章
校正機能を活用する」ワーク パスとの組み合わせが有効です。翻訳ソ
フトも音声入力も、自然言語処理技術であり、現時点での技術では、か
なりの認識エラーが発生します。その問題を発見・修正するために、文
章校正機能を併用することで、実用なレベルまで補完することができる
のです。

 さて、パソコンで楽に仕事するためのツールの「使いこなし」につい
て、大きく分けて3つの状態があるように思います。

 第一は、ツールや機能を「使えることを知らない状態」です。ツール
や機能そのものを知らない、または、機能を知っていても、自分の使っ
ている機械やツールにその機能があることを知らない場合などです。

 第二は、ツールや機能を「使えるのに使わない状態」です。これは、
「使える」にもかかわらず、そのことを忘れている場合です。本やウェ
ブでせっかく便利な方法を学んだのに、それが活用できる機会が訪れて
も、活用できることを思い出せない場合です。

 第三は、ツールや機能を「使ってみて不便だから使わない」という状
態です。もちろん、世の中には間違いなく不便なツールや機能も存在し
ます。しかし、多くの場合は、ユーザーが単にそのツールに慣れていな
いだけということのようです。翻訳ソフトや音声入力は、この第三の状
態、つまり「使ってみたが不便だった」と思われていることが多いよう
です。しかし、これは誤解であると断言します。翻訳ソフトや音声入力
などでは、そもそも基本的な特性を理解していない、操作方法を間違え
ている、ちょっとしたコツを知らない、といったことがしばしばありま
す。

 これら3つの状態をすべて乗り越えた人が「使いこなし」を実践して
いるわけです。ワーク パスという考えでは、繰り返し道筋をつけるこ
とで、第二の「使えるのに使わない状態」を減らすことができるはずで
す。また、前提条件を順番に揃えることで、第三の「使ってみて不便だ
から使わない状態」を解決できることがあります。現在執筆中の拙著で
も、役立つワーク パスをたくさん紹介していく予定です。

 なお最近、翻訳メモリー ツールSDL TRADOSの仕組みを分かりやすく
ご紹介する動画を作成しました。
http://www.translationzone.com./jp/landing/micro-site/webinar_recordings.asp
操作デモは順次追加されますので、今後のお知らせにご注目ください。

ご質問、ご感想、ご要望、ご意見などがありましたら、
tran@nichigai.co.jpまでどうぞ。

《このコラムは、音声認識ソフトで入力し、音声読み上げにより校正しています》

 ■ 「山本ゆうじの翻訳道具箱」(その49)

  プロバイダと最善慣行(ベスト プラクティス)

「読んで得する翻訳情報マガジン」の名に違わぬよう、役立つ情報をひ
 とつ。ADSLを数年前に契約した方は、そろそろプロバイダの見直し時か
 もしれません。数年前は月4000円程度が一番安かったのが、今では月20
 00円でも十分な速度で接続できます。料金コースの変更以外にも、レン
 タルしていたスプリッタ(電話線とADSL回線を分ける機器)を自分で購
 入して、レンタル料金を減らすことができます。IP電話を使っているな
 ら、ADSLモデムをIP電話機能内蔵のものに交換してもらうことでも、レ
 ンタル料金を減らせます。

 いったん客にしてしまえば、プロバイダは節約できる情報があっても教
 えてくれません。そのことを、今回@niftyの担当者からはっきり教えら
 れました。光回線の導入に問題がなければ、光にするのもよいでしょう。
 キャンペーンでの特典を考えると、2年ほどは安上がりになりますし、
 特典のうまみが薄れたころには光回線の値段も実質的に下がっているで
 しょう。

 ブロードバンドは翻訳道具かって? もちろんそうだと思います。「辞
 書はインターネットで引くもの」という認識が、少しずつ浸透してきて
 いるのではないでしょうか。これは、常時接続できる環境があってこそ
 可能だといえます。ちなみに、携帯電話の料金プランも各社で変更があ
 り、年末にかけて見直し時のようですね。

 さて、今回は最善慣行(ベスト プラクティス)についてちょっと考え
 てみましょう。「ベスト プラクティス」というカタカナ語表記のほう
 が通りがよいのですが、ここではあえて最善慣行という漢語表記を使い
 ます。なぜか。最善慣行。ベスト プラクティス。2つの言葉を並べたと
 き、初めて目にする人にとって、どちらが直感的に分かりやすいでしょ
 うか。私は漢語表記のほうだと思います。

