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■ 異文化の翻訳--言語以前の問題 (その2)
                         三谷 康之

都市住宅であれ田園の民家であれ、縁起をかつぐ人は我が家の玄関
ドアの脇に蹄鉄を取りつけるというのも、異文化のひとつです。

イギリス人の家の戸口周辺には、注意して見るとまだまだ我が国で
はお目にかかれないものが存在することに気がつきます。

例えば、"bell-pull" です。

【1】ウォルター・スコットの旧邸宅アボッツフォードのベル・プル
http://www2.neweb.ne.jp/wd/nichigai/tranradar/mitani/mitani5.html#1

散歩用ステッキと同じくらいの長さと太さの金属棒が1本、ドアの
右脇にぶらさがっていて、それを垂直にぐいと引っ張りますと、棒
につながっている針金や紐(ヒモ)が屋内へ伸びていて、その先に
結びつけられたベル、つまり鐘が鳴るという仕掛けなのです。

棒の代わりに太い紐状のものを吊り下げる場合もありますし、今日
ではそれを電気仕掛けにしたものすら見かけます。紐状の方は
"bell-rope" ともいいます。

【2】電気仕掛けで鳴るようにしたベル・プル
http://www2.neweb.ne.jp/wd/nichigai/tranradar/mitani/mitani5.html#1

これは童話にも登場します。

例えば、ケネス・グレイアムの『柳に吹く風』では、森に迷ったモ
グラとミズネズミが、必死になって雪の下から掘り出したアナグマ
氏の家に備えてあって、添えられたアーネスト・シェパードのイラ
ストにもはっきりと見て取れます。

【3】『柳に吹く風』のアナグマ氏の家のベル・プル
http://www2.neweb.ne.jp/wd/nichigai/tranradar/mitani/mitani5.html#2

紐のタイプは『クマのプーさん』に描かれています。クリの木に住む
フクロウの家でもこれが使われていましたが、彼はロバのイーヨー
がなくした尻尾をそれに充てていたのでした。

【4】『クマのプーさん』のフクロウ邸のベル・プル
http://www2.neweb.ne.jp/wd/nichigai/tranradar/mitani/mitani5.html#2

このベル・プルは玄関だけではなく、部屋の中でも必要なものなの
です。特にカントリー・ハウスのような大邸宅では、使用人を呼び
出すのになくてはならないものでした。したがって、使用人の控え
の間には主要な部屋と連結するベルが幾つも取りつけてあるのです。

カズオ・イシグロ原作の映画『日の名残り』には、どのベルが鳴った
から呼び出しはどの部屋からだ、などと主人公の執事が対応を迫られ
るシーンがあります。

同じく映画『ミニヴァー夫人』の中でも、キャロルの館を訪れている
ヴィンが空襲警報を聞くや否や、執事を呼ぶために部屋の隅から下が
っているこれを引っ張るシーンがあります。

コナン・ドイルによる『シャーロック・ホームズ』の「まだらの紐」
では、まさにこれが事件の犯罪と切っても切れない関係をもつこと
になります。ホームズとワトソンが実地検分した依頼人の部屋には、
引っ張っても全然鳴らない見せ掛けのベル・ロープが吊してあった
という次第です。グラナダ・テレビ制作のドラマ「まだらのひも」
の映像でもそれは確認できます。

ちなみに、一般に「呼び鈴」は "door-bell" といいますが、今日風
な「押しボタン式の呼び鈴」は "bell-push" ですから、"pull"と
"push" の使い分けになるのです。


【著者紹介】
三谷康之(みたに・やすゆき)
東洋女子短期大学教授。
1975~76年まで〈英文学の背景〉の研究調査のため英国にてフィールド
ワークを行った。
現在、英国文化を解くための重要なファクターである、紅茶に関する
事典を執筆中。
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