 それはともかく、最善慣行とは何かということですが、一言でいえば
「考えうる最善の慣行」のことですね(漢語で表記すれば、このようにあ
 る程度、意味は自明なのです)。特定の分野ではもっと狭い意味に使わ
 れているかもしれませんが、ここでは広くとらえたいと思います。別に
 私は最善慣行の専門家というわけではありません。ただ、何をするにし
 ても、「最善の道を選びたい」と考えています。皆さんも、ふだんから
 そうされているのではないでしょうか。翻訳や文章作成の推敲にしても、
 常に最善のものを残そうと努力しているわけです。もう少し具体的にい
 えば、「どのような訳語がもっとも適切か」「どのような表記が適切か」 
 ということも含まれます。「必要以上にカタカナ語を使わない」という
 のもひとつの最善慣行だと思います。もっとも、一人だけでするのでは
 「慣行」として不十分です。また、「たまたま一度うまくできた」とい
 うだけでは慣行になりません。何が最善のものか、ということを特定の
 グループ、あるいは社会の中で合理的に考え、議論し、「智恵」として
 残し、試行錯誤しながら磨き続けてゆくことが重要だと思います。「合
 理的に考える」「合理化する」は、利益の追求のことではありません。
 「何が本当によい方法なのか」を徹底的に追求してゆくことです。

 かつて日本には、「和算」という一種の数学の体系がありました(もっ
 ともその源流は中国と朝鮮ですが)。現代数学の目から見ても、当時と
 しては優れたものだったようです。しかし和算はついに系統立った学問
 として残ることはなく、消滅してしまいました。その理由のひとつとし
 て、剣法の流派のような「~家の秘伝」といった秘密主義があったよう
 です。和算自体は消滅しましたが、ここからある重要な教訓が得られま
 す。それは、建設的な意見交換を「公開して」、最善慣行を積み重ねて
 ゆけば、形は変わっても社会に有益なものが残るだろう、ということで
 す。翻訳ソフトや音声認識をどのように活用してゆくかといったことや、
 オープンソースやユーザー辞書の共有も、その取り組みの例です。

 (その48) 翻訳祭と「みんなの辞書」UTX

10月にJTF(日本翻訳連盟)主催で、翻訳祭が行われます。僭越ながら、
 私がパネルディスカッションの司会を務めさせていただきます。
 http://www.jtf.jp/jp/festival/festival_top.html

 テーマは「ツール活用で品質と効率の向上を両立する ~MT/TM ワーク
 フローの現状と未来~」です。なおMT(machine translation)とは機
 械翻訳、TM(translation memory)とは翻訳メモリのことです。翻訳者、
 翻訳会社、ツール開発会社、クライアントなどさまざまな立場のパネリ
 ストが一堂に会し、翻訳支援ツールの現状と未来について本音の意見を
 戦わせます。翻訳支援ツールについては、「食わず嫌い」の翻訳者がま
 だかなりいらっしゃるようです。企業内翻訳者の方はともかく、個人翻
 訳者は自分で積極的に情報収集して、工夫したほうがよいのではないで
 しょうか。分野も、IT分野・ローカライゼーションをはじめとしてさま
 ざまな翻訳分野に触れる予定です。

 たいへん貴重な機会ですので、いろんな意見を聞いて自分の目で判断し
 たいという方は、お誘い合わせのうえぜひ翻訳祭にご来場ください。
 「このような点について関心がある」という論点のリクエストもお待ち
 しております。可能な限り反映させていただきます。

 機械翻訳や翻訳ソフトというと、作業速度の向上だけに目が行きがちで
 すが、これは大きな誤りです。作業の速度は、品質の向上と関連してい
 ます。「ゆっくり訳したから丁寧」とは限りません。速く作業できた分
 を、確認の時間に回すことで、より確実な翻訳にすることもできます。
 節約できた時間をどう使うかは、翻訳する人次第です。

 スタイル ガイドの遵守や表記の統一などは、実際には手が回らずに手
 抜きされていることも多いようです。しかし、本来ならばかなり自動化
 が可能な工程です。機械翻訳や翻訳ソフト導入は、「おろそかになって
 いる点があればそれをまず分析し、改善しようとする意思がある」とい
 うことが前提になります。コスト削減しか考えていないのでは必ず失敗
 します。

 翻訳支援ツールに関しては、ともすれば客観的な議論よりも、感情的な
 議論になることもあるようです。「実際にやってみてどうだったか」と
 いうことが、個人的な体験の範囲でしか語られないことが多いと感じま
 す。これは翻訳者が個人や小人数で作業することが多いこととも関連し
 ていると思われます。また、工程の効率化の評価よりも、「心理的な抵
 抗」が最大の壁のようです。一度誤解されると、理屈で説明してもなか
 なか分かってもらえません。そもそも英語など外国語の学習にしても、
 問題となるのは心理的な抵抗です。今後は、翻訳支援に関して、情報交
 換と研究がより活発に行われ、迷信が打破されることを期待しています。

 現代の実務翻訳は、チームワークです。最初から最後まで自分ひとりで
 翻訳をするわけでありません。自分で名訳ができたと得意になっていて
 も、それが他の人が訳した部分から突出していると、できあがりは奇妙
 な文章になってしまいます。実際には個人で作業するとしても、翻訳に
 かかわる関係者がチームとしてうまく機能しているかが、翻訳結果には
 っきりと現れます。

 さて、前回ご紹介した共有ユーザー辞書フォーマット、「みんなの辞書」
 は、UPF3と仮に呼ばれていましたが、正式名称がUTX (Universal
 Terminology eXchange)と先日決定しました。お互いの翻訳の知識を持
 ち寄ることで、楽に翻訳しようという趣旨です。親しみやすい解説ペー
 ジが公開されましたので、ぜひご覧ください。
 http://www.aamt.info/japanese/utx.htm

 インターネットでは、医学など専門的な対訳用語集が無料で多数公開さ
 れています。しかし、形式がばらばらのため、単純に「検索する」とい
 う以上の活用はこれまで困難でした。さまざまな形式の用語集をオープ
 ンな統一規格にすることにより、自由に相互利用しやすくなります。た
 だしオープンの用語集では、「だれが作ったのか」という点で妥当性・
 信頼性が問題になります。「オープンでなくてもいいが、きちんとした
 専門家が監修した高品質な辞書を使いたい」という要望にも応えられる
 仕組みを、現在検討中です。

 ご質問、ご感想、ご要望、ご意見などがありましたら、
 tran@nichigai.co.jpまでどうぞ。

《このコラムは、音声認識ソフトで入力し、音声読み上げにより校正し
 ています》

 

(その47)ユーザー辞書(UPF3)と一語一義               

 Lazy Susanというものをご存じでしょうか。おそらくみなさんが必ず一
 度は目にし、また使ったことがあるものです。答えは「回転式テーブル」。
 「1932年に目黒雅叙園の創設者、細川力蔵氏が作った」という説があり、
 日本で広まったのはそちらなのかもしれませんが、18世紀のイギリスに
 すでに原形があったようです。Lazy Susan という語は1917年に米語と
 して初出となっています。調べものには裏の裏があるので、気が抜けま
 せんね。

 それはさておき、今回は「ユーザー辞書」について少し考えてみたいと
 思います。ユーザー辞書とは、翻訳ソフトや日本語入力システムなどで
 使われる辞書ですが、「ソフトウェア製品に付属する辞書」つまりシス
 テム辞書ではなく、「ユーザー自身が作成する辞書」です。

 翻訳ソフトの研究者やメーカーなどで構成されるAAMT(アジア太平洋機
 械翻訳協会)では、仮称「UPF3」という、翻訳ソフトの共有ユーザー辞
 書フォーマットを策定中です。私もこの仕事のお手伝いをしています。
 翻訳ソフトを活用するにはユーザー辞書が重要です。しかし多数のきめ
 細かいユーザー辞書があっても、ユーザー辞書の形式がメーカー独自で
 ばらばらだと、せっかくのデータを有効に活用できません。この新しい
 フォーマットはXMLに基づいており、異なるメーカーの翻訳ソフトであ
 っても簡単にユーザー辞書をやり取りできるようにします。多くのユー
 ザー辞書を集約することで、翻訳ソフトの精度を大きく向上できます。
 現在AAMTでは、このフォーマットの策定のために翻訳の需要があるパー
 トナーを募集しています。関心のある方は以下のページまでどうぞ。
 http://www.aamt.info/japanese/upf3.htm

 翻訳ソフトの場合、システム辞書には原語、訳語、活用形などの必要最
 低限の情報のほかに、その単語特有の詳細情報が加えられています。名
 詞であれば、生物・無生物など、「その語がどのような性質を持つのか」
 といった情報です。システム辞書は翻訳ソフト製品自体に含まれるため、
 出荷前にさまざまな調整をして、より適切に翻訳できるようにしている
 わけです。これは自動翻訳させる場合、ユーザーが手を加えなくても可
 能な限り適切な訳文を出すために必要な情報でもあります。言い換えれ
 ば、自動翻訳では「可能な限り適切に自動で訳し分けをする」必要があ
 る、ということです。

 さて翻訳ソフトには自動翻訳のほかに、ユーザーが手を加えることが前
 提の「翻訳支援」という使い方があります。この場合は、翻訳ソフトに
 任せ切りにするのではありません。自動翻訳でもすでにあるユーザー辞
 書を受動的に使うことがありますが、翻訳支援ではより積極的に「ユー
 ザー辞書を作る」という使い方になります。

 ユーザー辞書では「単語特有の情報」は必須ではありません。あればい
 いかもしれませんが、実際には必要最低限以外の詳細情報をいちいち登
 録するには、大変な労力が必要になります。簡単に作れるものでなけれ
 ば、忙しいユーザーはわざわざ辞書など作らないでしょう。また、ユー
 ザー辞書ではそもそも「訳し分け」を考える前に、基本的な大前提があ
 ります。それが「一語一義」です。

 「一語一義」は、技術文書全般で重要です。これは「1つの言葉には1つ
 の意味を割り当て、明確に定義する」ということです。そうしないと言
 葉の意味があいまいになり、不正確な文書になってしまいます。技術
 「翻訳」の場合には、原則として1つの原語に対して1つの訳語のみをあ
 てる、ということになります。もちろん言葉の中には、文脈によって複
 数の訳語で訳し分ける必要があります。ただ、その場合でもその時の気
 分で訳語を決めるのでは困ります。技術翻訳であれば、Lazy Susanを
 「回転式テーブル」と訳すか、「回転食卓」と訳すか、1つにしっかり
 決めて、いったん決めたらそれを貫くということです。ある言葉に対し
 て複数の訳語を使うのは、「明確に訳し分けをする理由がある場合のみ」
 に限定する必要があります。実際には、訳し分けは用語集やスタイル
 ガイドで規定されることになります。

 文芸翻訳ではまた事情が異なり、柔軟な対応が必要です。文脈にもよる
 でしょうが、「回転式テーブル」とした上で「レイジー スーザン」と
 ルビをあてる、といった具合になるかもしれません。

 さて、一語一義が守られていれば、訳し分けは必要最低限になります。
 言い換えれば、ユーザー辞書では一語一義が守られていれば、単語特有
 の詳細情報は必須ではなく、必要最低限の情報でよい、ということにな
 ります。また翻訳ソフトが「余計なことを考えなくなる」ため、正確に
 翻訳できるようになるわけです。

 ■「山本ゆうじの翻訳道具箱」 (その46)
                    七十人訳聖書とWord 2007

七十人訳聖書(Septuagint)、というものがあります。伝説によると72
人の翻訳者が、ヘブライ語の聖書をギリシャ語に翻訳したそうです。驚
くべきは、原書を72分割して翻訳したのではなく、72人の翻訳者がそれ
ぞれ別の部屋で翻訳して、結果がぴったり一致したそうです。あくまで
伝説ですが……。翻訳メモリを使って翻訳していたら、という場面をつ
い想像してしまいます。そこまでしたにもかかわらず(しなかったかも
しれませんが)、七十人訳聖書は、いくつかの誤訳があることが知られ
ています。

閑話休題。今回はMicrosoft Officeの新バージョンOffice 2007に含まれ
るワープロソフト、Word 2007についてです。私は、ベータ版のころから
Word 2007をもう1年近く使っています。不満がないわけではありません
が、個人的にはなかなかよいと感じています。

今のWordには約1500種のコマンドがあるそうです。この中には、あるユ
ーザーにとってはまったく必要のない機能もあるでしょう。最低限の機
能を知っているだけでも、ひとまず仕事はできるかもしれません。しか
し、便利な機能があるのに、「そういうことができるとは知らなかった」
ということもよくありそうです。ちょっとしたことを知るだけで、楽に、
効率よく仕事をこなせるようになることがあります。はっきり言って、
Word 2007には驚くような新機能はありません。一見新機能に見えるもの
でも、Word 2003以前のバージョンからあるものが少なくありません。
むしろ「埋もれていた機能の再発見」がポイントのようです。手持ちの
バージョンでも、あれこれ自分で試し、ヘルプや活用書を読めば埋もれ
ている便利な機能が見つかるはずです。まずはそういった機能を一通り
試した後で、Word 2007に取り組んでも遅くはないかもしれません。

Word 2007ではツールバーの代わりに「リボン」で操作します。リボン
はツールバーに似ていますが、ボタンが大きくて見やすくなっています。
また、「表示」、「挿入」、「校閲」など、特定の機能のまとまりごと
にボタンがグループやタブで分類され、一度に見えるボタンが少なくな
っています。そのため、「何をしたいか」という目的から機能を探しや
すくなっています。特にWordの経験のない初心者には、負担が少ないと
いえます。

リボンは、以前のどのバージョンのWordのインターフェイスとも大きく
異なるため、Wordの操作に慣れた人、「どこに何があるか知っている人」
にとっては、一時的に使いづらいと感じるでしょう。ただ、これまで埋
もれていた機能を見つけることができるかもしれません。

細かい点でも使い勝手は上がっていると感じます。文字を入力するごと
に文書全体の文字数がリアルタイムにカウントされるようになり、字数
制限がある場合はすぐに確認できます。文章校正機能も、劇的とはいわ
ないまでも向上しています。閲覧モードでは、マウス ポインタを語句の
上に載せるだけでWordに内蔵された辞書が引けます。

また、今回ファイル形式がXML形式に基づくものに変更され、以前よりサ
イズが小さくなりました。画像やPowerPoint形式のファイルが多数埋め
込まれたWord文書でも、クラッシュする危険が減ったと感じます。

Word 2007に付属するMS-IME 2007には、ATOKと同様の予測入力機能が付
きました。これまでに入力した語句の内容を記憶して、最初の数文字を
入力するだけで長い単語を楽に入力できます。

ユーザーからみた難点といえば、オフィス製品の競争相手が少なくなっ
た今、ほとんど下がらなくなった価格でしょうか。無料で使える互換オ
フィスであるOpenOffice.orgで問題ないと感じる方もいらっしゃるでし
ょう。ただ、依然として互換性は完全ではなく、Microsoft Officeとフ
ァイルをやりとりする際には、レイアウトが崩れる危険性があります。
改善が期待される点です。

アップグレードを考えている場合は、Wordと連携して動作する、その他
のソフトにも注意が必要です。Word 2007を含むOffice 2007は、SDLX
Trados 2007からサポートされます。Word 2003と2007は共存させること
ができるので、段階的に移行することもできます。
 ■「山本ゆうじの翻訳道具箱」(その45)
                      ポッドキャストを聴いていますか?

昨年末のSATILA翻訳ワークフローのセミナーには、多数の方にお越しい
ただきありがとうございました。講演を完全収録したDVDが日本翻訳連
盟(JTF)から発売されていますので、ご関心のある方はご利用くださ
い。
http://www.jtf.jp/jp/east_seminar/goods_dvd.html#10

さて、みなさん、ポッドキャストをお使いですか? おそらく、すでに
活用していらっしゃる方も多いと思います。

ポッドキャストは、インターネットからダウンロードできる音声や音楽
です。映像は「ビデオキャスト」などといいます。いったん最後までダ
ウンロードしてから再生するので、高音質・高画質です。また、携帯音
楽プレーヤーで外に持ち出すこともできます。ニュース、音楽、ラジオ、
情報番組、朗読などさまざまな音声を、世界中の言語で聞くことができ
ます。英語に限った場合でも、各国のアクセントで出題されるようにな
った新TOEICの対策としても役立ちます。「ポッドキャスト」と呼ばれ
ている場合には無料のことが多いようですが、有料の音楽や情報もあり
ます。

ポッドキャストを聴くには、iTunesなどのソフトウェアを使います。
http://www.apple.com/jp/itunes/download/
パソコンさえあればすぐに音声や映像を楽しめますが、もし携帯音楽プ
レーヤーやW-ZERO3などのPDAがあれば、通勤・通学中に聴くことができ
ます。最近は3000円台の携帯音楽プレーヤーもあるようです。

私はCNN、NPR、BBC、MSNBC、ABC、Sky Newsなど英語圏のニュースをポ
ッドキャストやビデオキャストで視聴しています。科学や自然がお好き
ならDiscovery Channel、National Geographicなど、芸術に関心のある
方は、イギリスのNational Galleryのポッドキャストがお勧めです。絵
画の写真を見ながら、その解説を聞くことができます。これらの番組は、
キーワードをiTunes内で検索すると見つかります。関心のあるキーワー
ドにpodcastという語を加えて、ウェブ検索してみるのもよいでしょう。

短いポッドキャストは5分以内で終わるので、聞き飽きることもありま
せん。つまらなければ別の番組を聞けばいいだけです。ラジオと違い、
途中で停止したときは後で再開することもできます。聴きたいときに聴
きたい番組を、好きなだけ聴くことができます。

環境にもよるでしょうが、翻訳者の方でも、ふだんから心がけていない
と「英語を耳にする」ということは意外に少ないことがあります。リス
ニングが不得意でも翻訳をすることはできます。しかし、耳から聞く英
語に慣れておけば、さらに楽に翻訳できるようになるでしょう。本を読
むよりも、新しい語彙や表現を楽に身につけることができます。1日10
分でも英語に毎日触れる習慣をつけることで、大きな違いを生むことが
できます。

リスニング能力は、業務用翻訳ソフトの使いこなしにも関係しています。
業務用翻訳ソフトを使いこなすには、読んで単語を順に入力しながら翻
訳していく程度の英語力では困難です。通訳で使われるサイト トラン
スレーション(サイトラ)と同じように、英語を理解しながら訳文の
「かたまり」をしっかり頭の中でイメージできることが必要です。それ
にはリアルタイムで英語を理解する能力、つまりリスニング能力も関係
しています。

ふだんは文章として読んでばかりいる英語でも、耳から入ってくると新
鮮なものです。リスニングが苦手な方は、VOAを聴かれるのもよいでし
ょう。前回も少し触れましたが、Special Englishという、分かりやす
い英語でゆっくりと読み上げています。アメリカの国営放送ですから、
アメリカの立場を知るという意味でも面白いものです。

英語圏のニュースには、非英語圏の各国のさまざまな人々が登場します。
英語のみが唯一の国際語ではないでしょうが、要人はもちろん、学生や
一般人などでも流ちょうに英語を話すのには感心します(もちろん英語
を話せない人は通訳を介しますが)。発音には癖がある場合でも、語彙
や表現力に幅があり、英語力の高さが分かります。ところが、日本人が
出てきて英語で喋ることはまずありません。インターネットのおかげで
世界中がつながっていることはある意味では確かです。その一方で、日
本と「外の世界」にはいまだ大きな隔たりがあることを実感します。だ
からこそ翻訳を仕事にできるわけでもありますが……。

ご質問、ご感想、ご要望、ご意見などがありましたら、
tran@nichigai.co.jp までどうぞ。

《このコラムは、音声認識ソフトで入力し、
   音声読み上げにより校正しています》
 ■ 「山本ゆうじの翻訳道具箱」(その44)実務日本語とは何か

  さて、英語の語彙を制限し、文法を簡単にしたものを簡易英語
(Simple English)と呼んでいます。英語には、Simplified English、
Basic English、Special Englishなど、用途や背景に応じてさまざまな
ものがあります。たとえば、VOAのSpecial Englishは初歩の英語学習に
適しています。またSimplified Englishは、簡潔かつ確実なコミュニケ
ーションが必要な航空・宇宙分野で使われています。

日本語でも、いくつかの規則を定めて文書を作成することで、大きな利
点があります。日常の日本語をすべてこれに切り替えようというのでは
ありません。日常会話や文芸は除外し、実務の分野での日本語の規則を
定めようというわけです。私はこれを「実務日本語」と呼んでいます。

実務日本語指針の具体的な項目の多くは一般的に言われていることで、
「簡潔な言葉遣いにする」「能動態を使う」「文を短くする」といった
ルールです。しかし実際には実践されていない事柄も多く、またいくつ
かの観点は目新しく見えるかもしれません。さらに、これらの指針は徹
底して行うことで大きな効果を発揮するものでもあります。

実務日本語の主な利点は以下の5つです。

●合理的な根拠に基づく
●読者にとって明快
●機械的処理がしやすい
●再利用と共有がしやすい
●検索しやすい

●合理的な根拠に基づく

実務日本語指針は、合理的な根拠に基づいています。慣習として確立し
ている指針は尊重しますが、あいまいな点については合理的で明確なル
ールを定めることで、執筆者が迷うことがなくなり、負担を減らすこと
ができます。

●読者にとって明快

文書の内容を明快にし、読者の誤解を減らせます。翻訳する際でも翻訳
者の負担を減らし、すばやく正確な翻訳ができます。英日の訳文では
「変な日本語」がかなりあります。表現を機械的に置き換えただけで済
まして、日本語に本来存在しない、こなれない表現を放置している場
合などです。たとえば、非生物主語は英語では普通に使われますが、
「その電話は彼を怒らせた」のように、日本語で多用すると変です。ま
た外資系のウェブサイトでは、不自然な日本語が目につきます。ネイテ
ィブの日本人以外が翻訳に携わる機会も増える中、明確な日本語指針を
示すことが必要でしょう。

●機械的処理がしやすい

実務日本語指針は、全面的に電子文書に対応しています。人間にとって
直接利用しやすいだけでなく、翻訳ソフトでの処理を含め、電子文書の
作成、処理、表示などを総合的に考慮しています。

●再利用と共有がしやすい

オリジナルの文書を翻訳、音声化などで二次的に利用する際の問題を減
らせます。自然言語処理での形態素解析、ファイル形式の変換などにつ
いても考慮されています。たとえば、自動翻訳の精度や、音声合成によ
る読み上げの正確さを飛躍的に向上できます。

●検索しやすい

表記などのばらつきはマニュアル作成者、翻訳者だけでなく、利用者も
悩ませます。これらを適切な表記に統一することで、電子文書をより確
実に検索することができます。たとえば、日英翻訳などの「原文として
の日本語」で役立ちます。日本語は多用な表記ができ、豊かな表現力を
持つ一方で、実務の立場からはインタフェースとインターフェイスなど
の表記の不統一が課題です。翻訳メモリの一致率で価格が決まる実務翻
訳では、日本語の表記の不統一は、確実なコスト増大につながります。
また翻訳ソフトではそれぞれの表記について用語登録をする必要が生じ、
手間がかかります。表記を統一できれば、翻訳メモリの一致率を上げら
れ、文書をスムーズに再利用できます。また翻訳ソフトでも、1種類の
表記に対して用語登録すれば済みます。

〈指針の実施と実装〉

実務日本語指針には、基本指針、拡張指針、実務日本語仕様の3種があ
ります。「基本指針」は要点のみを簡潔にまとめたもので、簡単に導入
・実施できます。「拡張指針」ではさらに細かく具体的な点まで定めら
れています。「実務日本語仕様」は、拡張指針の抜粋で、ツールで準拠
しているかをチェックすることを前提にした指針です。本来はすべての
指針がツールでチェックできるのが理想的ですが、実際には限界があり
ます。基本指針や拡張指針はあくまでも「指針」であり、人間が留意し
て作文や翻訳する必要があります。これに対して「実務日本語仕様」は、
ツールでチェックできる内容に限られるものの、逆にツールさえあれば
準拠しているか簡単にチェックできます。

実務日本語については、今後さまざまな場所で取り上げていく予定です。

=======お知らせ=======
2006年12月に、JTF(日本翻訳連盟)翻訳環境研究会でSATILA翻訳ワー
クフローについて講演します。
(詳細) http://transpc.cosmoshouse.com/jtf-seminar2006.htm
【日時】2006年 12月12日(火) 14:00~16:40
【テーマ】最新技術:翻訳ワークフローSATILAへのご招待
                    ~翻訳支援技術の最先端

実際の企業翻訳で、どのようにSATILAワークフローを活かして最大限の
効率と品質を実現するかをご紹介します。当日は具体的な実演を多数行
う予定です。今回は、企業クライアント、翻訳会社を主な対象としてい
ますが、実際に作業する翻訳者の方にもぜひご覧いただければと思います。
お誘い合わせの上、ぜひお越しください。

ご質問、ご感想、ご要望、ご意見などがありましたら、
tran@nichigai.co.jp までどうぞ。

《このコラムは、音声認識ソフトで入力し、音声読み上げにより校正し
   ています》
 ■「山本ゆうじの翻訳道具箱」(その43)

 Hallydayは何人?/翻訳ソフトでIT翻訳

みなさんは、今年の翻訳祭には行かれますか?
http://www.jtf.jp/jp/festival/festival_top.html

東京で、2006年10月12日に開催されます。翻訳祭には、日外アソシエー
ツさんも協賛という形で関わっておられます。当日、私は地下一階で開
かれる「翻訳プラザ」のSDL TRADOSさんのブースに居候させていただき、
SATILAワークフローのデモをしています。見かけたらどうぞお声をおか
けください。翻訳祭自体は申し込みが必要(当日受け付けもあり)です
が、翻訳プラザは入場無料ですのでお気軽にどうぞ。

さて、思い込みというのは、恐ろしいものです。Exciteに掲載されてい
る「世界びっくりニュース」のある記事で「英国のロック歌手、ジョニ
ー・アリディ」というくだりに出くわしました。
http://excite.co.jp/News/odd/00081158416519.html

ご存じの方も多いと思いますが、Johnny Hallydayは本名Jean-Philippe
Smet、フランスの歌手です。原文が間違えているなら、まあしかたある
まい、と思い、原文を探してみました。すると原文にはちゃんと"French
rock star Johnny Hallyday"と書いてあります。
http://tinyurl.com/hc6dv

つまり、この翻訳者は、"French rock star Johnny Hallyday"という個
所を見て、「原文が間違えている」と判断し、わざわざ「英国のロック
歌手」にしたようです(さらにいえばrock starはただのロック歌手とは
違うはずです)。「ハリデイ」と表記しなかったところをみると、
Hallydayの読み方だけは辞書でひいたのでしょうか。あるいは名前だけ
知っていたのかもしれません。この記事は何度も丸写しされ、インター
ネットに流布しつつあります。もっとも、Hallydayは国際的に活躍して
おり、また、ベルギーの市民権を申し込んでいるようなので、「フラン
スの歌手」とも言い難い点があります。ともあれ、世界びっくりニュー
スは、記事の内容もびっくりですが、翻訳にもびっくりできて二度オト
クです。このコーナーは、翻訳の初心者の方にとっては、「翻訳として
何が問題か」という反面教師として役立つ教材となるので一見されるこ
とをお勧めします。

それはさておき。今回はIT分野での翻訳ソフトの活用例をみてみましょ
う。まずストップウォッチを用意してください。そして、次の文を手作
業で翻訳して、何秒かかったか測ってみてください。

"XML declaration may contain information about character encoding
  and external dependencies."

出典はWikipediaの<http://en.wikipedia.org/wiki/XML>の項ですが、
少し変えています。さて、この文をLogoVista X PRO 2006専門辞書フル
パックの、IT関連の専門辞書をすべて使って翻訳させた場合、次のよう
になります。

カスタマイズなしの自動翻訳「XML 公表が文字符号化と外部の属国につ
いてのインフォメーションを含んでいるかもしれません。」

おや、「公表」や「属国」など、関係なさそうな訳語になっていますね。
しかし、ここで翻訳ソフトが使い物にならないと決めつけるのは早すぎ
ます。文脈によっては「公表」や「属国」という訳語が確かに正しいこ
ともあります。構文解釈さえ間違えていなければ、翻訳ソフトを使う上
で、訳語の選択というのは大した問題ではありません。翻訳を行いなが
ら調整をしたり、用語集に基づいた辞書を作ったりすることで簡単に解
決できる問題だからです。今度は、SATILAのノウハウに基づいて、「ど
の訳語を使うべきか」という点を調整した結果を見てみましょう。

カスタマイズありの自動翻訳「XML 宣言が文字エンコーディングについ
ての情報と外部の依存関係を含むことがあります。」

IT分野で一般的に使われる訳語にすることができました。しかし、ここ
で調整が入ったため、修飾関係の解釈を間違えてしまいました。また、
「てにをは」にまだ不自然な点があります。まだこれまでの段階では、
(訳語の選択を除いて)人間の手は加えていません。これを手作業で修
正すれば次のようになります。

完成の訳「XML 宣言には、文字エンコーディングと外部依存関係につい
ての情報を含めることができます。」

いかがでしたでしょうか。カスタマイズありの場合から完成の訳にする
まで、何秒かかるか想像して、手作業にかかった時間と比べてみてくだ
さい。

ご質問、ご感想、ご要望、ご意見などがありましたら、
tran@nichigai.co.jp までどうぞ。

《このコラムは、音声認識ソフトで入力し、音声読み上げにより校正し
   ています》
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